若手女性詩人と小説家に学ぶ「言葉を武器に生きるとは?」【オススメ☆BOOK】
最近の発売された話題の本や永遠に愛される名作などから、キーワードに沿った2冊のイチ押し&3冊のおすすめBOOKをご紹介します。
【今月のキーワード】「“言葉を武器に生きるとは?」
16歳で詩人として歩き始め、「JK詩人」と呼ばれた著者は、高校も大学も卒業して「20代の女性詩人」として現在を生きている。初詣にも行ったことがなく、本当の恋愛を知らないと断言され、文化系コンプレックスさえ抱えながら、街へ出て自分の部分を確かめ、輪郭を明らかにしていく。詩人として、さまざまな言葉や思いをぶつけられることも少なくない。見知らぬ人からの中傷もあれば、「詩人と娼婦は似た部分があると思う」という知人の発言もある。キーッ! と怒ってパッカーン! と遠くへかっ飛ばしたくなるようなそんな言葉を、しかし著者は受けとめ、傷つき、吟味する。そうして自分の振る舞いを選び取っていくのだが、『臆病な詩人、街へ出る。』でつづられる、その手つきはしなやかでも力強くもなく、ぎこちない。だけど、とことん迷い、他人からも自意識からも逃げずに闘うその姿は美しく、「どんな理不尽な目に遭おうとも、どんな誤解を受けようとも」「生きていく。私以外に『わたし』を生きる者はいないのだ」という宣言は、しびれるほどにカッコいい。
小説家の場合はどうだろう。漫画『ものするひと』は、30歳の純文作家の生活と頭の中身を見せてくれる。言葉で遊び、言葉を使って「0 を1にすることで触れられる世界」をつくり出す日常。フィクションに描かれるべく整頓される前の、心の動きのリアリティに、思考の広がりや飛躍にワクワクさせられる。ゆるりとやわらかい絵を連ねながら、小説と漫画という、近くも遠くもある両ジャンルの読み物の関係を、真新しく更新してくれる傑作だ。
【イチ押しBOOK1】文月悠光さんの『臆病な詩人、街へ出る。』
街へ出て、世界に触れる。恋愛に迷い、アイドルオーディションに怯み、臆病さの根っこにある自意識を見つめ直す。日常を生き延びるための言葉がたっぷり詰まったエッセイ集。(立東舎 ¥1600)
【イチ押しBOOK2】オカヤイヅミさんの『ものするひと』①
文芸雑誌で新人賞をとってデビューし、アルバイトをしながら小説を書く主人公。生活の真ん中に書くことを置き、言葉で遊ぶ作家の日常は普通じゃない? じゃあ「普通」ってなんだろう、と考えるのも楽しい一冊。 (KADOKAWA ¥720)
【『みんなの恋愛映画100選』などおすすめBOOKはこの3冊!】
--------------------- MORE2018年6月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 文/鳥澤 光 ---------------------