12星座全体の運勢

「<新しい日常>への通過儀礼」

暦の上では秋が始まる「立秋」を過ぎて最初の新月を迎えるのが8月19日。それは、暑さが落ち着く「処暑」すなわち太陽が乙女座に入る直前、体感的にも夏の終わりを感じさせてくれる蜩(ひぐらし)の鳴く獅子座終盤あたりで起きていきます。

そんな今回の新月のテーマは、「新しい日常へ」。それはどこか空々しく響いてしまう上からの号令によってみな一斉に同じところから始まるものではなく、あくまでここしばらくの悪戦苦闘や悶え苦しむ期間をやっとの思いで抜け出した結果、流れ着いた先で自分がもうすでに新しい日常に立っていることを後から実感していくはず。夢から醒めた後の起き抜けの朝のひとときのようにおごそかに、しかし、確かにこれまでとは決定的に違う世界にいるという確信を胸に、新たな門出の仕度を整えていきましょう。

「もはや夜はなく、<救い主である神>が人間たちを照らすが故に、ランプや太陽の光は要らなくなる」(『ヨハネ黙示録』第二十二章、5節)

この場合の<神>とは、他でもない自分自身であり、あるいは古い自分を先導する新しい自分のことなのだと思います。

天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「負けない戦略」。

天秤座のイラスト
紀元前に活躍した古代中国の兵法家の中でも最もよく知られている人物が、「孫子の兵法」として戦争の戦略と戦術について記した孫武でしょう。

その第一の思想は「戦わずして勝つ」こと。これは相手と百戦して百勝するのは必ずしも良いことではなく、いかに戦う回数を減らせるか、また戦争のもたらす消耗を最小限に抑えられるかという方向に考えを巡らせ、しかも戦う前にできるだけ戦わずに済む戦略を立てるように諭すのです。

そして第二の思想は「現実をよく観察せよ」ということ。「多数の樹木がゆらめき動くのは、敵軍がひそかにその中を進撃しているのである。(中略)鳥がにわかに飛び立つのは、敵の伏兵がいるからである。獣が驚いて走り去るのは、敵軍の奇襲攻撃である。(中略)あちこちに砂埃が細く立ちのぼるのは、燃料となる薪を採集しているのである」。まさに情景がありありと浮かぶような、精密な観察ではないでしょうか。

この第二の思想のなかに、あの有名な一節、「彼を知り己を知れば、百戦して危うからず」という言葉がある訳ですが、じつはこうした孫子の勝負の哲学は、そのまま占いの活用法にも通じるように思います。

すべてのチャレンジを成功させるために占いを無理にでも使うというより、大難を小難に、小難を無難に減じていくことこそが第一に気を付けるべきことであり、どんな悪いことが起きそうか、それを防ぐには何をすべきかを洗い出すことが大事であり、さらに占いが活きるかどうかは、どれだけ日常や社会の現実を精密に観察できたかにかかっているのです。

今期のてんびん座もまたこうした「負けない」戦略を究めんとする孫子の兵法を、どれだけ自分の活動や普段の行動に落とし込めるかを試してみるといいかも知れません。


出典:孫武、湯浅邦弘訳「孫子・三十六計」(角川ソフィア文庫)
12星座占い<8/9~8/22>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ