12星座全体の運勢

「踊らにゃソンソン」

秋の気配が漂い始める「仲秋」へ入っていく直前の9月2日には、うお座で満月を迎えていきます。

初秋の風が吹くとされる9月1日から3日にかけて、富山県では毎年「おわら風の盆」という日本を代表するお祭りが催され、編み笠をかぶった人々が夜を徹して躍り続ける幻想的な光景が見られるのですが、その魅力は何と言っても、誰かに見せるためではない、純粋な自分の楽しみのための踊りである点にあります。

同様に、今回のうお座満月のテーマも「今を楽しむ」、すなわち、未来の払い戻しを夢見て無理を重ねつつ、今この瞬間のささやかな幸福を犠牲にし続けるのではなく、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損」くらいのゆるさで、あるがままに生きるモードへ入っていくことにあるのだと言えます。

そのためにも、今季はあまり大真面目になって特定の"実現すべき目標”や"あるべき理想”にはまり込んでしまうのではなく、まずは不意に流れてきた笛や太鼓の音(ね)に誘われて、フラフラと好き勝手に動いてみることから始めてみるといいでしょう。

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「違った自分となる」。

山羊座のイラスト
『クローディアの秘密』の主人公であるクローディアは、アメリカに住むごく普通の12歳の女の子であり、下に弟がいて、長女だからといって色々と無理を押し付けられることに不満を抱いていました。彼女は「不公平な待遇にも、まいにち同じことのくりかえしにも、すべてあきあきした」ことから、家出を計画します。

ただし、彼女はいわゆる児童文学ではお決まりの「冒険的」な家出はしません。

「むかし式の家出なんか、あたしはぜったいにできっこないわ、とクローディアは思っていました。かっとなったあまりに、リュック一つしょってとびだすことです。クローディアは不愉快なことがすきでありません。(中略)そこでクローディアは、あたしの家出は、ただあるところから逃げ出すのではなく、あるところに逃げ込むのにするわ、ときめました。どこか大きな場所、気持ちのよい場所、屋内、その上できれば美しい場所」

そうして彼女はニューヨークのメトロポリタン美術館へと家出するため、同伴者として一番お金を貯めている弟を選んでその気にさせ、「いろいろなものをなしですませる練習」までして、実行します。ただし、彼女の家出はメトロポリタン美術館でとある天使の像と出会ったことで曲がり角を迎えます。

ミケランジェロがしたかどうか、知りたいのよ。なぜだか、じぶんでもわからないの。ただ、どうしても知らなくなっちゃって感じなの。たしかなことを。どんな方法でもいいのよ。ほんとのことを発見すれば、あたしは救われるの。

天使の像との出会いは、彼女の家出の目的を像の秘密を知ることを通して「ちがったあたしになって帰りたい」というものに変えていったのです。

けっして危険ではないけれど、自分をこれまでとは違ったものにしてくれる、そんな活路をクローディアは「秘密を知ること」の中に見出した訳ですが、ある意味でこれは今のやぎ座にとっても大切なテーマとなっているのではないでしょうか。

自分の中の危険を嫌う性質と、知りたいという強い欲求とを、喧嘩させることなく両立させていくこと。それこそ、今期のやぎ座にとっての自己解放の道なのだと言えます。


参考:E・L・カニグズバーグ、松永ふみ子訳「クローディアの秘密」(岩波少年文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ