彼女たちの人生の一瞬一瞬の愛おしさ、その輝きを共有してほしい作品

韓国ドラマ大好き! なライターが、ぜひおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。今回は、40代という大台を目前にした女性たちの友情、恋愛、そして人生を丁寧に描いたヒューマンドラマ『39歳』のあらすじと見どころを紹介します。

39歳 写真右からチャン・ジュヒ(キム・ジヒョン)、チャ・ミジョ(ソン・イェジン)、チョン・チャニョン(チョン・ミド)

写真左からチョン・チャニョン(チョン・ミド)、チャ・ミジョ(ソン・イェジン)、チャン・ジュヒ(キム・ジヒョン)。

39歳
全12話
出演:ソン・イェジン、チョン・ミド、キム・ジヒョンほか
Netflixシリーズ「39歳」独占配信中

あらすじ

皮膚科医のチャ・ミジョ(ソン・イェジン)、演技指導者のチョン・チャニョン(チョン・ミド)、化粧品セールスマネージャーのチャン・ジュヒ(キム・ジヒョン)は20年来の親友。うれしいことも辛いことも、ともに乗り終えてきた3人は、40代を目前にして、それぞれ人生の“宿題”と向き合っていた。だがある日、残酷な運命が訪れる。

ここが見どころ

みなさん、『39歳』はもうチェック済みですか?
こちらは良質なシスターフッド作品として話題になっていたドラマ。20年来の友情をメインに、さらにはアラフォー女性が直面するリアルについても心に刺さるように描いていて、世代を問わず、学びのある作品です。
バリキャリ、不倫中(と言っても、プラトニックな関係)、そして恋愛経験ほぼゼロという独身女性3人は、39歳をどう過ごすのか……。共感が止まらない、だけど泣けて感動する。そんな本作の見どころをご紹介します。

アラフォー女性のリアル

39歳 ソン・イェジンソロカット

才色兼備の皮膚科医ミジョ。なんでも持っているかのような完璧さの裏には悲しみが。

本作は、脚本家のユ・ヨンア(映画『7番房の奇跡』、『82年生まれ、キム・ジヨン』など)が、40歳を目の前にして人生を見つめ直す3人の女性の“生き様”を描いた物語です。

その3人とは……。

養子でありながら裕福な家庭で大切に育てられ、皮膚科を営む院長ミジョ(ソン・イェジン)。演技指導者で、長い間、1人の男性と不倫関係を続けてはいるけど、純粋でさっぱりした性格のチャニョン(チョン・ミド)。そして、長らく恋愛からは遠ざかっているものの、真実の愛を見つけたいデパートの化粧品販売員として働くジュヒ(キム・ジヒョン)

20年来ものあいだ、仲の良い友人としてともに過ごしてきた彼女たちは固い絆で結ばれています。

  • 39歳 ソン・イェジンソロカット

    花をうっとりと見つめるミジョ。これでアラフォーってマジですか肌管理どうしてるんですか!(切実に知りたい)

そして、全員39歳。40代を目前に控えた微妙な心の揺れや、恋愛模様、友人関係や親子関係などが、おかしくも切なく、時には身を切るような切実さで描かれる場面。恋愛に人生が押し切られるような関係や貧富の差が強調されることはないけれど、40代を目前にした女性が何を選択し、何を切り捨て、彼女自身の人生を貫いていくのかという“アラフォー女性のリアル”がしっかりと描いている作品は、韓国ドラマでは新機軸。そのリアルさは、世代に関係なく、女性の心に刺さりまくっているようです。

配役が鉄壁の布陣

39歳 チョン・ミドソロカット

『賢い医師生活』で大ブレイクを果たしたチョン・ミド演じる、チャニョン。サバサバしてるのにピュアな性格が素敵♡

主人公の3人組を演じるのは、『愛の不時着』のソン・イェジン、『賢い医師生活』のチョン・ミド『海街チャチャチャ』や『D.P. -脱走兵追跡官-:シーズン2』のキム・ジヒョン。しかも、3人とも同じ1982年生まれというキャスティングの徹底ぶり。
それぞれが主役を張れるビッグな役者なうえに、リアル同級生(2021年の撮影当時、3人はガチで39歳)たちは阿吽の呼吸で、親友同士にしか出せない雰囲気を漂わせていました。
ソン・イェジンについては言わずもがな、チョン・ミドも、キム・ジヒョンも、ミュージカルや演劇でキャリアを積んできた実力派女優。揺らぎ世代の女性たちの繊細で複雑な感情を、それぞれが丁寧に表現していました。

タイトル“39歳”の意味について

39歳 ソン・イェジンとヨン・ウジンの2ショット

児童養護施設で出会ったミジョとキム・ソヌ(ヨン・ウジン)。このソヌ氏、「(高速道路の)休憩所」みたいな人だとミジョに言われていました(笑)。

もうすぐ40歳の主人公たちは、全員未婚。それなりに社会的な立場があり、稼ぎも少なくはないけれど、老後を1人で生きていくことを考えると、そこまで余裕があるわけでもない(ミジョは除く)。30代前半までは、結婚や出産という人生の選択肢に対して思い悩んだり、年齢的なリミットを感じていた時期もあったはずだけど、39歳の今は、ある程度、折り合いがついている。

そんな3人は、まわりから見たら十分大人だけれど、親友同士で居酒屋やカラオケに集れば、学生時代から何も変わっていない、ただのミジョチャニョンジュヒ。着たいものを着て、食べたいものを食べ、行きたいところに行く。恋愛だってバリバリ現役で、まるで10代のようなガールズトークを繰り広げます。「あの男はダメ!」と叱ったり、「(彼は)いいと思うんだけどな」と後押しをしたり。部屋飲みのまま、雑魚寝したり、時にはクラブで踊りまくることも。自由! 楽しそう!

ただ、年齢を重ねるごとに、身体や心の悩みも増え、“老いへの不安”を意識する時期でもあります。人生の折り返し地点は確実に近付いていて、“両親の老後”とも向き合わなくてはいけないわけで。それでも、自分に残された人生をどう生きるかについて、心のまま、自分の信念に基づいて、選び取れるようになった頃とも言えるんですね。それが、このドラマで描かれる“39歳”の姿なんじゃないかと思います。

3人で解決していく“宿題”、そして各回冒頭シーンの意味

彼女たちの“明るさ”とは対照的に描かれる重いテーマが、第1話・開始3分後の葬儀のシーン。20年来の付き合いがある家族同然の親友3人組のうちの1人が亡くなることを前提に物語が進んでいくのです。
出だしから、あまりにも衝撃的な展開。「一体、何があったの?」とイッキにドラマの世界へと引きこまれたかと思えば、彼女たちの1人に“余命半年”が宣告されて……。

ありふれた、しかし、とてつもなく悲しい状況の中で彼女たちは選びます。
できる限り楽しい時間を過ごすことを。大切な相手を尊重することを。
人生の伏線を回収するように、残された宿題を解決していきます。 

「父と母に健康診断を受けさせてほしい」
「(残された恋人に)週に1回、サムギョプサルを食べさせてほしい」

そんなお願いをする友に「週に1回は、さすがに無理よ」と文句を言いつつも、忘れないよう付せんに書いて貼っていく律儀な親友たち。逝く者、残される者、お互いがお互いの意思を尊重し、最後まで納得のいくように支え合う姿と感情を丁寧に描いています。

39歳 左からキム・ジヒョン、ソン・イェジン、チョン・ミド

大人のパジャマパーティ(といっても、着ているのはミジョだけだけど)って、楽しいですよね!

各話の冒頭に挿入される、回想シーン。何気ない会話のこともあれば、3人にとっての“ちょっとした事件“だったりするのですが、それがそのエピソード回の切ない伏線となって、物語に引き込まれていきます。彼女たちの人生の一瞬一瞬の愛おしさを、視聴者も共有しているような気分にさせてくれるのです。


「人生にとって一番大切なのは、誰かと過ごした時間である」。
「別れは、始まりでもある」


そんなことを何度も噛みしめたくなるドラマです。

作品概要

39歳
全12話
Netflixシリーズ「39歳」独占配信中

39歳 Netflix(ネットフリックス)公式サイト
ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で爆食。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。最近は念願の「漢江ラーメン」を食べました。漢江のたもとで食べるラーメンは、控えめに言って最高!