12星座全体の運勢

「新たな習慣、新たな取り組み」

10月8日を過ぎると二十四節気では「寒露」に入り、晩秋を迎えます。「晩秋」というと、どこか寂しさをそそりますが、旧暦の時代には10月のことをさまざまな言い方で表してきました。

例えば、稲を収穫することから「小田刈月(おだかりづき)」、また菊も咲き始めるので「菊月」、木の葉が染まり出し、梨や柿や金柑など、さまざまな果実も実りのときを迎えていくので「色取月(いろとりづき)」など。

まさに心豊かに過ごせる時期と言えますが、そんな中、10月17日にはてんびん座で新月を迎えていきます。今期のテーマは「蝶の第三の羽」。

蝶は古来より「霊的な復活のプロセスの結末」を表すシンボルであり、二枚の羽の代わりに三枚の羽を持っているなら、霊的生活の観点において特別な発達があったことを示していますし、また「3」という数字は「充足」の象徴でもあります。

すなわち、合理的知性では説明がつかない新たな可能性を秘めた習慣や試み、突然変異的な取り組みを生活の中に取り込んでいく機運が高まっていきやすいタイミングなのだと言えるでしょう。

充実した秋の夜長を過ごすべく、これまでは手が伸びなかったような新しい何かに打ち込んでいくのにもうってつけかも知れません。

天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「思い出のクォリティー」。

天秤座のイラスト
人工知能との比較で、人間のもつ想起的な記憶(思い出)の重要性が再評価されてきている今、数世紀の時代をこえてぜひ思い出していきたい人物のひとりにレオナルド・ダ・ヴィンチがいます。

15~6世紀のイタリアに生きたダ・ヴィンチは、一流の画家・芸術家であったばかりでなく、科学者・技術者でもありました。ルネサンス期の多くの万能人の中でも、その才能に対して「神のごとき」(ヴァザーリ)という形容詞がつけられているのはミケランジェロと彼だけであることから、まさに「万能の天才」の名に値すると言えるでしょう。

ダ・ヴィンチは膨大な手記を遺しており、そこからはスケッチや絵画からだけではうかがい知れない彼の思想や主張が肉声をともない聞こえてくるかのようです。例えば、記憶にかかわる断章は次のような一文から始まります。

「人々が時の流れのあまりにすみやかなことに罪を着せて、時の流れ去るのを嘆くのは見当違いだ。」

というのも、人々は時間というものが「十分な余裕をもって推移する」ことに気付いていないとし、さらに次のように述べています。

「だが、自然がわれわれに贈ってくれる上等な記憶は、過ぎ去った遠い昔のあらゆることを目前にあるかのように思わせる」と。

彼はまた「絵画は科学(知)なり」というモットーでも知られていますが、「魂の窓と呼ばれる眼は、それにより共通感覚がもっとも豊かかつ壮大に、限りない自然の作品を考察しうる第一義的な道だから」とも言っていて、彼がきちんと眼で観察することを「上等な思い出」の想起の上で何よりも大切にしていたことが分かります。

今期のてんびん座もまた、内容を十分練らないままに自己主張をしたり、早々に評価されようとして躍起になる前に、改めて微細な観察の手間や工夫を凝らしていくことで、五感を貫く根源的な「共通感覚」を活性化させ、「思い出」の質を高めていく習慣をつけていきたいところです。


参考:レオナルド・ダ・ヴィンチ、杉浦明平訳『レオナルド・ダ・ヴィンチ 上・下』(岩波文庫)
12星座占い<10/4~10/17>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ