いげちゃんのコツコツSDGs MORE

日々、よく耳にする“SDGs”という言葉。なんのために取り組むの? 私にできることは何? SDGsに興味を持ち始めた井桁弘恵が、そんな疑問に向きあいます!

【Vol.36-1】海洋ゴミの現状と、減らす方法・再利用の方法を考えよう

世界で年間約800万トンも発生している「海洋ゴミ」の約8割は、私たちの暮らしの中から生まれているといわれています。生態系や環境に深刻な影響を及ぼすこの問題について、海洋プラスチック100%で作られたアイテムを手がける『buoy(ブイ)』のワークショップに参加し、学びました。

井桁弘江 MORE SDGs

What’s SDGs?

SDGs ゴール

国連で採択された、2030年までに達成すべき17のゴールのことで、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略。私たちが地球に住み続けるために、貧困、飢餓、環境、教育、ジェンダー平等などの問題を世界が協力して解決することを目指す。

教えてくれたのは……

buoy
田所さん

プラスチック製品のデザインから量産を行なっているメーカー「テクノラボ」の有志メンバーが、2019年に立ち上げた海洋ごみ問題に取り組むブランド「buoy(ブイ)」。海に廃棄されたプラスチックを再利用し、美しく新たな形へと生まれ変わらせることで、長く愛され続ける製品を生み出している。
公式サイト▶︎https://www.buoy.yokohama/

海洋プラスチックゴミの現状は?

いげちゃん:『buoy』を始めたきっかけを教えてください。

田所さん:ブランドの母体は、プラスチック製品のデザインから量産を手がけるメーカーで、IoT(Internet of Things)デバイスや医療機器など、プラスチックが不可欠な製品の開発を行なっています。
プラスチックの専門家として、プラスチックゴミが大半を占めるという海洋ゴミ問題にどう向き合うべきか、また、何ができるのか考え続けた結果、2019年に海洋プラスチックゴミを一点ものの工芸品に生まれ変わらせるブランドを立ち上げました。

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「buoy」で販売されている、海洋プラスチックゴミで作られた一輪挿し。

いげちゃん:海洋ゴミの現状を教えてください。

田所さん:日本で最も海洋ゴミの漂着が多い長崎県・対馬市には、年間約8000トンものゴミが回収されています。年間約3億円かけて回収が行われているのですが、実際に回収できているのは全体の4割程度。すべて回収しようとすると、その量は4万トンにもなると言われているんですよ。

いげちゃん:ものすごい量……‼︎ 

田所さん:驚きですよね。こうしたゴミは、海流や大陸からの偏西風に乗って、日本各地の海岸に流れ着きます。よく見ると、日本語だけでなく、中国語や韓国語などさまざまな言語が書かれているのが特徴です。もし日本でこれらの漂着ごみを回収しなければ、さらに海を渡り、アメリカの海岸に流れ着いてしまうんです。

いげちゃん:日本のゴミがアメリカまで流れ着くことがあるんですね!

田所さん:そうなんです。実際にアメリカの海岸では、日本語が書かれたビールケースや洗剤のボトルが見つかっているんですよ。しかも、そのゴミがさらに海流に乗って再び日本に戻ってくるのですが、その頃にはマイクロプラスチックになってしまっているんです。そうなると回収はほぼ不可能ですし、海洋生物や環境への影響も深刻です。

海洋ゴミはさまざまな色、形!

場所によって分けられた海洋ゴミ

いげちゃん:「buoy」が製品を作るために使用している海洋プラスチックゴミは、どこから集められているんですか?

田所さん
:海洋プラスチックゴミは、日本各地のボランティア団体によりビーチクリーンに回収され、色ごと(赤・青・黄色・緑・白・黒)とに仕分けされた上で「buoy」へと運ばれてきます。

いげちゃん:地域ごとに分かれているんですね!

田所さん:そうなんです。地域によってゴミにも特徴があるので、それを少しでも知っていただきたくて。たとえば、対馬をはじめ、九州は日本の漂着ゴミの玄関ということもあり、ペットボトルや洗剤、おもちゃなどゴミのバリエーションも豊富でカラフルだったり、サイズが大きかったりします。そこから北上すると、ゴミのサイズも潮の流れに削られてどんどん小さくなるんですよ。

いげちゃん先ほどおっしゃっていたマイクロプラスチックになるということですね。

田所さん:そのとおりです。

海洋ゴミを使ったコースター

製品は一つ一つ手作業で作られている。コースターの裏には、海洋プラスチックゴミの回収地域の刻印入り。

いげちゃん:海洋プラスチックゴミを一点ものの製品にリサイクルする上でどんな課題がありましたか?

田所さん:そもそも海洋プラスチックゴミは、リサイクルできないものとして扱われていました。なぜかと言うと、プラスチックといっても、PET、アクリル、ポリエチレンなどいろんな種類があり、それぞれの融点(溶ける温度)が異なるため、従来の技術では種類ごとに分別しないと再成形できなかったんです。そのためリサイクルのハードルが高く、ほとんどが埋め立てか焼却処理をされていました。

さらに、海洋ゴミはフジツボが付着していたり、砂がめり込んでいたり、海水や紫外線による劣化が激しいなど、多くの課題がありました。ですが、私たちはプラスチックメーカーとして培ってきたノウハウを生かし、異なる素材でも分別せずに成形する方法の開発に成功したんです。

いげちゃん:コースターや歯ブラシ立て、石けん入れなど、実用的なアイテムがそろっていて、どれもカラフルで軽量なところが素敵です。

田所さん:ありがとうございます。どれもひとつひとつ手作業で、職人が丁寧に作り上げています。製品を通して現在の海の状況を実感できるように、パッケージには海洋プラスチックゴミが回収された場所が明記されたシールを貼っているのでぜひチェックしてください。バーコードを読み込むと海洋ゴミを拾った団体の特設ページにアクセスできますよ!

いげちゃん:それは素敵な仕組み! アイテムが生まれた背景を知るとそのモノへの愛着がよりいっそうわくし、問題を自分ごと化できるので。チェックします。



▶︎▶︎▶︎次回配信の後編では、いげちゃんが海洋プラスチックゴミを使ってキーホルダーを作成!

【井桁弘恵 衣装クレジット】
シャツ¥12650/レイ ビームス 新宿 シュシュ¥1760・イヤリング¥2420・リング(3個セット)¥3960/サンポークリエイト(アネモネ)

撮影/野田若葉(TRON) モデル/井桁弘恵(モア専属) ヘア&メイク/野口由佳(ROI) スタイリスト/小林優奈 取材・文/海渡理恵