12星座全体の運勢

「記憶の「虫だし」」 

土の中にあたたかい気配が届き、それを感じた虫たちが穴の中から這い出してくる「啓蟄」直前である3月3日に、うお座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

「非現実的で、過度な理想主義」や「既存世界の<外部>への遁走」を意味する木星と海王星の組み合わせのすぐそばで形成される今回の新月のテーマは、「負の記憶の解消」。 

桃の花がほころびはじめ、青虫が蝶に変身して夢見るように見え始める3月はじめの新月は、新しいサイクルの本格的な始まりというよりは、これまでのサイクルのなかに取り残されたままのわだかまりや怨念をきちんと鎮めていくことにあります。 

昔の人は、蛇やカエルやトカゲなど、小さな生物はみな「虫」と呼び、この時期になる雷の音におどろいて虫たちが這い出してくるものと考えて、春の雷を「虫だし」と名付けていましたが、逆に言えば、寒さに耐えて地中でちぢこまっている虫が残っている限りは、まだすべての生命が喜びとともに祝う春ではなかった訳です。 

その意味で、今回のうお座新月は、きたる春分(新しい一年の始まり)に向けて、自分だけでなく周囲のみなが忘れかけている記憶や歴史の業を解消していく霊的な働きに、いかに自分を一致させていくことができるかどうかが問われていくことになるでしょう。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「水夫になるな、海賊たれ」

山羊座のイラスト
すでに2年以上が経過したコロナ禍で、フリーランス市場は人口自体が増加したばかり、副業やパラレルキャリアなどの流れもあいまって、ますます多様化しており、今後のキャリア形成においてこうしたフリーランス化へと向かうの流れと、昨今続いている若者の大企業&正社員志向とがどのようにぶつかりあっていくのかは要注目と言えるでしょう。 
 
具体的には、現行の資本主義社会が多くの労働者にもたらしている「働いても働いても生活が楽にならない」という状況をどう打開していくのか、ということが大きな焦点になってくる訳ですが、ここで思い出されるのが、世界的なエコノミストであるピーター・T・リーソンの書いた『海賊の経済学~見えざるフックの秘密~』が明らかにした海賊の実情です。 
 
例えば、18世紀前半までの大航海時代最後にして最大の海賊とされるバーソロミュー・ロバーツは、海賊ではなく合法の雇用を選ぶ水夫のことを“あんぽんたん”だと言っていたのだそうですが、それにはきちんとしたワケがありました。 
 
正直な海運では、共用部分も少なく、賃金は低く、労働はつらい。こちらでは豊富で満足、快適と安楽、自由と権力がある。そして、それに対する危険といったら、最悪でもしばらく絞首台を眺めるくらいとなれば、こちらのほうに天秤を傾けない者があるだろうか。いやいや、太く陽気な人生こそが我がモットーである。」 
 
続けて、リーソンは当時の海賊の実態について、明らかに今日でいう“ブルシットジョブ”に従事している労働者と比較しつつ、次のように書いています。 
 
商船よりも海賊を選ぶにあたり、一部の船乗りにとってはかなりの分捕り品が得られるという見通し以外にも、実利的な要因があった。船の労働環境も、その決定には重要な役割を果たした。長距離航海する商船は、何カ月も海で過ごす。したがって、船乗りが雇用の意思決定を行う時の「福利厚生パッケージ」の重要な一部は、そうした船舶上の暮らしがどんなものか、と言うことだった。小心なせいか、海賊稼業に残念ながら乗り出せなかった船乗りにとっては、商船は相対的に金銭的な支払いも少ない上に、不快どころか悲惨な労働条件が伴うのだった」 
 
この時代、荒くれ者の海賊にも船長ごとに取り決めた掟があり、現代の私たちがイメージするほど無軌道な者はまれで、中でもロバーツの掟は厳しいものだったそう。

今期のやぎ座もまた、どうしたら自分もよき海賊になれるか、そのためにどんな掟を自分たちに課すべきか、ひとつ試行錯誤してみるといいでしょう。 
 
 
参考:ピーター・T・リーソン、山形浩生訳『海賊の経済学~見えざるフックの秘密~』(NTT出版) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ