12星座全体の運勢

「心の奥底の実感を」 

4月20日に太陽がおうし座へ移り、二十四節気の「穀雨」に入ると、稲の苗もすくすくと伸びていき、いよいよ緑したたる季節へ。そんな中、4月27日にさそり座7度(数え度数8度)で満月となります。 

今回のテーマは「内面の静けさ」。すなわち、これから初夏にかけて存分に生命を燃やし、またそれに必要な備えや人手を取り入れていくべく、ますます賑やかな季節を迎えていくにあたって、今回の満月が「本当にそれでいいの?」と自分自身に最終確認をとっていく期間となるのだということ。 

ちょうど、この季節に使われる季語に「霞(かすみ)」があります。これは水蒸気の多い春に特有の、たなびく薄い雲を総称してそう呼ぶのです。麗らかな春の日にふと動きをとめて、水筒の麦茶でも飲みながら、遠くの霞を眺めているうちに、ふっと何かを思い出したり、妙な気持ちになったことがあるという人も少なくないのではないでしょうか。 

そうして周囲の音が一瞬遠くなったように感じられた時、既存の手垢のついた言葉では形容することのできなかった微妙な感情や、名状しがたい衝動がこころの表面によみがえり、急になまなましく感じられてきたり、実感が追いついてきたり。あるいは、春の夜空に浮かぶ霞たなびく朧月を眺めている時、ふと心のどこかにひっかかっていた違和感が鮮烈に立ち上がってきたり。 

今期はそんな風に、ゆっくりと、ないし、しみじみと心の奥底の実感を浮き彫りにしていくべく、自分のこころやからだと静かに向きあっていく時間を持っていきたいところです。 

魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「レンマ」。

魚座のイラスト
俳句の17音という短さと季語という制約は、何よりも論理性をことごとく排除してしまいますが、意識において論理は最も世界と身体の連続性を断ち切る志向性があるため、むしろ俳句の制約は論理を捨てるために意図的に設けられたのではないか、という風にも考えられます。 
 
逆に、季語というのは身体を自然界につなぎとめる上で大いに機能していきます。例えば、春は頭に一番気が集まる時期で、それで何となくボーっとしてしまったり、眠たかったり、景色もうすぼんやりして、首や肩の緊張が緩んでくるのだそうです。 
 
そういう季節感を伴った世界と見事に身体を連続させてみせた句としては、例えば松尾芭蕉の「ゆく春や鳥啼(なき)魚の目は泪(なみだ)」という有名な句が挙げられるでしょう。 
 
「春」が去っていくのを惜しんで、詩を詠んでいる「私」と空を飛ぶ「鳥」と水中の「魚」とが、共鳴しあってひとつの空間を形成し、その空間全体で激しく嗚咽し、慟哭しているのです。 
 
宗教学者の中沢新一は、「ここではレンマが最大限の能力を発揮しています」として、レンマという語について次のように説明しています。 
 
ギリシャ人や古代のインド人は、ロゴスとは異なるこの理性の機能を「レンマ」と名付けました。ロゴスを超えた理性の働きです。全体と部分が一体となっている相互相関を直感で理解する能力を言います。ロゴスでは、おしぼりと水差しは同じ場所を占めることができません。二つの違うものが同じ場所にあるのは矛盾です。そういう矛盾を認めないのが、ロゴスの働きです。ところがレンマはそうではありません。個物は一つとして孤立しておらず、全体が関連しあっている。そういう全体の一部を取り出して、そこでおこっていることをロゴスの言語で表現しようとすると、矛盾になりますが、レンマの認識はそういう矛盾をむしろ肯定します。全体即個物、個物即全体です。」 
 
その意味で今期のうお座もまた、論理=ロゴス的理性とは異なるレンマ的理性をいかに働かせつつ、身体を世界と接続していけるかということがテーマになっていきそうです。 


参考:中沢新一、小澤實『俳句の海に潜る』(角川書店) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ