12星座全体の運勢

「飛び地へとアクセスしていくこと」

6月21日には372年ぶりの夏至の日食(新月)がありましたが、7月22日からの「大暑」に前後する7月21日にはそれに続き蟹座での2度目の新月を迎えます。

今回の新月は「取り込まれるべき大きな物語」がテーマだった前回の新月に対するフォローアップ的な位置づけにあり、この一カ月のあいだに土星が山羊座へ戻り“試練や課題”が明確になってきた状況において、改めてこれからその中で生きていきたい世界や価値観を選びなおしていく軌道修正のタイミングなのだと言えるでしょう。

その際、意識していきたいのが「直感に従って選ぶ」ということ。もしいまあなたの前に二つないし複数の選択肢があるなら、以前の自分であれば無意識的にこっちを選んでいたなという“自分が逃げ込みがちな”選択肢(しかし長い目で見れば破綻が明らかな)ではなく、一見奇妙に見えたり、これまでの現実の延長線上から外れたところに現れた“飛び地”的な(したがってほとんど孤立した)特異点、すなわち未知の領野へアクセスするような選択肢を選んでいきたいところです。

水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「変化の術」。

水瓶座のイラスト
世の中には、まるでこれまで一度もそこを動いたことがないかのように、いつまでも石のようにじっと現状維持に固執する人たちがいます。そうしていた方が心地が良く、安全で、アイデンティティがゆらぐ心配もないのでしょう。

16世紀の中国・明朝の隠遁詩人、呉承恩が書いたとされる『西遊記』もまた、ひとつの石から話が始まります。有史以来一度も動いたことのない山頂の巨石から生まれてきたのが孫悟空でした。

ただ孫悟空は常識離れした力の持ち主ではあったものの、あまりに傲岸不遜だったため、お釈迦様に500年間ものあいだ山に閉じ込められます。ただ最終的には、変わり映えのしない生活に安住するのでなく、石がぱっかり割れるかのように、通りがかりの若い巡礼者を助けるという役割を引き受けることで、新しい自分を作り出す喜びを味わうにいたったのです。

孫悟空は山に閉じ込められる以前、不老不死の仙人に弟子入りして、さまざまな変化の術を習得していましたが、彼の最後の変化は、いかに力を振るうかではなく、いかに自分を抑えるかという節度を身に着けることでした。

そして今のみずがめ座にもまた、そんな孫悟空のように、きっとまだまだ身に着けるべき知恵があり、果たすべき役割や、治めるべき王国があるのではないでしょうか。

確かに変化に不安を感じるのは当然ですが、『西遊記』は人生というものは本質的に変化の連続であり、それを受け入れることは楽しいことでもあるのだということを思い出させてくれるはずです。


出典:呉承恩、伊藤貴麿訳『西遊記(上)』(岩波少年文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ