12星座全体の運勢

「飛び地へとアクセスしていくこと」

6月21日には372年ぶりの夏至の日食(新月)がありましたが、7月22日からの「大暑」に前後する7月21日にはそれに続き蟹座での2度目の新月を迎えます。

今回の新月は「取り込まれるべき大きな物語」がテーマだった前回の新月に対するフォローアップ的な位置づけにあり、この一カ月のあいだに土星が山羊座へ戻り“試練や課題”が明確になってきた状況において、改めてこれからその中で生きていきたい世界や価値観を選びなおしていく軌道修正のタイミングなのだと言えるでしょう。

その際、意識していきたいのが「直感に従って選ぶ」ということ。もしいまあなたの前に二つないし複数の選択肢があるなら、以前の自分であれば無意識的にこっちを選んでいたなという“自分が逃げ込みがちな”選択肢(しかし長い目で見れば破綻が明らかな)ではなく、一見奇妙に見えたり、これまでの現実の延長線上から外れたところに現れた“飛び地”的な(したがってほとんど孤立した)特異点、すなわち未知の領野へアクセスするような選択肢を選んでいきたいところです。

魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「反転的自己表現」。

魚座のイラスト
自己表現というと、いかに魅力的で立派に見せられるか、たくさんの注目を浴びられるか、力強く鮮烈に影響を与えられるか、といった視覚的にボリューミーな方向でつい考えがちな風潮がありますが、ミヒャエル・エンデの名作ファンタジー『モモ』の主人公で、みなしごの少女モモの場合は、「ただ話を聴く」という聴覚的でミニマムなことが才能であり、彼女なりの自己表現となっていました。

これは優れたファンタジーの特徴である、「価値の反転」を象徴する物語の核とも言える部分でもあります。

例えばこの物語には、資本主義社会が美質としている、忙しく働いていたり、お金持ちになったり、大きな家に住んでおいしいものを食べたりといったことに疑義が呈され、キーマンである時間の賢人のもとへ行く際には急いで行けず、ゆっくりゆっくり亀のように行くのが一番速く会いに行けるという設定があるのですが、それもモモの人の話にじっと耳を傾けるだけで人々に自信を取り戻させるという不思議な力の発揮の仕方と結びついていくことで、物語全体がまるで生きもののように躍動していくのです。

そして、そんなモモの在り方は、やはり何らかの自己表現を通じて価値を反転させていくことがテーマとなっている今のうお座にも、深い示唆を与えてくれるはず。

勝つこと、速いこと、人より優位に立つことを無条件に良いものとするのか、あるいは、それとはまったく異なる条件に基づいた自己表現に取り組んでいくのか

今期のうお座は、そんな二者択一を少なからず迫られていくでしょう。


出典:ミヒャエル・エンデ、大島かおり訳『モモ』(岩波少年文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ