12星座全体の運勢

「月を呑む」

10月1日は「仲秋の名月」です。旧暦8月15日の夜に見えるまあるい月のことを、昔から「月見る月はこの月の月」といって心待ちにされてきました。

厳密には正確に満月となるのは10月2日の早朝ですが、十五夜の翌日は「十六夜(いざよい)」、前日の月は「待宵(まつよい)」としていずれも大切にされ、その際、月に照らされていつもより際立って見える風景や、月を見ることでやはり美しく照り映える心の在り様のことを「月映え(つきばえ)」と言いました。

そして、そんな今回の満月のテーマは「有機的な全体性」。すなわち、できるかぎりエゴイズムに毒されず、偏った見方に陥らないような仕方で、内なる世界と外なる現実をひとつのビジョンの中に結びつけ、物事をクリアに見通していくこと。

ちなみに江戸時代の吉原では、寿命が延びるとして酒を注いだ杯に十五夜の月を映して飲んでいたのだとか。どうしても手がふるえてしまいますから、水面にまるい月を映すことは難しかったはずですが、綺麗なビジョンを見ようとすることの困難もそれとどこか相通じているように思います。ただ、透き通った光を飲み干すと、昔の人は何か説明のできない不思議な力が宿ったように感じたのかも知れません。

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「魂を確かめる」。

獅子座のイラスト
コロナ禍によって、街での他者との、あるいは異物との密な接触の機会が回避されるようになったと言われていますが、こうした傾向はじつは随分前から既に社会全般で見られるようになっています。

例えばスーパーなどで売られている商品は透明なラップや包装にますます包まれ、また、携帯電話やインターネット、動画サイトなど、他者とのコミュニケーションや情報の取得も間接的なものの割合がずっと大きくなっており、いつの間にか「被膜ごし」にしか出来事や他者に触れられなくなってしまった私たちは、傷つくことをひどく恐れるようになっただけでなく、直接<触れる>ことの価値や豊かさをすっかり見失ってしまったように思います。

フランスの哲学者ミシェル・セールは、皮膚という表層の効果として<内部>ということを捉えました。つまり、皮膚と皮膚が接触するところに<魂>が生まれるのであり、唇をかみしめ、額に手を当て、手と手を合わせ、括約筋を締めることでそれは初めて可能になるのだと。さらにセールによれば、他人の皮膚との接触は「魂のパスゲーム」を意味し、皮膚を通して<魂>をさらすゲームの中でこそ、人は自分の存在そのものに触れていくことができるのだと。セールは次のように語りかけます。

もし君が身を救いたいと思うならば、君の皮膚を危険にさらしなさい

もちろん、皮膚を危険にさらせば、必ずどこかで傷を負うことになるでしょう。けれど、そうして負った傷の分だけ、確かに<わたし>は存在していると言えるのではないでしょうか。

同様に、今期のしし座もまた、ゆっくりと真綿で絞めつけるように<わたし>を消していこうとする被膜を思いきって引き裂き、誰か何かに直接触れてみること。あるいは、何かのきっかけで疼きだした傷のなかで、みずからが生きて在ることを確かに感じとっていくことになるはず。


参考:ミシェル・セール、米山親能訳『五感―混合体の哲学』(法政大学出版)
12星座占い<9/20~10/3>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ