12星座全体の運勢

「<新しい日常>への通過儀礼」

暦の上では秋が始まる「立秋」を過ぎて最初の新月を迎えるのが8月19日。それは、暑さが落ち着く「処暑」すなわち太陽が乙女座に入る直前、体感的にも夏の終わりを感じさせてくれる蜩(ひぐらし)の鳴く獅子座終盤あたりで起きていきます。

そんな今回の新月のテーマは、「新しい日常へ」。それはどこか空々しく響いてしまう上からの号令によってみな一斉に同じところから始まるものではなく、あくまでここしばらくの悪戦苦闘や悶え苦しむ期間をやっとの思いで抜け出した結果、流れ着いた先で自分がもうすでに新しい日常に立っていることを後から実感していくはず。夢から醒めた後の起き抜けの朝のひとときのようにおごそかに、しかし、確かにこれまでとは決定的に違う世界にいるという確信を胸に、新たな門出の仕度を整えていきましょう。

「もはや夜はなく、<救い主である神>が人間たちを照らすが故に、ランプや太陽の光は要らなくなる」(『ヨハネ黙示録』第二十二章、5節)

この場合の<神>とは、他でもない自分自身であり、あるいは古い自分を先導する新しい自分のことなのだと思います。

双子座(ふたご座)

今期のふたご座のキーワードは、「天使のまなざし」。

双子座のイラスト
絵の中には初めて見た時はそれほどインパクトに残らなくても、その後折に触れて不思議と思い出してしまう絵というものがあって、パウル・クレーの描いた天使の絵もそうした類いのものと言えるでしょう。

クレーの世界のなかで、天使とはどういうものとして取り上げられ、どのような意味を持っていたのか。第一次大戦が勃発した頃の彼の日記の中には、次のような夢の話が出てきます。

彼は日本人の芸者に三味線を所望していた。そして「心が誘惑に駆られると、たちまち私の耳はかすかに戸を叩く音をとらえた」とあり、さらに「その音に誘われていくと、小さな守護神が現われ、可愛らしい手をさしのべ、私を天界にそっと連れていった」と結ぶのです。

直接的に天使と書かれている訳ではありませんが、こうした記述から彼が天使というものを、か弱く脆い存在ながら、人間を保護し、導く役目を担った存在と見なしていたことがうかがわれます。

彼は日記の別の箇所で、自分が描くのは「人間という種とか類ではない。宇宙の座標といったらいいだろうか」とも書いているのですが、そこにはどこか彼の描いた天使たちのまなざしにも相通じる宇宙的な透明感とまったく粘り気のないやさしさを感じざるを得ません。

そして今期のふたご座にとって大切になってくるのも、こうした類いのまなざしに自分を重ねたり、また逆にそんなまなざしと出会ったりすることなのではないでしょうか。

日常がさながら戦場のようである人ほど、きっとそのそばにはクレーが描いたような天使が寄り添っている。そんな風に思います。


出典:クレー、南原実訳「クレーの日記」(新潮社)
12星座占い<8/9~8/22>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ