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日々、よく耳にする“SDGs”という言葉。なんのために取り組むの? 私にできることは何? SDGsに興味を持ち始めた井桁弘恵が、そんな疑問に向きあいます!

【Vol.33-1】身の回りに起こりうる「マイクロアグレッション」を知ろう

「マイクロアグレッション」という言葉を耳にしたことはありませんか?「小さな攻撃性」と訳され、人種やジェンダー、性的指向などについてのアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)によって、誰かを無自覚に傷つけてしまう言動のことです。実は、誰もが当事者になりうる可能性があります。

そこで今回は、私たちひとりひとりがマイクロアグレッションを起こさないためにも知っておきたい正しい知識について、性の多様性やフェミニズムを発信する『パレットーク』編集長の合田文さんに教えていただきました。

井桁弘恵さん MORESDGs

ワンピース¥38500/オープンセサミクラブ カットソー¥9900/サントラージュ(アナスイ エヌワイシー) 中に着たキャミソール¥6980/Katrin TOKYO パンツ¥12100/アドアーリンク(O0u)  ヘアピン¥990/サンポークリエイト(アネモネ)  ネックレス¥3520/ロードス(ヘンカ)

What’s SDGs?

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国連で採択された、2030年までに達成すべき17のゴールのことで、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略。私たちが地球に住み続けるために、貧困、飢餓、環境、教育、ジェンダー平等などの問題を世界が協力して解決することを目指す。

教えてくれたのは……

『パレットーク』編集長.
合田文さん

1992年生まれ。大手IT企業にて新規事業の立ち上げを経験した後、26歳の時に「らしく生きるを、もっと選びやすく」がテーマの株式会社TIEWAを設立。現在、ジェンダーやセクシュアリティ、ダイバーシティなどをテーマにしたマンガでわかる自社メディア「パレットーク」の編集長を務めている。

https://ayapalette.notion.site/AYA-GODA-PROFILE-c0d21d3971834366bb757de0d68d65df

そもそもマイクロアグレッションって?

井桁弘恵

合田文さん(以下、合田さん)マイクロアグレッションとは、直訳すると「小さな攻撃性」という意味。人種やジェンダー、性的指向などについてのアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)によって、誰かを無自覚に傷つけてしまう言動のことです。たとえば、「女性は男性に比べて能力が低い」といった直接的な差別ではなく、「女性なのに出世できてすごいね」といった言葉がマイクロアグレッションに当たるといわれています。
一見褒めているように聞こえますが、その裏には「女性は男性に比べて仕事の能力が低い」という潜在的な固定観念が潜んでいることも。このように発言者側には相手を傷つける意図はなく、むしろ褒めているつもりで言っている場合が多いことも特徴です。

マイクロアグレッションの具体例

日常のコミュニケーションの中で、何気なく発した言葉が、知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまうこともあります。そこで、マイクロアグレッションの具体的なフレーズを一例をご紹介します。

ジェンダーや性的指向によるもの

合田さん:無意識にステレオタイプな性別役割を押し付けてしまったり、相手の性的指向を決めつけてしまったりという発言がマイクロアグレッションに当たることも。たとえば、先ほどの「女性なのに出世できてすごい」のほかに、取引先に手みやげを渡す際、上司から「若い女性からお土産を渡すと、クライアントも喜ぶと思うよ」などと言われたことがある人もいるかもしれません。これもマイクロアグレッションのひとつといえるでしょう。発言した人に悪意はないかもしれませんが、その裏には「若い女性は職場の華であるべき」というような、無意識の偏見が隠れているのかもしれません。

また、
「ゲイの人って、おしゃれだよね」といった発言もマイクロアグレッションです。おしゃれであるかどうかは、個々の感性によるもので、セクシュアリティとは関係がありません。こうした発言は、特定のコミュニティに対するステレオタイプを強め、個人のアイデンティティを無視することに繋がるので注意する必要があります。

井桁弘恵

人種や国籍によるもの

合田さん:相手の出自や属性を一方的に決めつけるような発言も、マイクロアグレッションに該当します。たとえば、顔立ちだけを見て「日本語がお上手ですね」と発言してしまったり。もし生まれた時から日本で暮らしていたとしたらどう感じるでしょうか? 

また、日本以外
のルーツを持ち、生まれつき髪の毛がストレートでない人に「髪の毛がクルクルで可愛いね。触らせて!」という発言も同様です。これは「あなたの見た目は、私たちとは違う」という排他的な視線を向けることにつながります。こうした言葉をかけられた人たちは、相手が悪意がなく言っていることを理解しつつも、何度も繰り返されることで疎外感を抱いたり、好奇の目を向けられることに傷つくことも。相手の見た目やバックグラウンドなどについて分析したり、不躾に感想を言ったり、褒めているつもりで珍しがったりということは、誰かを傷つけることにつながることも多いのです。

身体的特性によるもの

合田さん:「(プラスサイズなのに)意外と食べないね」「二重まぶたがいいよね」「色白だね」といった、外見をジャッジする意図を込めたアンコンシャスバイアスにも注意したいですね。これも、小さな攻撃性が繰り返されることで自尊心が傷つけられ、メンタルヘルスの低下につながる可能性もあります。大切なのは、相手も自分も「そのままで素敵だ」ということを理解することではないでしょうか。

編集部が発見! マイクロアグレッションの理解が深まる書籍

マイクロアグレッション 書籍

マイクロアグレッションの内容やメカニズム、影響、対処法を詳しく解説。/デラルド・ウィン・スー著、マイクロアグレッション研究会訳『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション――人種、ジェンダー、性的指向:マイノリティに向けられる無意識の差別』(明石書店)

マイクロアグレッション 本

韓国発の漫画エッセイ。韓国人の著者が、アフリカのガーナ出身の彼氏・マーニと韓国を歩いていたときに受けた無意識の差別体験をソフトなタッチで伝える。/イェロン著、村中千廣訳『地下鉄で隣に黒人が座ったら』(かもがわ出版)

いげちゃんのコツコツ日誌

井桁弘恵さん

今回、はじめて「マイクロアグレッション」という言葉を知りました。
自分ではポジティブな意味で発した言葉が、相手を無意識のうちに傷つけることもある。
こうした意識を常に持ちながら、相手への想像力を働かせたコミュニケーションを取ることの大切さを改めて考えさせられました。

撮影/川原崎宣喜 ヘア&メイク/山口春奈 モデル/井桁弘恵 スタイリスト/小林優奈 取材・文/海渡理恵