チュ・ヨンウの魅力がさく裂する史劇リーガルロマンス『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』【韓ドラオタクおすすめの1本】
チュ・ヨンウの魅力がなみなみと注がれた、もっきり時代劇に酔いしれる
韓国ドラマ大好き! なライターがおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。
今回は、ある出来事をキッカケに、奴稗から両班として偽りの人生を送ることになった主人公と、全てを捨て、彼女を守り、愛し続けた男の運命を描いた史劇リーガルロマンス作品『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』を紹介します。

森の中の逢瀬を楽しむソイン(チュ・ヨンウ)とクドク(イム・ジヨン)
『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』
全16話
出演:イム・ジヨン、チュ・ヨンウ、キム・ジェウォン、ヨンウほか
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U-NEXTにて独占配信中
あらすじ
心無い両班一家に使用人として仕えている奴婢のクドク(イム・ジヨン)は、主人の娘に代わって読書や刺繍をこなしながら、いつか海辺で父親と一緒に暮らすことを夢見ていた。一方、名門家の長男ではあるが母親に疎まれながら育ってきたソン・ソイン(チュ・ヨンウ)は、偶然出会った聡明なクドクに興味を持つ。しかし、それが発端となって、クドクと彼女の父親は逃亡奴隷として追われる身となってしまう。さらに、ある事件に巻き込まれたクドクは名前も身分も偽り、両班の娘のオク・テヨン(イム・ジヨン)として生きることになる。そんなある日、売れっ子芸人チョン・スンフィ(チュ・ヨンウ)として生きるソインと運命の再会を果たす。この出会いは必然か偶然か。それとも……。
ここが見どころ
今回紹介するのは、1度観始めたら止まらない、ノンストップ新時代劇『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』です。時代劇に現代の感性を絶妙に落とし込み、スピーディかつギュッと凝縮された展開とストーリーで注目を浴びた本作。『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』の悪女ヒョンジンのイメージだったイム・ジヨンを“信じて見ることのできる女優、イム・ジヨン”に格上げし、新人だったチュ・ヨンウをネクストブレイク俳優に押し上げた話題作なんです。早速、本作の見どころを紹介します。
※本記事はネタバレがありますので、ご注意ください。
“時代劇は長い”の概念を吹っ飛ばす、超爆速展開
史劇というと、なんとなく「王様絡みの重い展開」だったり、「髭おじさんたちの骨肉の権力争い」なんてものを想像しがちですよね。しかし、本作は各話1時間越えのエピソードにもかかわらず、瞬殺。「今料理を作ってるから、これでもつまんでて」と突き出しが出てきたと思ったら、食事が終わっていたような感覚に。
その理由は、ムダが一切ないおもしろストーリーに、スピーディな展開、そして演技派ぞろいのキャスト。そこに、オーソドックスなようで実は時代劇では新しい仕掛けが、いたるところに散りばめられているから。
基本的なストーリーは、クドクが奴婢(律令制における賤民)という身分を隠し、両班(官僚。朝鮮王朝の支配階級)の令嬢オク・テヨンとして生きていくというもの。そこに、お嬢様の意志を引き継いた主人公は、その聡明さで外知部(今で言う弁護士のような職業)となって、困っている人々を分け隔てなく助けていくというお仕事ドラマ要素をプラス。さらにクドクと運命的な出会いを果たすソインの一途な純愛も描かれ、すべてを捨てて愛し抜き、守ろうとする男の一途な姿が相まって“オク沼”は拡大。
加えて、時代劇でありながら、LGBTQ+についての問題提起や男性と対等に活躍する女性の姿、そして、法の下では人はその身分に関係なく平等であるべきという、21世紀にも通じる要素をさらっと取り入れ、「斬新さ100」「説教臭さ0」で描いているところが、見やすく新しく、爆速史劇のテンポを上げていると思います。

風光明媚な景色も魅力。海辺を背にするテヨンとチャンウィ。
“はじめての時代劇”としておすすめ
また、牢から出た人に豆腐を差し出したり、アロエパックをしたり(いずれも韓ドラあるあるですね)。さらに劇中、「ストーカー」や「ドッペルゲンガー」というワードが違和感なく飛び出す現代オマージュセリフまで出てきて、大爆笑! ちなみに、相手と腕をからめておちょこを酌み交わす「ラブショット」を「恋慕杯」という造語で表現していました。うまい!
また、テヨンがいわゆる弁護士のお仕事をしているので、リーガルドラマの『グッドパートナー』のチャン・ナラ & ナム・ジヒョンや、『ハイエナ』のキム・ヘスばりに言いたいことを痛快に代弁してくれるので、スカッとします。
これまで時代劇とあまり接点がなかった方には、“はじめての時代劇”としておすすめです♡
あと、伏線回収率100%なので、登場人物たちの一挙一動をお見逃しなく。少ししか出ていないキャラクターであっても、「ここで!?」と再登場したりしてヒロインの窮地を救うという、わらしべ長者的神展開がてんこ盛りなので覚悟してください。人徳ってボディーブローのように後から効いてくるものなんですね、大切……。

イム・ジヨンさんには韓服がよく似合います♡
Yes、イム・ジヨン! その圧巻の演技力

人生の大きな歯車に巻き込まれるクドク。
でまあ、主演のイム・ジヨンですよ。彼女と言えば、あの大ヒット復讐ドラマ『ザ・グローリー~』での悪女っぷりがいい意味で忘れられなかったのですが、彼女にとってキャリア2度目の時代劇である本作で、俳優としての大いなる成長……否、不動のものとする演技を披露してくれました。
イム・ジヨン演じるヒロインは、朝鮮王朝時代、外知部として貴賤を問わず、困っている人々や地域のために奔走したオク・テヨン。このテヨンは、両班から酷い虐待を受けて逃亡した奴婢のクドクが、ある事件をキッカケに、良家の令嬢として“生まれ変わった”人物。つまり、イム・ジヨンは一人二役なんですね。

頭脳明晰なクドクは、護身術にもたけているのです。カッコいい!
使用人から高貴な女性へというその変化と、英知に長け、両班を前にしてもひるむことなく対峙するオク・テヨン役はイム・ジヨンの新たなハマリ役に。
何がすごいって、イム・ジヨンの感情の切り替えと表情の引き出しの多さ。極悪主人のもと、かすかな希望を抱いては絶望……をくり返してきたクドクの復讐心はすさまじく、様々な喜怒哀楽の感情に出会い、ジェットコースターどころじゃない感情の起伏をくり返すんです。“目からすべての光が消える瞬間”を目撃させるイム・ジヨンの恐ろしさよ! 場を凍りつかせることも、逆に周囲のみんなを優しく包み込むこともできて、さらに運命の人・ソインの前ではかわいらしい姿まで変幻自在。正直、ここまで演技の引き出しを増やしたイム・ジヨンの人生について心配しちゃいましたよ……。
というわけで、荒れ地のようなクドクから、美しい韓服を纏う凛としたテヨンまで、イム・ジヨンの本気の演技を堪能できるスペシャルな作品です♡

婚礼の衣装をまとったテヨン(クドク)は、かわいらしいです。
何杯でもおかわりしたくなる、チュ・ヨンウの魅力

クドクを前にするとにっこにこになるチャンウィ(チュ・ヨンウ)。かわいい。
イム・ジヨンに負けず劣らずの貢献をしているのが、2021年に俳優デビューしたチュ・ヨンウ。本作では、クドクにひとめ惚れする、学問書よりも小説を愛し、武芸よりも歌舞音曲に好んで変わり者扱いされている名門両班の子息ソン・ソインとして登場。自身の出自を知った後、チョン・スンフィと名を変え、芸人として全国を放浪しながらクドクを探し続けるキャラクターです。自身の愛を物語に紡いで伝える、売れっ子芸人スンフィの美しい舞踊と語りにうっとり♡
イム・ジヨン同様、チュ・ヨンウも、もう1役演じているんです。それは、ソンイ&スンフィとうりふたつ、生真面目で武芸の達人の役人ソン・ユンギョム。こちらもテヨンと深い関係になる人物で、ある秘密を抱えているキーマン。

チャンウィ(ソイン)とうりふたつの役人ユンギョム。
チュ・ヨンウが演じる一人二役は、似ているけれど別人で、ともに両班の衣装を身にまとっているのに、画面に出てきた瞬間、どっちなのかがすぐ分かってしまう演じ分けがすごい。まなざしに込めた感情のアクセントや立ち振る舞いなど、2人の違いが画面からしっかりと伝わってくる。そして、それぞれが宿すクドクへの尊敬の念を、異なる形で表現しているのもすばらしくて。初時代劇でこのクオリティ、ヤバくないですか!?
この真逆のキャラクター2人を表現するため、パンソリ、舞踊、剣術、弓術、乗馬など、役柄に必要なすべてを学んだとのことなのですが、一挙手一投足がいちいち美しい! 華麗な演舞に心打たれ、胸打たれ、爽やかなのに情熱的で、陰すらもうっすら感じさせる稀有な存在感に、すっかり抜けがらになりました……。
ちなみに、チュ・ヨンウはOSTにも参加していまして、ガールズグループITZYのLIAとしっとりと歌い上げるデュエットソング『WOODAHE』もドラマを盛り上げてくれます。「ボーカルはチュ・ヨンウだから」と言われないとわからないほど上手い! 韓服が似合う上品な小ぶりな塩顔、モデルのような高身長&がっちり肩、凄まじい演技力に歌まで素敵だとは……。 劇中、「私は最高だ 私は立派だ」というセリフが何度も出てくるのですが、この言葉こそ、チュ・ヨンウに贈りたいです。
「チュ・ヨンウは最高だ! チュ・ヨンウは立派だ! 」
もう何を言っているのか自分でもわからなくなってきましたが、本作におけるチュ・ヨンウはとんでもなく最高ということです。
チュ・ヨンウの……チュ・ヨンウのおかわりをくださいっ!

舞台でのチャンウィ(ソイン)の男前っぷりがすぎる! この後の朗読にもご期待ください。
なお、踊るチュ・ヨンウをもっと堪能したい方は、彼のデビュー作『You make me dance~紅縁〈ホンヨン〉』もチェックしてみて。こちらでは現代舞踊を専攻する大学生を演じていまして、ダンスのみならず、彼のブロマンス演技により深みを加えるチュ・ヨンウの魅力がさく裂! 本作では従者マンソク(イ・ジェウォン)と、そして『トラウマコード』では天才外科医ペク・ガンヒョク(チュ・ジフン)との掛け合いが抜群によかったのもうなずけると思います♡
ヒット作品に立て続けに出演したチュ・ヨンウの快進撃はまだまだ続きます! 2025年は、ノワールドラマ『広場』で検事役、そして青春ロマンスドラマ『ギョヌと仙女』では不幸体質の高校生に扮するそうなので、もう期待しかありません!

韓服も着こなす男、チュ・ヨンウ。
作品概要

このデザインにも意味が。最終回のエンドロールをお見逃しなく!
『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』
全16話
出演:イム・ジヨン、チュ・ヨンウ、キム・ジェウォン、ヨンウほか
© SLL Joongang Co.,Ltd all rights reserved.
U-NEXTにて独占配信中

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で爆食。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。さらに東アジア最大のレインボーパレードである、台湾LGBTプライドパレード「臺灣同志遊行」にも参加。2025年の“海外旅はじめ”はソウル&プサン(韓国)。6月にはシアトル(アメリカ)へ。