12星座全体の運勢

「大きなリズムや流れと協調しよう」 

立夏をすぎ、すっかり太陽がまぶしい季節に入って、街では日傘をさしている人もちらほら見かけるようになってきた5月16日には、さそり座25度(数えで26度)で満月を迎えていきます。 

さそり座26度のサビアンシンボルは「新しい土地でキャンプするネイティブアメリカン」で、キーワードは「臨機応変」。ここでの「ネイティブアメリカン」とは、「自然と調和して生きている人」の象徴であり、彼らは人生に対してなにか過剰な要求をすることがない代わりに、自身の内側から新しい欲求が湧き出てくるごとに、それにふさわしい場所へと直感的にたどり着くことができます。 

26度というのは、外部への志向性が生まれる度数なのですが、今回は固定宮の終わり際で起きる満月で、かつ「硬直化したシステムや慣習」を意味する土星を巻き込んだ形で起こるため、柔軟宮に特有の“流動性”がひときわ強調されやすい配置と言えます。 

今回の満月では、これまでしがみついてきた“正しい”やり方や“揺るぎない常識”とされてきたものの息苦しさや不自然さに改めて気が付き、そこから自然と離れていくアクションや気持ちの動きが出てきやすいでしょう。 

土星は特定の社会の枠内だけで通用する常識や考え方を表しますが、「ネイティブアメリカン」が依拠している「自然」は、そうした狭い常識や考え方を相対化するより大きな生態系のリズムとともに絶えず動いており、そうした大きなリズムや時代潮流と協調して機能していくことに自分らしさを感じていけるかが、今期は問われていくはずです。 
>>星座別の運勢を見る

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「ソウル・メイキング」。

獅子座のイラスト
この世界における大きなリズムや流れと言うとき、日本人にとって歴史的になじみ深いのは仏教の唱えた輪廻転生や地獄や浄土との往還のイメージではないでしょうか。もちろん、現代において地獄や浄土の実在をまじめに信じている人はほとんどいないかも知れませんが、それでも、日本人の深層意識には今もなおそれらのイメージが生きているはず。 
 
そこで、そうした深層意識にこちらの意識をつなげるために具体的なあの世をめぐる話を掘り起こしてみると、例えば、現存するわが国最初の仏教説話集として9世紀はじめに成立した『日本霊異記』のなかに「智者の変化の聖者を誹り妬みて、現に閻羅の闕(みかど)に至り、地獄の苦を受けし縁」というお話があります。 
 
なんだか長くて難しいタイトルですが、これは行基という素晴らしいお坊さんのことを妬んでいた智光というお坊さんについての話です。とても知恵のある人ではあったのですが、行基がみんなに尊ばれて大僧正にまでなるので嫉妬を抑えきれなくなって、つい自分のほうが優れているのにとか、あることないこと悪口を言っていたら病気になって死んでしまった。 
 
それで閻魔の宮殿に行って地獄で拷問されて苦しみを受けるのですが、その際、西の方に立派な楼閣が見えるので、これは誰がお住みになられているのですか? と聞くと、「お前は知らんのか、行基菩薩が亡くなられたら住まわれるのだ」と聞く訳です。結局、智光は死後九日目に生き返って、行基に心から謝ることで助かり、以降は行基を菩薩と信じてその教えを伝え、迷う人々を正しい道に導いたのだとか。 
 
こうした、この世に何かしているあいだに、あの世でも何かができているという話は、じつは仏教の広まる以前からわが国に伝わっていた非常に古いお話の形態なのだとも言われており、ユング派の元型心理学者であるジェイムズ・ヒルマンが「ソウル・メイキング(魂つくり)」ということを言っていたのも恐らくこのことで、この世で目に見えるものをつくっているあいだに、魂の方も目に見えないなにかをつくっていて、それらは表裏一体なのです。 
 
これはひっくり返せば、この世であこぎなやり方で儲けていたり、誰かの足を引っ張っていい思いをしていると、向こうでは絶賛ボロ屋ができていくということでもあります。 
 
その意味で、16日にしし座から数えて「心の基盤」を意味する4番目のさそり座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、目に見えない裏の世界でどんな家を建てるか、という視点から、この世での過ごし方を考えてみるといいでしょう。 
 
 
参考:原田 敏明、高橋貢訳注『日本霊異記』 (平凡社ライブラリー)  
12星座占い<5/15~5/28>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ