過酷な境遇も、一途な愛も、全部吸い込んで前に進むヒロインがクール

韓国ドラマ大好き! なライターが、ぜひおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。

今回は、都会で疲弊したヒロインが、故郷の済州島で幼なじみと再会し、本当の自分を取り戻していくロマンチックコメディ『サムダルリへようこそ』の見どころを紹介します。

サムダルリへようこそ サムダル(シン・へソン)とヨンピル(チ・チャンウク)機内カット

ソウルへと向かう若かり日のチョ・サムダル(シン・へソン、写真左から2番目)とチョ・ヨンピル(チ・チャンウク、写真右)

サムダルリへようこそ
全16話

出演:チ・チャンウク、シン・ヘソン、キム・ミギョンほか

Netflixシリーズ「サムダルリへようこそ」独占配信中




あらすじ

フォトグラファーになる夢を叶えるため、大都会ソウルで過酷な生活を送ってきたチョ・サムダル(シン・へソン)。実力と根性でトップの座に上り詰めたものの、思わぬスキャンダルで名声を失い、逃げるように故郷の済州島へと戻る。一方、サムダルの幼なじみで気象予報士のチョ・ヨンピル(チ・チャンウク)は、済州の気象庁で働いていた。都会での生活に身も心も傷だらけになったサムダルは、ヨンピルと気まずい再会を果たすが……。

ここが見どころ!

都会で成功した主人公サムダルが、ある日突然ドン底につき落とされ、逃げるように戻ってきた故郷の海辺の田舎町で、大好きだった幼なじみや家族に支えられて、本来の自分を見つけていくという物語。主人公のラブストーリーだけではなく、夢と挫折、家族や仲間の絆といった、登場人物たちの人生が丁寧に描かれているロマンチックコメディでした!

近くて遠い、幼なじみという存在

サムダルリへようこそ ヨンピル(チ・チャンウク)とサムダル(シン・へソン)8年ぶりの再会

あれから時が流れて……ヨンピル(チ・チャンウク)とサムダル(シン・へソン)の重苦しい再会。

サムダルリへようこそ 同級生4人で飛行機でソウルへ行くシーン

夢を叶えるため、サムダルリからソウルへと向かう幼なじみ4人。(写真左から)チャ・ウヌ(ぺ・ミョンジン)、ワン・ギョンテ(イ・ジェウォン)、サムダル、ヨンピル。

サムダルリへようこそ ごみの中に隠れるサムダル

知り合いに会いそうになり、とっさにゴミの中に隠れるサムダル。

“ロマンス職人”チ・チャンウクと “最強コメディエンヌ”シン・ヘソンによる“ケミ”も見逃せません!

年齢=幼なじみ歴のサムダルとヨンピルは、もはや切っても切れない深い関係ですが、序盤は、破局済みの元カレカノらしい、近すぎて逆に遠い距離感でした。

思わぬ再会に、最初はよそよそしい雰囲気。一緒に過ごす時間が増えると口数は増え、次第に遠慮がなくなって(笑)、過去の別れについて、互いに「そっちがフッた!」と主張をぶつけ合う2人。そうかと思えば、小学生たちがじゃれ合うような無邪気な素顔を見せあったり、38年(!)も寄りそってくれているヨンピルの優しさに、サムダルがほだされたり……。「あんた以上のいい男を見つけようと思ったのに、あんなクズ男と付き合ってしまった」というサムダルのボヤキには共感しかありません(笑)。

なんてことのない場面に“2人が紡いできた特別な糸”が浮かび上がっては涙腺や笑いのツボを刺激するので、ハンカチ必携でご視聴ください。

どこまででも“守る男”、チ・チャンウク

サムダルと同じ日(の5分遅れ)に生まれた運命の相手であり、彼女のことをひたすら思い、守り続ける幼なじみ兼元カレのヨンピルを演じているのがチャンウク。“ロマンス職人”として名を馳せている彼が、ここぞとばかりに本領発揮! 

気象庁のジャンバーを羽織り、ハイエース風の庶民的な車(しかも演歌歌手の衣装のようなスパンコールジャケットを常備)を乗り回しているだけで、もうキラッキラ。サムダルを見つめ、声がけするかどうか迷っている姿を見ているだけで甘酸っぱい気持ちにさせてくれる、職人ぶりにきゅん♡

サムダルリへようこそ 犬のサムダルを愛でるヨンピル

街のマスコット犬・サムダルを愛でるヨンピル。

またヨンピルは、過去に気象予報の誤報で、海女だった母を亡くした経験から、愛するサムダルリの人たちを守ろうと今の職業に就いた正義感の強いキャラクター。予報を巡って上司……よりも、はるかに上の役職だろう本庁のお偉いさんと何度もぶつかり合い、まわりに羽交い絞めにされている姿にも、きゅん♡ 誠実だからこそ歯止めが利かなくなるヨンピルの"クセ強め"なところも愛おしいです。

サムダルリへようこそ ヨンピルの職場カット

気象庁で働くヨンピル。予報士としては優秀だが職場では変わり者扱いをされている。その理由は……。

サムダルリの人々のサイドストーリーにも注目

サムダルリへようこそ サムダルの母ミジャ(キム・ミギョン)とヨンピルと海女仲間たち

実の息子のようにサムダル母ミジャ(キム・ミギョン)に世話を焼くヨンピル。劇中、こここの海女軍団がバギーを操ってカチコミに行くシーン、超カッコいいです!

サムダルとヨンピルだけでなく、故郷の仲間たちや親きょうだいといった脇役たちの物語も、しっかりと描かれている本作。

星になった最愛の妻を思い続けるヨンピル父(ソ・ヒョンチョル)や、周囲には気丈にふるまいつつも親友の死の責任は自分にあると自らを責め続けているサムダル母(キム・ミギョン)、財閥2世の元夫との関係に悩むサムダル姉(シン・ドンミ)や、サムダル妹でシングルマザーのへダル(カン・ミナ)とその娘ハユル(キム・ドウン)の切ない気遣い、一瞬であの頃に戻れる地元の同期のありがたさなどなど。

どのストーリーも、切なさや悲しみが温かな絆となって心に染みていきます……。

サムダルリの人々って、物事を放置しないんですよね。意見が衝突した時、拒絶するのではなく、相手の意見を受け入れたうえで説得を試みるか、お互いの着地点を見つけようと努力します(約1名例外もいますが)。

ただ、努力への打ち込み方が尋常じゃない。誘致を巡り対立する2グループ、数十人の海女たちが町民を巻き込んで、取っ組み合いの大ゲンカをする発展したり、20年かけて人間関係の解決した親子がいたりと様々ですが、皆さん、コトが終われば何もなかったかのようにテーブルを囲んで、酒を酌み交わしています。その姿の陽気なこと!

舞台となった済州島の青い空、青い海に囲まれてると、気持ちまでカラッとするんでしょうか。

済州島の美しい海や山の絶景、島の人々の情深いやり取りなど、心癒されるポイントがいっぱいの本作。手作りキムチやチゲ、獲れたての貝の和え物といった食事風景や、サンドの家が営む食堂、住民御用達のシュポ(小さな個人商店)の角打ちなど、旅への要素も盛りだくさん! 済州の旅に出かけるような気持ちで、気軽にご視聴くださいね。

サムダルリへようこそ 海辺で海藻を片付けるサムダルとヨンピル

海辺で海藻を片付けるサムダルとヨンピル。チェックシャツに赤いゴム手袋姿でも済州の海より輝いているチャンウク。

サムダルリへようこそ
全16話
Netflixシリーズ『サムダルリへようこそ』独占配信中

サムダルリへようこそΙ Netflix(ネットフリックス)公式サイト
ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で食べまくりました。