12星座全体の運勢

「<新しい日常>への通過儀礼」

暦の上では秋が始まる「立秋」を過ぎて最初の新月を迎えるのが8月19日。それは、暑さが落ち着く「処暑」すなわち太陽が乙女座に入る直前、体感的にも夏の終わりを感じさせてくれる蜩(ひぐらし)の鳴く獅子座終盤あたりで起きていきます。

そんな今回の新月のテーマは、「新しい日常へ」。それはどこか空々しく響いてしまう上からの号令によってみな一斉に同じところから始まるものではなく、あくまでここしばらくの悪戦苦闘や悶え苦しむ期間をやっとの思いで抜け出した結果、流れ着いた先で自分がもうすでに新しい日常に立っていることを後から実感していくはず。夢から醒めた後の起き抜けの朝のひとときのようにおごそかに、しかし、確かにこれまでとは決定的に違う世界にいるという確信を胸に、新たな門出の仕度を整えていきましょう。

「もはや夜はなく、<救い主である神>が人間たちを照らすが故に、ランプや太陽の光は要らなくなる」(『ヨハネ黙示録』第二十二章、5節)

この場合の<神>とは、他でもない自分自身であり、あるいは古い自分を先導する新しい自分のことなのだと思います。

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「太陽とともに始める」。

獅子座のイラスト
しし座という星座の特徴は、高邁な理想やそれを保持し続ける誇り高き性質のうちにも求められますが、案外その本質はそうした"立派”な側面よりも、等身大でありながらもどこか宇宙的でデリケートな感性の方にあるのではないかと思われます。

その意味で、偽善的道徳にがんじがらめになった近代人がいかにして生命力を取り戻せるかを説いたイギリスの小説家D・H・ロレンスの『黙示録論』の結びの部分に登場する「文明とはなにか。それは発明品などよりも感性の生活のうちにこそ、明瞭な姿をあらわすものだ」という主張は、自分自身の星座で新月を迎えていく今期のしし座にとって大いに指針になるはず。

ロレンスはこの一文に先立って、次のような言い方で宇宙観を展開しています。

われわれは生きて肉体のうちにあり、いきいきした実体からなるコスモス(大宇宙)の一部であるという歓びに陶酔すべきではないか。眼が私の身体の一部であるように、私もまた太陽の一部である

そして、よりいっそう声高らかに言うのです。

われわれの欲するのは、偽りで非有機的な結合を、とりわけ金銭と繋がる結合をうちこわし、コスモス、太陽、大地との結合、人類、国民、家族と生きた有機的な結合をふたたびこの世に打ち立てることである。まずは太陽とともに始めるがいい。そうすれば、他のことは徐々に付いてくるだろう

この「われわれ」を「しし座」ないし「しし座としての私」に置き換えたなら、それはそのまましし座の新月という宇宙的な節目で発されるべき所信表明のベースとなっていくのではないでしょうか。

ぜひこのタイミングで、喜びと陶酔を感じられることを最優先に、改めて自分の生活設計や人生プランを組みなおしていきたいところです。


出典:D・H・ロレンス、福田恆存訳「黙示録論」(ちくま学芸文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ