12星座全体の運勢

「地を這う蟻のように」

9月7日に二十四節気が「白露」に変わると、いよいよ体感的にも秋をよりはっきりと感じるようになり、夜長の季節に入って物思いにふける時間も長くなっていくはず。そして、同じ9月7日におとめ座の14度(数えで15度)で新月を迎えます。 

そして今回の新月のテーマは、「プライドの置きどころ」。プライドというと、どうしてもこじらせたプライドを守るために社会や他人との関わりを切り捨てたり、過剰防衛の裏返しとしての攻撃性を他者や社会に向けたりといったネガティブなイメージを抱いてしまいますが、とはいえプライドがまったくないというのは誇りに感じているものが何もないということであり、それはみずからの未熟さを改めたり、向上に努めたり、洗練を心がけるつもりがないということに他ならないでしょう。 

個人であれ集団であれ、それなりの歴史を重ねていたり、独自の文化のあるところには必ずプライドは生まれるのであって、それは決してなくしたり、馬鹿にしていいものではないはずです。はじめから守りに入って役立たずになるのはつまらないけれど、いくら実力があったとしても、何のプライドも持たず、誰とも何とも繋がらず、どこからも切り離されて生きることほどつまらないこともありません。 

新月の時期というのは、種まきにもよく喩えられるのですが、それは新たにこの世界に自分を割り込ませていくということであり、多かれ少なかれ何かにトライしたみたくなるもの。 

川端茅舎という俳人に、ちょうど白露の時期に詠んだ「露の玉蟻(あり)たぢたぢになりにけり」という句がありますが、できれば今期の私たちもまた、誰か何かにくじけてひるむことがあったとしても、プライドそのものを捨てることなく、地を這う蟻のように足を前に出していきたいところです。 
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乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「火を起こす」。

乙女座のイラスト
自分の星座で新月が起きていく時期というのは、さながらオリンピックの始まりに聖火を灯すように、たとえどんなにささやかなものであったとしても、みずからに新たな精神性を与え、新たな誓いを立てていくのに最もふさわしく、ごく自然なタイミングなのだと言えます。 
 
しかし、電気やガスでワンタッチ式に火を使うことに慣れきってしまった現代人は、みずからの手で火を起こす術をほとんど忘れてしまったようにも思います。 
 
例えば、そうした現代文明のもたらす決定的な危機とその先の世界の在り方を数十年来にわたって静かに訴え続けてきた屋久島在住の詩人・山尾省三は「火を焚きなさい」という詩を、次のような書き出しで始めています。 
 
山に夕闇がせまる/子供達よ/ほら もう夜が背中まできている/火を焚きなさい/お前達の心残りの遊びをやめて/大昔の心にかえり/火を焚きなさい」 
 
原初、人間は火を焚くことで他の動物から一線を画しました。だから、火を焚くことができれば、それでもう人間なのです。 
 
少しくらい煙くたって仕方ない/がまんして しっかり火を燃やしなさい/やがて調子がでてくると/ほら お前達の今の心のようなオレンジ色の炎が/いっしんに燃え立つだろう/そうしたら じっとその火を見詰めなさい/いつのまにか――/背後から 夜がお前をすっぽりつつんでいる/夜がすっぽりとお前をつつんだ時こそ/不思議の時/火が 永遠の物語を始める時なのだ」 
 
そう、火は物語をもたらす。それは「父さんの自慢話のよう」でもなく、「テレビで見れるもの」でもなく、あくまで「自身の裸の眼と耳と心で聴く」、自分のための「不思議な物語」なのだと。山尾は続けてこう促します。 
 
注意深く ていねいに/火を焚きなさい/火がいっしんに燃え立つように/けれどもあまりぼうぼう燃えないように/静かな気持ちで 火を焚きなさい」 
 
今期のおとめ座もまた、ひとつこんな式次第で新たな火を焚き、物語を強引に始めるのでも、ただ傍観するのでもない仕方で、その過程を見詰めてみるといいでしょう。 
 
 
参考:山尾省三、ゲーリー・スナイダー『聖なる地球のつどいかな』(山と渓谷社) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ