12星座全体の運勢

「花時へ立ち返る」 

いよいよ3月20日に「春分」を迎え天文学的にも春となり、その後はじめての満月が3月29日にてんびん座8度(数え度数で9度)で形成されていきます。 

今回のテーマは「触発されること」。たとえば、過去の偉大な芸術や文学作品の洗練された様式に触れることは、瞑想と同じような効果があるのではないでしょうか。いずれにせよ、混沌とした社会の中で新しい価値をさがそうとして迷っている時には、まずもって原点に立ち返ることが重要です。 

ちょうど、この時期の季語に「花時」という言葉があります。古くから、花と言えば桜。ですから、普通は「花時」といえば、桜の花が美しく咲いているあいだのことを言うのですが、とはいえ、私たちは桜が咲く前からいつ咲くかと心待ちにしたり、散り始めてからの方がより風情を感じたりと、それぞれにとっての「花時」を持っていたように思います。 

松尾芭蕉の「さまざまな事思ひ出す桜かな」という俳句のように、その時々に刻まれた思い出は、桜を見るたびに何度も蘇ってくるもの。もしかしたら、ひとりひとりの心の中に、「花時」という特別な時間軸があるのかも知れません。 

その意味で、今期は自分のこころをもっとも触発してくれるような「花時」に立ち返っていけるか、そこでしみじみとしていけるかということが、大切になってくるはずです。 

蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「縞柄」。

蠍座のイラスト
桜の花の咲きぶりや散り具合、そしてそうした光景を描いた浮世絵などの近代以前の奥行きのない世界を見ていると、案外、高度な精神の現れというのは、モノや文様のパターンなど、目に見える具体的な形で表わされているのではないかと、改めてハッとさせられるのですが、江戸文化研究家の田中優子も『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』の中で、着物の縞(しま)柄つまりストライプ模様について触れて同様のことを述べています。 
 
九鬼周造は『「いき」の構造』の中で、「模様としての縞」が『いき』と見做されるのは決して偶然ではない」と書いた。なぜなら、「いき」の表現は「媚態」のもっている二元性を表わしていなければならず、「永遠に動きつつ永遠に交わらざる平行線」としての縞は、その二元性のもっとも純粋な表現だからだ、と。」 
 
いったいこの媚態の二元性とは何か。九鬼によれば「一元的の自己が自己に対して異性を措定し、自己と異性との間に可能的関係を構成する二元的態度」のことである。ひらたく言えば、惚れた相手と同一化したいと思っているあいだの緊張した状態のことだ。だから、完全に同一化してしまえば関係は「いき」でなくなる。しかし個人と個人が完全に同一化するなどあり得ないことだから、幸福な幻想さえもたなければ、惚れ合っていてもおおいに「いき」であり得る。縞とはつまりそういうことの現れだと思うと、着物の文様もばかにできない。」 
 
この場合「いき」であり得る縞は横縞でなく縦縞でなければいけない。縦縞は「軽巧精息の味が一層多く出ているため」だ。」 
 
ところで、この縞というのはもともとセイラス島、ベンガラ島、サントメ島、チャンパ島などの東南アジアの「島」のことだったのだそうです。つまり、やがて「いき」の象徴となる縦縞はアジアの古い記憶を宿した文様であり、それを取り入れていった日本とアジアの関わりにこそ、高度な「いき」の精神の原点なのではないでしょうか。 
 
今期のさそり座もまた、縞柄の着物や小物をさりげなく身につけ、文字通り「いき」の精神を我が身に宿してみるといいかも知れません。 


参考:田中優子『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』(朝日新聞社) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ