12星座全体の運勢

「<新しい日常>への通過儀礼」

暦の上では秋が始まる「立秋」を過ぎて最初の新月を迎えるのが8月19日。それは、暑さが落ち着く「処暑」すなわち太陽が乙女座に入る直前、体感的にも夏の終わりを感じさせてくれる蜩(ひぐらし)の鳴く獅子座終盤あたりで起きていきます。

そんな今回の新月のテーマは、「新しい日常へ」。それはどこか空々しく響いてしまう上からの号令によってみな一斉に同じところから始まるものではなく、あくまでここしばらくの悪戦苦闘や悶え苦しむ期間をやっとの思いで抜け出した結果、流れ着いた先で自分がもうすでに新しい日常に立っていることを後から実感していくはず。夢から醒めた後の起き抜けの朝のひとときのようにおごそかに、しかし、確かにこれまでとは決定的に違う世界にいるという確信を胸に、新たな門出の仕度を整えていきましょう。

「もはや夜はなく、<救い主である神>が人間たちを照らすが故に、ランプや太陽の光は要らなくなる」(『ヨハネ黙示録』第二十二章、5節)

この場合の<神>とは、他でもない自分自身であり、あるいは古い自分を先導する新しい自分のことなのだと思います。

牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「楽しむことが最優先」。

牡羊座のイラスト
アリストテレスと言えば、今日の科学やテクノロジーを生み出した西洋文明の根幹を支える哲学的な基礎付けを行った人物として、しばしば権威と生真面目の象徴としての役割をつねに与えられてきましたが、いま改めて読み直してみるとかえって新鮮な発見が少なくありません。

例えば、『ニコマコス倫理学』において<愉しみ>について述べている箇所―愉しみ(快楽)とは何か―などは、伏せていた身を起こし、目覚ましい勢いで躍動しようとしている今のおひつじ座にとって重要な指針となるように思います。

アリストテレスは「生きるとは活動であり、各人はそのもっとも好む事柄に対して、もっとも好む能力を働かせて活動する。これらの活動の愉しみが活動を完成させ、各人の追求する生を完成させるのだ」と言い切った上で、次のようにも言います。

愉しみを感じつつ活動する人の方が何事についてもその事柄をよりよく判断し、より正確に成就することができる。音楽家であれ建築家であれ、各自の仕事に悦びを感じつつやっていればこそ、仕事についての進歩もあるのだ。このように、愉しみこそが活動を増進させうる、と。

逆に言えば、<愉しみ>を欠いている限り、どんな分野であれ、その仕事は永遠に完成しないということになります。

今期のおひつじ座もまた、たとえ一見すれば悲劇的で、笑える状況ではなかったとしても、どうしたら楽しめるのかを少しでも考えていきたいところです。


参考:アリストテレス、高田三郎訳「ニコマコス倫理学 上・下」(岩波文庫)
12星座占い<8/9~8/22>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ