It girlの「私の履歴書」

選んだ生き方にこそ、センスが表れる

主体的にキャリアを選択し、自分らしく働いている女性たちを取材する連載。今回は、アパレルブランドでのビジュアルづくりの経験を生かし、フローリストとして花屋『whole(ホール)』を構えながらフラワーデザインを行う綱川さんにお話をうかがいました。

綱川禎子(つなかわ よしこ)さん

アパレルで身につけたビジュアルづくりのセンスを生かして、仕入れ、クリエーション、接客まで行うフローリスト

フラワーショップ『whole』オーナー、フローリスト綱川禎子さん

Job :
フラワーショップ『whole』オーナー、フローリスト
Profile :
1987年生まれ、東京都出身。セレクトショップ『ロンハーマン』勤務後、都内のフラワーショップでアルバイトを経験し独立。2017年に花屋『whole』をオープンさせ、オーナーを務める

History

2008
美容の専門学校を卒業後、都内サロンで2年間美容師を経験

2010
セレクトショップ『ロンハーマン』で働き始め、販売、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を経験

2016
半年間、都内のフラワーショップでインターンを経験。その後、『ロンハーマン』を退職し、同花屋でアルバイトをする

2017
都内のワインバーを週末だけ間借りして花屋『whole』をオープン。2019年に東京・代々木上原に移転し、夫のヘアサロンと併設した店舗をオープン

綱川禎子さんの選択

“自分を知ってもらうことで縁がつながり、夢に近づける”

フラワーショップ『whole』オーナー綱川禎子さんバストアップ

“夢は言葉にすると叶う”とよく言うが、口にすることで自分自身の覚悟が決まり、また周りの人もチャンスを与えやすくなるからかもしれない。綱川さんも、“ご縁”の連鎖でチャンスをたぐり寄せた。

綱川禎子「美容の専門学校を卒業しヘアサロンに勤務しましたが、ずっとアパレルにも興味があったんです。サロンをやめて飲食店でアルバイトをしていた時期に、よくお店に来るおしゃれな女性のお客様が“近所に『ロンハーマン』が上陸したわよ”と教えてくださり(笑)。ダメもとで応募してみたところ、運よく採用していただきました」

その後、綱川さんはアパレルの仕事で新たな目標を見つける。

綱川禎子「入社当初は接客メインでしたが、しだいにマネキンのコーディネートや店舗のビジュアルをつくるVMDという職種に興味を持ちました。何気ない日常会話でも『VMDがやりたいです』と伝えていた気がします」

アシスタント、店舗VMD、本社VMDと目標をクリアした頃、ふと「独立したい」という気持ちが芽ばえたそう。

綱川禎子「VMDでの経験を生かし、ゼロから自分の感性を試してみたいと思ったんです。美容師の夫から将来自分のお店を出したいという目標を聞いていたので、それに影響を受けた部分もあります。花の仕事を選んだのは偶然で。夫から定期的に花をもらっていたことや、自分の結婚式での経験などからしだいに惹かれていき、いつしか夫のサロンの隣で花屋を開きたいと思うように」

自分のアイデアで店舗の雰囲気が決まるVMDの仕事もやりがいがあり、しばらく悩んだというが、独立の覚悟が決まってからはアパレルの仕事を退職。都内の花屋でアルバイトをし、経験を積んだ。

綱川禎子「会う人会う人に『自分の店を開く』と宣言し、SNSでも自分が作った花束を投稿していたら、知りあいの飲食店のオーナーが『週末にうちの店で花屋を開いたら?』と誘ってくれました。間借りという形でお店をオープンしてから2年後、今のお店ができるまでにも友達や前職の先輩・同僚が花の依頼をくれて……。夢を叶えるために努力は必須ですが、私の場合は周りの人が導いてくれ、夢への橋渡しをしてくれたことも大きかったと思います」

“自分の脳内を表現できるかが重要で職業はそれを叶える手段のひとつだと気づけた”

代々木上原のフラワーショップ『whole』店内一部

「現在のお店をオープンさせてからは、スタッフと一緒にチームで運営していくことを重視しています。花屋は今まで経験してきた仕事の中でも、断トツでハード。“花が好き!”という気持ちを忙しさで消してしまわないよう、みんなで作業を分担する必要があります。仕事だけでなくプライベートも楽しんでほしいですし、結婚や出産、子育ての選択肢も諦めてほしくない。もちろん、それは私も同じだから、オーナーとして仕事も生活も充実させられるようなチームづくりを目指しています」(綱川さん、以下同)

フラワーショップ『whole』のオーナーが花に触れている手元

「“花屋”と聞くと、店舗接客をイメージする方が多いかもしれませんが、仕事内容は花の仕入れ、個人オーダーの受注、イベントやウェディングでの装花、撮影用の花のスタイリングなどさまざま。『ロンハーマン』で店舗のビジュアルづくりを経験したことで“自分を表現する”楽しさを知りましたが、フローリストも自分のイメージを形にし、それをお客様に届けることまでトータルでできる仕事。アパレルから花屋に転職と聞くと驚かれますが、仕事で実現したいことを整理していくと、自分で想像もしていなかったような仕事にめぐりあえるかもしれません」

フラワーショップ『whole』の店内の様子

Yoshiko's OSHIGOTO STYLE

FASHION

綱川禎子さんのファッション

「装花の現場では動きやすさ、早朝の仕入れ時は防寒重視など、シーンに合わせた着こなしをしています。店舗で接客をする際は、カラフルな花々に囲まれても地味見えしないよう“テンションが上がる服”に。アパレル出身だからか、花との相性も意識します」

MAKE-UP

綱川禎子さんのメイク

「2時半に起きて花市場で仕入れをするので、日焼け止め+αでキマるよう、東京・表参道のアイラッシュサロン『LOAVE』でアイブロウスタイリングとまつ毛パーマを。今日は季節に合わせピンクメイクに」

BAG

綱川禎子さんのバッグの中身

「アイデア出しや事務作業でiPadを使うのでバッグは大きめな『ジル サンダー』を愛用。手が荒れがちだから、『ジョー マローン ロンドン』のハンドクリームは必須。『エルメス』のリップも保湿効果が」

Private

綱川禎子さんのプライベート

「入浴中は仕事のことを考えず、マンガやYouTubeなどを純粋に楽しむ時間に。その日の気分に合わせた入浴剤選びも至福の時間」

●これまで配信した「It Girlの『私の履歴書』」はこちらから

撮影/須藤敬一 取材・原文/宮田彩加 ※MORE2023年5月号掲載