12星座全体の運勢

「春一番を察知する」 

2月3日に「立春」を迎え、まだまだ寒さは厳しいものの梅のつぼみがほころび始め、少しずつ春の香りがひろがっていこうとしているなか、2月12日にはみずがめ座で新月が形成されていきます。 

今回のみずがめ座新月のテーマは「徹底的に空気を読み、それに応える」。 

古来より、季節というのはただ待っていれば自動的にやってくるものではなく、東からやってくる風が春を連れてくるものと考えられてきました。そして、立春から春分までに吹く最初の南風を「春一番」と言いますが、この場合、それは物理的な風というよりも、ぐっと気温をあげてこの世界を住みやすいものにしてくれる新たな希望の到来であり、その気配のこと。 

春一番が吹いても、またすぐに冷たい風が吹いて寒くなるのですが、それでも春二番、春三番と同じような風が吹くたびに、春は少しずつこの世界に招かれてくるはず。 

ますます混迷を極め、暗澹たる思いが立ち込めるように思える世相において、たとえかすかなものであれ希望の光となるような流れがどこから射し込んでくるのか。新月に向かっていく今期においては、自分個人の幸せや願望の成就というより、そうした「どんな世界になってほしいのか?」という社会的な願いに焦点をあてて、その兆しや可能性を追求していきたいところです。 

蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「霧の向こうの世界」。

蠍座のイラスト
イタリア文学者であり作家でもあった須賀敦子は、イタリア留学を経てミラノにあるコルシカ書店に勤めたことをきっかけにイタリア人のペッピーノと結婚し、日本文学のイタリア語への翻訳に従事したものの、夫の急逝を機に日本へ帰国し、晩年になってから小説家として知られるようになった人です。 
 
結婚生活はわずか6年という短い期間でしたが、夫を失った彼女は夫が愛したイタリア詩人・サバの詩に深く寄り添うようになり、後に日本へ帰国した際にはその日本への紹介に情熱を注ぎました。 
 
サバの詩には次のような作品があります。 
 
石と霧のあいだで、ぼくは 
休日を愉しむ。大聖堂の 
広場に憩う。星の 
かわりに夜ごと、ことばに灯がともる 
人生ほど、 
生きる疲れを癒してくれるものは、ない。」 
 
「石」とはこの世のこと、そしてあの世は「霧」の向こうの世界としてここでは表象されています。彼女にとって小説を書くとは、「霧」の向こうの世界に行った人々へ手紙を書くことに他ならず、それこそが彼女の生きがいだったのでしょう。 
 
言わば、彼女は先のサバの詩をそのまま生きたのだと言えます。そして今期のさそり座もまた、ふと振り返った向こうに霧が流れる景色を目にすることができるかも知れません。 


参考:須賀敦子『コルシカ書店の仲間たち』(文春文庫) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ