中学生の青春スポ根作品かって⁉ いいえ、全世代によるリアル成長物語です!

韓国ドラマ大好き! なライターが、ぜひおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。今回は、田舎の中学生たちが切磋琢磨しながら成長していく、ヒューマンスポーツドラマ『ラケット少年団』のあらすじと見どころを紹介します。

ラケット少年団 男子バトミントン部4人の集合写真

写真左からバトミントン部キャプテンのユンダム(ソン・サンヨン)、ウチャン(チェ・ヒョンウク)、ヨンテ(キム・ガンフン)、へガン(タン・ジュンサン)。

『ラケット少年団』
全16話
出演:キム・サンギョン、オ・ナラ、タン・ジュンサン、ソン・サンヨン、チェ・ヒョンウク、キム・ガンフン、イ・ジェイン、イ・ジウォンほか
Netflixシリーズ「ラケット少年団」独占配信中

あらすじ

主人公のユン・へガン(タン・ジュンサン)はプロを目指す野球少年。父親のヒョンジョン(キム・サンギョン)が知人の借金の保証人になったことから、へガンの野球クラブの費用すら捻出できない経済状況に。へガンの妹ヘイン(アン・セビン)が喘息持ちということもあり、父親はソウルから遠く離れた中学校のバトミントンコーチの職に就く。都会から田舎に転校してきたへガンはバドミントン経験者。寄せ集めのバドミントン部を廃部の危機から救うため、コーチである父親とともに、再びラケットを握り、大奮闘するのだが……。

ラケット少年団 ヒョンジョン(キム・サンギョン)のソロカット

ヘガン父であり、バトミントン部コーチのヒョンジョン(キム・サンギョン)。彼の適当さとふてぶてしさ、素っとん狂な表情がいちいちおもしろい(笑)。どうみても3枚目なのですが、時時折垣間見える繊細さのさじ加減が絶妙。強いるでもなく、ほったらかしにするでもなく、息子と生徒たちの最善を見極めている感じがよき! 

ここが見どころ

オリンピックに、夏の高校野球と、例年よりも熱い2024年の夏、皆様どうお過ごしでしょうか。「スポーツってドラマティックだよね」「もっとスポーツに浸りたい!」というお気持ちが残っている方に特におすすめしたいのが今作。
ソウルから遠く離れた過疎の村で、中学生たちがバドミントン部の存続をかけて一致団結! と言っても、「気合いだ~!」で乗り越えるようなスポ根ドラマでもなければ、先輩のシゴキやいじめのドロドロも、ほぼゼロ。友情、家族、村の人々との交流、そしてちょっぴりのラブストーリーまでが、優しく織り交ぜられたヒューマン青春スポーツドラマなんです。
そんなわけで、本作の推しポイントを説明します!

若手俳優たちによる、若さはじける等身大の演技にきゅん!

1中学のバドミントン部のドタバタを演じ切った主要メンバー(男子4名&女子2名)の演技がすごい! 真っ直ぐなへガン(タン・ジュンサン)たちの言葉にハッとさせられたり、元気になれたり。大人になるにつれ、人は世間体や責任を複雑に考えてしまうもの。だからこそ「まだ何者でもない」ピュアで真っ直ぐなへガンたちの言葉が刺さるんです。

ラケット少年団 メイン女子選手の2ショット

写真左からセユン(イ・ジェイン)、ハンソル(イ・ジウォン)。セユンは女子バトミントンを背負ったエース。2人は仲良し。

たとえば、日本チームとの試合で勝利したとき、コーチが生徒に「日本が嫌いでしょ? 正直に言ってもいいのよ」と言うんです。女子選手たちは「嫌ってません。とても親しくしてます」と。ではなぜ、気合を入れて戦ったのかと聞かれた彼女たちは、こう答えます。「相手が日本でなくても同じように戦っていました。これはスポーツだから。バドミントンで戦うだけです」ときっぱり。その場にいた大人たちはハッとした顔をしながら「俺たちより大人だな」と感心するのでした。一方、同じ質問をされた男子選手たちはというと……。「怒られたくなかったから頑張りました」だそうで。素直か!(笑)

ラケット少年団 バトミントン部の4人ショット

女子はだいたいキリッとしてるんですが、男子選手たちの方は、わりとズレ気味というかゆるっとしてます…。

選手たちの素直なフィルターを通して表現された作品メッセージ、すばらしかったです。逆に、試合攻略法や、工事現場でのアルバイトといったエピソードでは、世の中の仕組みや厳しさが表現され、「世の中はきれいごとだけではない」という若者向けのメッセージも含まれていて、10代の彼らにそういったメッセージを伝えさせるという演出・脚本の上手さがキラリ。

また、ここでは詳しく紹介しませんが、中盤から合流するメンバーも。彼の鋭い分析力が勝利を導いたシーンが何度もあり、「スポーツは、運動神経がいいコばかりでやるものではない」「チーム全員が主役」という強いメッセージを感じました。

撮影当時は全員10代だったそうなのですが、「この年で、ここまで幅のある演技ができるって、この子たちは何者⁉」と驚くばかり。しかし、彼らの出演作を見ると「あの作品に出ていたの⁉」「キャラが全然違うんだけど!」と、その成長と演技力に、またまた驚かされます。ラケット少年団、恐ろしいコ……!

以下、主要メンバー紹介です。

  • ラケット少年団 ヘガン(タン・ジュンサン)ソロカット

    ヘガン(タン・ジュンサン)
    父親(バドミントン部のコーチ)の厚かましさ&単細胞さと、母親の運動能力をしっかりと受け継いだ本作の主人公。「俺はユン・ヘガンだ!」が口癖。最初は全然ピンとこなかった自分ですが、最終回では完全にきゅんモードへ! 主な出演作は『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』『愛の不時着』など。

  • ラケット少年団 ユンダム(ソン・サンヨン)ソロカット

    ユンダム(ソン・サンヨン)
    バトミントン部のリーダーで正統派イケメン。劇中でユンダムが発信するSNSのハッシュタグが作品メッセージだったり、視聴者の気持ちの代弁キーワードだったりするなど、ちょいちょい印象に残る役でした。主な出演作は『今、私たちの学校は…』『浪漫ドクターキムサブ2』など。

  • ラケット少年団 ウチャン(チェ・ヒョンウク)ソロカット

    ウチャン(チェ・ヒョンウク)
    背が高く、シュッとしたイケメン。高身長を活かした守備力と、仲良しメンバーのヨンテとのイチャコラが最高! そして時々見せる泣き顔もキュート♡ かわいいは正義って本当ですね。主な出演作は『輝くウォーターメロン~僕らをつなぐ恋うた』『D.P.-脱走兵追跡官- シーズン2』『弱いヒーロー Class1』『二十五、二十一』など。

  • ラケット少年団 ヨンテ(キム・ガンフン)ソロカット

    ヨンテ(キム・ガンフン)
    ヘガン、ユンダム、ウチャンより1つ年下の愛されメンバー。泣きの演技が本当にお上手でした。そして、自由過ぎる父親を持った息子のピュアさにほっこり。余談ですが、韓国のリアルバラエティ番組に『自然人』という、人里離れた場所で自給自足に近い形で暮らす人たちを追う番組があるのですが、ヨンテの実父がその番組に出てくるような超個性的な人で大爆笑しました(笑)。主な出演作は『スタートアップ』『キングダム2』『ホテル・デルーナ~月明かりの恋人~』『椿の花咲く頃』『ミスター・サンシャイン』『キム課長とソ理事 ~Bravo! Your Life~』など。

  • ラケット少年団 セユン(イ・ジェイン)ソロカット

    セユン(イ・ジェイン)
    女子バドミントン界でぶっちぎりの強さを誇る女子選手。クールでストイックだけど、友情のためなら海を越えて駆けつけるほど情に厚い。ヘガンとの胸キュンなラブラインにも注目♡ 彼女は『賢い医師生活』で看護師長の娘(ユーチューバー)役だったんですが、同一人物とは思えないほどの演技力でした。主な出演作は『夜になりました~人狼ヲ探セ~』『恋するジェネレーション』など。

  • ラケット少年団 ハンソル(イ・ジウォン)ソロカット

    ハンソル(イ・ジウォン)
    「まさにヒロイン!」というキャラのセユンに対し、平凡の代表だったハンソルのセリフはかなりのリアリティが……。たとえば前の小学校でハブられた理由について「奇数だったから、なんとなく」だそうで(震)。無邪気って怖い! 撮影時は14歳だったそうですが、小顔&スタイル抜群なのでかなり目立っていました。スタイル強っ! 主な出演作は『SKYキャッスル 上流階級の妻たち』『プロデューサー』など。

     

ブラックユーモアを交えながら成長する登場人物たち

子どもたちの熱演もさることながら、子供たちを見守る大人たちにもご注目を。
友情や初恋、家族など描かれるが、日々の生活の中でご近所さん=村人たちが深く関わってきます。5歳のヘイン(ヘガンの妹)が迷子になれば村人全員で探しまわり、料理を作りすぎたら(あるいは味に自信がなかったら)近所へとおすそ分け。おばあさんの100歳の誕生日を村中で祝い、冠婚葬祭や困った問題も村ぐるみで考え解決。子どもたちのバドミントンの試合には村中で現地へかけつけて応援。まるで、ご近所付き合いがあたりまえだった“昭和”の時代のよう。

ラケット少年団 

写真左から村長(ノ・ウヒョン)、、ヒョンジョン(キム・サンギョン)、ヘガン、ヘウン(アン・セビン)。引っ越してきた直後のヒョンジョン一家。ド田舎すぎてロングドライブをした結果、ヒョンジョンとヘガンの目の下にクマが(笑)。

村での生活は、ただただ平凡な日常そのもの。しかし、大人たちそれぞれが抱える問題にも焦点を当てて丁寧に描いているんです。ヒョンジョンはコーチ、そして親として悩み、また完璧に見えるヨンジャオ・ナラヘガンの母)も辛い思い出が。老夫婦はすてきな子供部屋(村で唯一、Wi-Fi完備)まで用意しているのに、肝心の孫は遠くに住んでいて空き部屋のままだし、100歳の母親と2人暮らしの中年の娘は都会者を毛嫌い。さらに都会からやってきた中年夫婦はワケアリなのか生きる気力がなく、過疎化が進む村なのに村長はノープラン……。

様々な問題を、時に優しく、時に激しい言葉でぶつかり合いながらも、互いに助け合い、解決していく村人たち。子どもたちは大人に助けられ、大人たちも子どもたちに教えられながら、問題を最善の方向へと導いていくんです。つまり、本作は村で暮らす全員が成長するリアル青春ドラマなんですね。

ラケット少年団 都会から引っ越してきたワケアリ夫婦の2ショット

都会から越してきたワケアリ夫婦。写真左から(パク・ヒョジュ)、(チョン・ミンソン)

ちなみに、田舎暮らしのリアルやスポーツ界の闇などを暴き、それらを揶揄しまくったギャグシーンは捧腹絶倒。
まず、主人公たちが暮らす家の隣人のおばあちゃんの買っている犬の名前が“フレックス”なんです。フレックスは韓国語で「富を誇示する、散財する」という意味。名づけのセンスよ!(笑) 

この田舎に暮らすフレックスのおばあちゃんが、ソウルから引っ越してきたばかりのへガンへインに、うどん(カルグクス)をふるまうシーンがあるんです。彼女が化学調味料(多分ダシダ)を入れてうどん(カルククス)を出すと、兄妹は「今まで食べたうどんの中でいちばん美味しい!」と目を輝かせながら食べるんですね(笑)。

自分は「田舎暮らしをしている人は健康な生活を送っている」という偏見を持っていたのですが、この勝手な田舎バイアスを小気味よくぶった切ってくれた本シーンに爆笑&猛省しました……。

村の生活を必要以上に美化したりしない。それも本作の魅力ですね。

ラケット少年団

写真左から、ヘガンの隣人の、うどんを作ってくれたおばあちゃん(チャ・ミギョン)と村長。

こんなに出るの⁉ 豪華すぎるカメオ出演者

ラケット少年団 うどんおばあさんとカメオ出演のキム・ミンソク

うどんおばあさんを道案内する、カメオ出演のキム・ミンソク。

豪華カメオも本作の見どころのひとつ。バトミントンがテーマということで、キム・ガンフンが演じたヨンテ、憧れの選手として韓国バドミントン界のレジェンドで金メダリストのイ・ヨンデが本人役で出演。さらに、脚本は『刑務所のルールブック』のチョン・ボフン、演出が『被告人』のチョ・ヨングァンということで、以下の出演者が参加しています。

『被告人』からはキム・ミンソク、チョ・ジェユン、イ・シオン、クォン・ユリ(少女時代)が。『刑務所~』からはパク・ヘス、パク・ホサン、カン・スンユン(WINNER)、チョン・ミンソン、イ・ギュヒョン、キム・ソンチョル、アン・サンウなど。

脚本家と演出家との繋がりだけで、カメオ出演者が11人も⁉ 1作品に2けた以上の人数をカメオ登場させるドラマははじめてなんじゃないでしょうか(笑)。しかも、ただのカメオ出演にとどまらず、出演者のほぼ全員が、前作出演時の役柄とエピソードをにおわせていたり、本作のキーマン役を担っていたりと、2度びっくり!

出てくる人すべてが「観たことある!」と思うくらい、豪華キャストばかりの作品です。

ラケット少年団 ワケアリ中年夫婦の夫(チョン・ミンソン)ソロカット

『刑務所ルールブック』ではコ・パクサ役だったチョン・ミンソンはレギュラー出演。他カメオ出演者とのシーンでは『刑務所~』時代を思い起こさせるセリフも。

田舎が舞台ということもあり、ほのぼのと癒されるストーリー、豪華出演者たちが魅せてくれる演技に、泣いて笑って感動しきりの、全16回でした。基本的には中学生メインのスポーツ青春ドラマではありますが、スポーツをする意味、そこから得られるもの。そして、決して忘れてはいけないこと。若者世代、そしてかつての少年少女だった今の大人たちに投げかけられた真摯なメッセージが胸にささる作品でした。

ラケット少年団 ユンダム、ヘガン、ウチャンの3人が教室集合中

めったにお目にかかれない(笑)ユンダム、ヘガン、ウチャンの教室シーン。彼らが高校に進学できるのかも確かめてくださいね(笑)。

ラケット少年団 ウチャンのスマッシュのカット

ウチャンの甘えんぼスマッシュ!

ラケット少年団 ユンダムのスマッシュカット

ユンダムの、俺を見ろスマッシュ!

ラケット少年団 ヘガンソロカット

ビビるヘガン!

ラケット少年団 ヨンテの号泣シーン

号泣するヨンテ!

ラケット少年団 ヘガン、ヨンテ、ウチャンの3ショット

社会の厳しさを身をもって実感中のヘガン、ヨンテ、ウチャン。これも青春ですよね!

作品概要

ラケット少年団
全16話
Netflixシリーズ「ラケット少年団」独占配信中

Netflixシリーズ「ラケット少年団」独占配信中
ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で爆食。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。