12星座全体の運勢

「呑み込むべき“寒九の水”を問う」 

2021年を迎えて最初の新月は1月13日にやぎ座の第三デカン(20から29度)で起こります。やぎ座の現実主義に水星の知性が加わるため、この新月では特に物事の本質を見抜く客観性が冴えわたっていくでしょう。 

二十四節気では1月5日より「小寒」に入ります。いわゆる「寒の入り」と言われ、冬至で「一陽」を得ることでかえって陰気が強まり、ますます冷えが厳しくなっていく頃合いとされています。そして、今回新月が起こる1月13日は寒の入りから9日目の「寒九」にあたり、昔からこの日の水(寒九の水)は特別な力が宿るとされ、餅をつくにも、お酒を造るにも、薬を飲むにも、珍重されてきましたが、この特別冷たい水こそが薬にも力にもなるという発想は、まさに今回の新月のテーマとも言えます。 

すなわち、人間が経験しうるもっとも純粋な自由というのは、厳しい規律や掟を受け入れ、従うことでこそ実現可能になるということ。さながら寒い時期ほど、一年を通して温度変化の少ない地下水さえもがあたたかく染み入るように感じられるように。あなたの人生に力を与え、解放させてくれるだけの「冷たさ=厳しい現実やその枠組み、ルール等」とは何か、それをいかに取り入れていけるかが今期 は問われていきそうです。

牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「新たな時代に発生する痛み」。

牡羊座のイラスト
リモートワークやオンラインでのコミュニケーションが当たり前になっていった2020年に続き、2021年もまたテクノロジーが経済と手を携えながら世界を新たな構造に組み換えようとする流れはますます速く、強くなっていくでしょう。 
 
こうした状況において、私たち人間社会は真っ先に生活の中の美的な価値を犠牲にしてしまうのだと指摘したのがデザイナーの原研哉です。2003年に出版された『デザインのデザイン』という本の冒頭で、彼は「時代が進もうとするその先へまなざしを向けるのではなく、むしろその悲鳴に耳を澄ますことや、その変化の中でかき消されそうになる繊細な価値に目を向けることの方が重要なのではないか」と一つの指針を打ち出しています。 
 
そしてそれから、創造の資源として蓄積されてきた歴史の一つとして、機械生産で活気づいていた一方で、粗雑な日用品の発生という状況に直面していた150年前のイギリスを例に挙げます。 
 
「デザイン」という思想の源流となったジョン・ラスキンとウィリアム・モリスは、それぞれ講演と著作、芸術・デザイン運動という形で、「生活環境を激変させる産業メカニズムの中に潜む鈍感さや不成熟に対する美的な感受性の反発」を展開したのであり、その痛みの深さこそが引き金となって、デザインという考え方・感じ方、すなわち「最適なものや環境を生み出す喜びやそれを生活の中に用いる喜び」に基づく既存の芸術とは異なるムーブメントが世に現われてきたのだ、と。 
 
翻って、昨今の世の流れになんとか適応する中で、いまあなたの生活では何が犠牲になっていて、どれほどの悲鳴をあげているのでしょうか? 
 
新たな時代の到来には、必ず相応の痛みの発生が伴うもの。今期のおひつじ座は、それがどんな引き金を引いていくことになるのかを確かめる意味でも、まずは現在の生活に潜む「鈍感さや不成熟」にしかと目を止めていきたいところです。 


参考:原研哉『デザインのデザイン』(岩波書店) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ