12星座全体の運勢

「いのちの感触」

 一年で最も太陽の力が弱まる時期である冬至を過ぎた最初の満月は12月30日に、しかも月の力が最も強まるかに座で迎えていきます。 

この満月のキーワードは、「ふれる」。あるいは、“知ること”をめぐる繊細な探求と、いのちあるものを理解することにおける半永久的なつかみどころのなさ。 

「琴線にふれる」という言葉が、心の奥に秘められた感じやすい心情を刺激し感動や共鳴を与えることを言うように、「ふれる」という体験はただちに相互的な関わりのきっかけとなり、個人という枠を超えて溢れだし、包み込むいのちの感覚につながっていくところがあります。 

しかし、これが「さわる」という言葉になった途端、人間的なあたたかみは消え失せて、ただモノとして確かめたり、操作したりといった一方的な関わりが思い起こされるはず。 

かつては日本では元日の朝に、一番に汲み取った「若返る水」を供えて神棚に供える風習があり、これは月に関連する最も古い伝承に基づくものでした。 

月というのは、本来私たちの中のもっともデリケートな部分であり、いつだって懐かしく心そそられる、生命の根源としてそこにあります。おおみそかの前日、年内最後の満月にはぜひとも自分自身や身近な人のやわらかな部分とふれあうような感覚を思い出し、新しい年に備えてみるといいでしょう。 

獅子座(しし座)

今期のしし座のキーワードは、「無定形の不安」。

獅子座のイラスト
私たちはどこかで「日本は民主主義国家である」と考えるのと同じように、無意識に「大人は理性的である」ものと考えがち、と言うよりそうであってほしいと信じ込もうとするところがあります。 
 
その大元はおそらく『純粋理性批判』をはじめとした三大批判書によって、人間が認識しうる対象の外を「物自体」として括弧に入れ、輝かしい理性を絶対視していった哲学者カントにまで遡ることができるのではないでしょうか。 
 
しかし、ここで私たちはそうしたカントの代表的業績が誕生した震源が、カントの同時代に生きた霊能力者スウェーデンボリとの内的な対決にあったことを確認しておかなければなりません。 
 
スウェーデンボリは霊界との交信をするだけなく、ストックホルムの大火災を予言したことで有名になった人物で、それまでこの種の言説に興味を抱かなかったカントはなぜだか彼には興味を持ち、手紙で交流するまでになった結果、カントは霊魂や霊界について、生涯で一度だけ私小説的告白的手法で書いた『視霊者の夢』という著作まで残したのです。 
 
この著作において非理性的な対象との対峙を余儀なくされたカントは、自らの理性さえ疑っていくのですが、哲学者の坂部恵はそこにこそ真に根源的な思考があったのではないかと指摘しています。 
 
「心があらかじめ偏して」いる可能性を留保し、したがって、みずからのどんな「正当化の根拠」をも警戒することを止めない、というこの著作をいろどる二重性の究極の底にある態度は、けっして批判期前の過渡的なものとして割り切ってしまえるものではなく、むしろ(中略)きわめて積極的な貴重な本来の「知恵」あるいは、みずからをみずからたらしめるratio(理性ー根拠)をもあえて疑問に付し、夢とうつつの区別すらさだかでなくなる無定形な不安のうちにたゆたうことをあえてする、最もアラディカルな思考のあらわれと見なされるべきものではないのか」(『理性の不安』) 
 
今期のしし座もまた、理性のゆらぎの真っ只中にいたカントのように「夢とうつつの区別すらさだかでなくなる無定形な不安のうちにたゆたうこと」をあえて試みていくことがテーマとなっていくでしょう。 
 

参考:坂部恵『理性の不安―カント哲学の生成と構造』(勁草出版) 
12星座占い<12/13~12/26>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ