リアルな筆致と絶妙なバディコメディで徴兵制に切り込んだ名作

韓国ドラマ大好き!なライターがおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。
今回は、チョン・へインやソン・ソックのブロマンスに、“セミ姉”ことウォン・ジアンの演技が詰まった『D.P. -脱走兵追跡官-』を紹介します。

D.P. -脱走兵追跡官-:チョン・へインとク・ギョファン

ジュノ(写真左/チョン・へイン)とホヨル(ク・ギョファン)は入隊中ですが、脱走兵を追うため、時々シャバに出動

『D.P. -脱走兵追跡官-』シーズン1~2
全12話(各シーズン6話)
出演:チョン・ヘイン、ク・ギョファン、キム・ソンギュン、ソン・ソック、チ・ジニ、キム・ジヒョンほか
Netflixシリーズ「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン1~2独占配信中

あらすじ

2014年に兵役で入隊したアン・ジュノ(チョン・へイン)は、上官のパク・ボムグ(キム・ソンギュン)の指示で、脱走兵を捕まえる「D.P.」に任命される。元D.P.の上等兵ハン・ホヨル(ク・ギョファン)と組んで逃亡する脱走兵に関わるうち、ジュノは過酷な軍隊の闇に直面する。若き民間人に課される容赦のない強制=軍の責務。人間の尊厳を無視した“絶対服従”の命令が罪なき兵士らを地獄に突き落としている事実。過酷な現実から逃げることは、果たして罪なのか……。

ここが見どころ

D.P. -脱走兵追跡官-:チョン・へイン

はあ……。さすがチョン・へイン様。陰のある役でも美しい!

みなさん、こんにちは!
この『D.P. -脱走兵追跡官-』は徴兵制の闇を描くという、軍隊モノとしてもめずらしい作品。重めのテーマながら、チョン・ヘイン(代表作『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』)&ク・ギョファンによるバディものとしてのおかしみと、心に重くのしかかるような悲しみの連打で魅せる展開がすばらしく、2021年のシーズン1では“韓国のゴールデングローブ賞”とも呼ばれる百想芸術大賞で賞を総なめに。2年後の2023年に配信したシーズン2で、さらに人気を得たという名作。これだけでも十分観る価値のある作品なのですが、今だからこそ観てほしい理由があるんです。

善悪では測れない、兵役の暗部を鋭く描いた物語

D.P. -脱走兵追跡官-:軍隊内でのしごきシーン

「軍隊生活」と書いて「理不尽」と読む、徴兵制の現実よ……。

視聴前は、テーマがテーマだけに「共感しにくいかも」と思っていたんですが、全然違いました。軍人も一般社会で暮らす私たちも、さほど変わらない! 「おなじ人間だもの!」ということが、良くも悪くもリアルに描かれていました……。

 ぶっきらぼうな性格の中に優しさと芯の強さを持っている青年アン・ジュノは、兵役義務で入隊後、軍の脱走兵を追跡する部隊「D.P.」に配属されます。そこでハン・ホヨルとバディを組んで、軍事基地から脱走した兵士たちそれぞれが抱える過酷な問題と厳しい現実を知ることになるのですが……。これがまあ、同情せざるを得ないくらいのしんどい理由でして。

そう、「いじめ」と「パワハラ」。それも生半可なものじゃありません。軍隊という特殊な環境の中で、罪の意識もなく、対象を叩きつぶすことで憂さ晴らしをする加害者。保身のために傍観者になる者。そして、理由もなくいじめのやり玉にあげられる者……。人間の尊厳を保てなくなるほどのいじめやパワハラが横行している時、実際にいじめを行った者だけが加害者かと言えば、そうではないですよね。“傍観”することも、さらに被害者を苦しめるのです。

D.P. -脱走兵追跡官-:チョン・へイン

一体何があったのか……。それは本編で確かめてみて。

暴力の温床となっている兵役の様子を描く一方で、親の権力や家族のコネで兵役から逃れ、好き勝手している青年たちの姿や、軍の上層部が隊員の命を守らず保身に走る様子や、それについての情報操作についても描かれている本作。軍隊が舞台なので、結末も極端なところまで行ってしまうのですが、同様の事態は、どんな集団の中でも起こっているはず。軍隊内部の告発というよりも、いじめ&パワハラの構造自体を見せつけ、それが行き着く先を示すことで、社会のあらゆるところに蔓延っているいじめ&パワハラについて警告を発しているように感じました。そして、傍観者でいることの罪も含めて。被害者が加害者に、加害者が被害者になるパラドクスを見事に描いています。

D.P. -脱走兵追跡官-:チョン・へイン

「憲兵」という文字の入ったヘルメットと腕章をしている制服姿のジュノ。チョン・へインが着ているからか、ずっと眺めていられますね!

原作(ウェブトゥーン)を手掛けたキム・ボトン氏は、今回脚本にも参加しておりまして、彼自身が「D.P」出身なんだそう。作品から軍隊生活の厳しい現実がひしひしと伝わってきます。「義務を守ることの意味とは何なのか」「何が善で、何が悪なのか」。答えの出せない大きな問いを視聴者に投げかけるのですが、それこそが、今観るべき理由のひとつ。世界が混沌としている今こそ、常識をう呑みにせず、“自分で考える”ことの大切さを教えてくれているのではないでしょうか。

沼る! 花ざかりのブロマンス♡

しょっぱなから大真面目に語ってしまいましたが、軍内部の告発を小気味のよい展開&シャレた演出で重苦さを中和し、上手に徴兵制に切り込む当たり、本当にエンタテインメント性は高い作品ですよ。

さて、ここからは著者の独断によるおすすめポイントです! 

ヘイン&ギョファンの愛情ほとばしるブロマンス

D.P. -脱走兵追跡官-:ク・ギョファンとチョン・へイン

軍隊内での2人。やっぱりいい感じ♪

D.P. -脱走兵追跡官-:ク・ギョファンとチョン・へイン

こんな感じで脱走兵を捜索しているんですが、ホヨルがあれば場が和む! 

拘束すべき対象者が最悪の結末を迎えて落ち込んでいたジュノ。その原因になった先輩も、脱走兵を追い込んだ人間も、本当にどうしようもないヤツばかりで、観ているこっちもフラストレーションが溜まってしょうもない、第1話。しかし、2話からは重苦しい空気を、秒でエアリーにする天使・ホヨルが登場! 彼の出現によって、グッと物語がおもしろくなるんです!

ホヨルジュノのD.P.でのバディで三枚目担当。そして健全で真っ当な人間性の持ち主なのでした。脳筋、タテ社会で辟易する軍隊生活においても、威張らず、人をおとしめず、常にユーモラスな言動で対応するホヨルが素敵すぎて。堅物なジュノに力抜いていこうな、となだめつつ、彼のイケメンぶりをダシに使って、イジりつつも、おさえるべきところは、きっちりとおさえる先輩ぶりに拍手! そしてイヤな先輩にジュノを殴れと指示されても、ビンタしたフリをしてやりすごすところ(音に合わせてジュノも「チェソンハムニダ!(申し訳ございません)」と合いの手)、腹を抱えて笑わせていただきました、本当に大好き!

D.P. -脱走兵追跡官-:ク・ギョファンとチョン・へイン

脱走兵の目撃情報のあった場所には夜行バスや電車で移動。専用の車も持たせてもらえない「D.P.」の脆弱な経費は、原作者キム・ボトン氏の実体験に基づいているそう。

そんなホユルのおかげで、ジュノもいじめのターゲットからも外れ、ホヨルと一緒のときは楽しそう。性格もクール、声のトーンも低めなジュノとは対照的なホヨルの明るい喋り方もあいまって、デコボコバディ感は倍増。さらに任務を重ねるごとに積み重なっていく唯一無二の情が生まれていくのでした。

物語が進むにつれ、2人の情はより深いものに。実はホヨル、除隊間近なんです。しかし、脱走兵を追うごとに傷つき、胸を痛めているジュノを心配して、「もうすぐ自分はいなくなるのに、おまえ大丈夫か」と。その心配性ぶりは、自身の除隊日にさく裂。特殊な任務がある場合は除隊を保留できるという兵役法を盾に軍隊に残ったあげく、「ジュノを守れるのは、僕以外にいません!」と軍上層部とやり合うホヨル。その姿は、最愛のパートナーを全力で守り抜こうとする姿そのもので、筆者の脳内がたぎったのは言うまでもありません。

ク・ギョファンに惚れた方は、今すぐ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の第9話『寄生獣 -ザ・グレイ-』をチェック! 

D.P. -脱走兵追跡官-:ク・ギョファンとチョン・へイン

『ブルース・ブラザーズ』気取りの2人。

ソン・ソック&キム・ソンギュンによるブロマンス

D.P. -脱走兵追跡官-:ソンソックとキム・ソンギュン

左がジソプ、右がボムグ。まるで恋が生まれた瞬間のようなショットですね♡

お次のブロマンスカップルは、ジュノ&ホヨルの上司にあたる2人です。パク・ボムグ中士(キム・ソンギュン)は、長いものには巻かれろ的な一面もあるけれど、内心は上官たちのやり方に納得できないものを持っていて、ここぞ、という時には部下を守る気概のある男。もうひとりは、ボムグの上官として赴任してきたイム・ジソプ准尉(ソン・ソック)。極悪非道でも、傍若無人でもないけれど、保身のために危ない橋は決して渡らず、進級のためには上官に媚を売る。ただし、部下には有無を言わせない強引さが「ウチの会社にもいるわ……」と想像できて、とってもリアル。
序盤では、お互いにキリッと敬礼をしながらも、心の中は真っ黒、という神経戦を繰り広げていた2人ですが、無能な上官のせいで最低最悪な事件が起きたために仲間意識が芽生え、中盤以降は、こっちのブロマンスも花盛り!

D.P. -脱走兵追跡官-:ソン・ソックとキム・ソンギュン

シーズン1ではこんなに距離があったのに……

もう少し2人の関係性を説明しますと、ジソプボムグは、階級はジソプのほうが上なんだけども、実年齢はボムグが上なんです。なので、序盤はジソプの冷笑たっぷり、皮肉たっぷりのマウンティングを、ボムグが「こちとら、お前より長く生きとるんじゃ!」という貫禄&余裕で受け流すという、あまり萌えない関係だったんです。しかし、シーズン2に入ると、ジソプは完全にキャラ変していまして、「あんた、こんなに熱かったん? 皮肉屋はどこいったん!?」と別人を疑うほどの感情爆発屋さんになっていたのでした。しかし、そうなるには十分な理由がありまして……。

くわしくは本編で確認してほしいのですが、さっくり言うと自分がかわいがっていた弟分(チェ・ヒョヌク!)にかかわる任務だったために取り乱して黒幕の「罠」にかかり、脱走兵たちの今後を左右する重大な選択を強いられる……という展開に。そんなこんなで人道派のボムグとはお互いを理解し合う仲になり、最初の謎マウンティングはなんだったんだ、と思うほど牧歌的な光景が見られます。

何しろ、ジソブが「ヒョン!(兄さん)」(実際には言ってません)と、その細い目に敬愛と尊敬を織り交ぜながらボムグにデレる、という、言い換えればソン・ソックに慕われてまんざらではないキム・ソンギュンのブロマンスを目撃できますからね! いろいろとしんどい描写は多いと思うんですけど、みなさん、あきらめないで!

D.P. -脱走兵追跡官-:ソンソックとキム・ソンギュン

シーズン1の2人からは想像もできないイチャコラぶり!

D.P. -脱走兵追跡官-:チェ・ヒョヌク

ジソプの弟分を演じたチェ・ヒョヌクの演技も神がかっていました!

D.P. -脱走兵追跡官-:チ・ジニとチョン・ソギョン

「自分以外みんなバカ」だと思っている軍の偉い人ク・ジャウン(チ・ジニ)とその忠犬オ・ミヌ(チョン・ソギョン)。「いい人」を演じることにかけては定評のあるベテラン俳優2人の、骨の髄まで腐っている悪役ぶりをお楽しみに!

『イカゲーム2』で注目された“セミ姉”こと、ウォン・ジアンも出演

韓国ドラマシーンでは、2024年12月26日に配信がスタートした『イカゲーム』シーズン2の話題で持ち切りですが、本作で大注目を浴びたキャストがいます。それは、ウォン・ジアン。ショートウルフカットのヘアスタイルに鼻ピアス、首にはチョーカーを付け、ガールズ・クラッシュ的なヴィジュアルで鮮烈な印象を与えたセミを演じました。クールで冷たい雰囲気を持ちながら、実は弱者に優しく、強者を利用するしたたかさを持ったキャラクターに、125番の内気な少年ミンス(イ・ダウィ)同様、視聴者もぞっこんラブ♡

彼女の外見と内面のイケメンぶりは、イ・ジョンジェ、イ・ビョンホン、コン・ユ、カン・ハヌル、イム・シワン、T.O.P(元BIGBANG、チェ・スンヒョン)といった怪物級の俳優陣に囲まれながらも、抜群の存在感を放っていました。

そんなウォン・ジアンの演技、気になりますよね? そう、それこそが『D.P. -脱走兵追跡官-』なのです! なにしろ本作は彼女のデビュー作。ジュノを惑わす“その女”ヨンオクとして、まったく初々しくない演技をしております! ロングヘアだし、雰囲気もキャラも全然違うのでしっかり見つけてくださいね~。

本当は、チェ・ヒョヌクとか、日本の漫画やアニメ(『鋼の錬金術師』や『ワンピース』など)をオマージュしたシーンとか、まだまだ語りたかったんですけど、すでに長くなってしまったので、このへんで『D.P. -脱走兵追跡官-』の追跡は終わりにしたいと思います。

D.P. -脱走兵追跡官-:チョン・へイン

最後に、軍服に身を包んだべらぼうにカッコいい、チョン・へインでアンニョン!

作品概要

『D.P. -脱走兵追跡官-』シーズン1~2
全12話(各シーズン6話)
出演:チョン・ヘイン、ク・ギョファン、キム・ソンギュン、ソン・ソック、チ・ジニ、キム・ジヒョンほか
Netflixシリーズ「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン1~2独占配信中

D.P. -脱走兵追跡官-|Netflixにてシーズン1~2独占配信中
ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で爆食。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。さらに東アジア最大のレインボーパレードである、台湾LGBTプライドパレード「臺灣同志遊行」にも参加。2025年の“海外旅はじめ”はソウル&プサン(韓国)。6月にはシアトル(アメリカ)旅を計画中。