• 中村倫也さん
    ワニの何気ない日常を描き人気を博した漫画『100日後に死ぬワニ』が、ワニの死後を生きる友人たちのオリジナルストーリーを加え、『100日間生きたワニ』としてアニメーション映画化。ワニの親友のネズミの声を担当した中村倫也さんが「観終わった後にちょっとだけ力強くなれる作品」と語る、優しくて、愛おしくて、ちょっとマジメな友達の話。 2021年MORE7月号掲載企画から、インタビュー記事をお届けします。
  • 中村倫也さん
    これまで何度も声の仕事をしてきた中村さん。実はあまり自分の声が好きじゃない。

    「カラダの中で鳴ってる声しか聞いたことがなかったから、作品を通して初めて外から鳴ってる自分の声を聞いて衝撃的だったんです。『あんま好きな声じゃねーな』って。でも、この声は僕しか持っていない楽器だし、それをいいと思ってオファーをしてくださったのであれば、そこに甘えるしかない。演出で最初に『“イケボ”にしないでください』と言われたんですが、もしなってたらキャスティングミスです(笑)」

    演じたネズミはぶっきらぼうに見えて、本当は誰よりも友達思いで優しいキャラクター。

    「こいつ、山登りする時にいちばん後ろを歩くタイプだなって思ったんです。疲れているヤツいないかな、落としものないかなとか、いろいろ注意を払いながら視野広く歩いている感じ。実際僕自身もそういうタイプで。17歳の時に仕事場でそうたとえられて、たしかにそうだなと思いました。最前線ではしゃいだりしないから」

    その性格ゆえに、少し困ることもあるそうで。

    「自分は全体を見ているようで、実は人の思惑や欲求を感じやすいんだなと最近気づいたんです。それを推し量って体現する仕事ではあるけど、ビシバシ感じすぎて疲れる時も。来世があったら何も見えないヤツになりたいです(笑)」
  • 中村倫也さん
    劇中ではワニがネズミを元気づける微笑ましい場面が。

    「僕が友達を元気づける時は、悩みの核や原点みたいなものを思い出させてあげることが多いです。それがめぐりめぐって友達のパワーになったことがあったかも。ただ、よく思うんです。みんな、マジメすぎない? って。仕事も半分遊び心を持てば身動きも取りやすくなると思うし、僕なんてマジメすぎないおかげ(笑)で1カ月間、毎日2時間しか眠れない仕事の時もピンピンしてましたよ」

    周囲にも「『なんでそんなことで悩んでるの?』って人がいっぱいいる」とのこと。30代男性は、友達同士どんな会話をしているの?

    「ゲームとか、だいたいしょーもないことが多いですよ。ただ、『保険どうしてる?』とか、『結婚したらどーなんの?』とか、『子供がいるってどんな感じ?』とか、10〜20代とは明らかに違うかも」

    友達のライフステージの変化に接し、若干の焦りを感じることも。

    「うちの親父は30歳か31歳の時に結婚していて、僕の年には子供が2人いたんです。もしこれから家庭を持って子供が生まれたとしても、『子供が成人する時、僕は何歳なんだ?』とか考えることもあります。まあ、こればっかりは考えてもしゃーないですけど(笑)」
  • Ⓒ2021「100日間生きたワニ」製作委員会
    Ⓒ2021「100日間生きたワニ」製作委員会