12星座全体の運勢

「春一番を察知する」 

2月3日に「立春」を迎え、まだまだ寒さは厳しいものの梅のつぼみがほころび始め、少しずつ春の香りがひろがっていこうとしているなか、2月12日にはみずがめ座で新月が形成されていきます。 

今回のみずがめ座新月のテーマは「徹底的に空気を読み、それに応える」。 

古来より、季節というのはただ待っていれば自動的にやってくるものではなく、東からやってくる風が春を連れてくるものと考えられてきました。そして、立春から春分までに吹く最初の南風を「春一番」と言いますが、この場合、それは物理的な風というよりも、ぐっと気温をあげてこの世界を住みやすいものにしてくれる新たな希望の到来であり、その気配のこと。 

春一番が吹いても、またすぐに冷たい風が吹いて寒くなるのですが、それでも春二番、春三番と同じような風が吹くたびに、春は少しずつこの世界に招かれてくるはず。 

ますます混迷を極め、暗澹たる思いが立ち込めるように思える世相において、たとえかすかなものであれ希望の光となるような流れがどこから射し込んでくるのか。新月に向かっていく今期においては、自分個人の幸せや願望の成就というより、そうした「どんな世界になってほしいのか?」という社会的な願いに焦点をあてて、その兆しや可能性を追求していきたいところです。 

射手座(いて座)

今期のいて座のキーワードは、「精神の方法としての迂回」。

射手座のイラスト
ヴァルター・ベンヤミンはフランスの松尾芭蕉なのではないかと、ふと思うことがあります。それほどまでに、彼は「迂回路としての叙述」ということを意識していました。 
 
その思考はつねに新たに始まり、飛躍を恐れず、そのつど、根気強く、回り道を経て事柄の核心に立ち戻っていく。気まぐれな断片に分かたれながらも、美しいモザイク画のように全体としての尊厳や輝きを失うことなく、断片のひとつひとつが有機的に結びついていく。 
 
例えば彼は「セントラルパーク」という断章集の中で次のように述べています。 
 
迷宮は、目的地に着くのがまだ早すぎる者にとっては正道である。この目的地とは市場である。 
(中略) 
迷宮は逡巡する者の故郷である。目的地に着くことを恐れる人のたどる道は、容易に迷宮を描くであろう。衝動も、充足される前にたどるいくつかのエピソードにおいて迷宮を描く。しかしまた、みずからの行く末を知ろうとしない人類(もしくは階級)もそうなのである。 
 
追想(思い出)に万物照応を贈るのが空想力(ファンタジー)であるとすれば、追想(思い出)にアレゴリー(比喩、寓意、たとえ話)を捧げるのは思考である。追想(思い出)は空想力(ファンタジー)と思考を相互交流させる。」 
 
千変万化することは自然のことわりですが、変化流行に移り進まなければ俳風もまた新しくなることはない。旅の詩人としてその生涯を送った松尾芭蕉もまたそのことをよく理解した上で、たえず新しみを求めました。 
 
今期のいて座もまた、単なる経験的な散歩や迂回、旅に終わるのではなく、実践と統一された精神の方法として、意志的に選びとった散歩や迂回、旅としてみずからの思いを展開させていきましょう。 


参考:浅井健二郎・久保哲司訳『ベンヤミン・コレクションⅠ』(ちくま学芸文庫) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ