12星座全体の運勢

「大きなリズムや流れと協調しよう」 

立夏をすぎ、すっかり太陽がまぶしい季節に入って、街では日傘をさしている人もちらほら見かけるようになってきた5月16日には、さそり座25度(数えで26度)で満月を迎えていきます。 

さそり座26度のサビアンシンボルは「新しい土地でキャンプするネイティブアメリカン」で、キーワードは「臨機応変」。ここでの「ネイティブアメリカン」とは、「自然と調和して生きている人」の象徴であり、彼らは人生に対してなにか過剰な要求をすることがない代わりに、自身の内側から新しい欲求が湧き出てくるごとに、それにふさわしい場所へと直感的にたどり着くことができます。 

26度というのは、外部への志向性が生まれる度数なのですが、今回は固定宮の終わり際で起きる満月で、かつ「硬直化したシステムや慣習」を意味する土星を巻き込んだ形で起こるため、柔軟宮に特有の“流動性”がひときわ強調されやすい配置と言えます。 

今回の満月では、これまでしがみついてきた“正しい”やり方や“揺るぎない常識”とされてきたものの息苦しさや不自然さに改めて気が付き、そこから自然と離れていくアクションや気持ちの動きが出てきやすいでしょう。 

土星は特定の社会の枠内だけで通用する常識や考え方を表しますが、「ネイティブアメリカン」が依拠している「自然」は、そうした狭い常識や考え方を相対化するより大きな生態系のリズムとともに絶えず動いており、そうした大きなリズムや時代潮流と協調して機能していくことに自分らしさを感じていけるかが、今期は問われていくはずです。 
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射手座(いて座)

今期のいて座のキーワードは、「故郷の記憶」。

射手座のイラスト
「イニシエーションとしての冒険」ということがますます生活から失われ、実際に体験することが困難になってしまっている現代社会において、書籍であれゲームであれ占いであれ、ある種の「物語」提供の担い手たちはますますの質や在り方を問われつつあるように思います。 
 
イニシエーションにはさまざまな種類があり、そこにどう光をあて、プレイヤーを巻き込んでいくかが担い手の腕の見せ所となる訳ですが、例えばスペインの哲学者サバテールの文芸論『物語作家の技法』では、『海底二万マイル』などのなつかしいタイトルを挙げ、「下降の旅」という章のなかで次のように書いています。 
 
このような地理学上の倒錯行為は人に眩暈を覚えさせることにもなろう。にもかかわらず、われわれの足下に横たわるものは時代を問わずつねにわれわれの心を惹きつけてやまなかった。そこは死者の国である」 
 
確かに、海に囲まれ数多の川と寄り添いながら暮らしてきたわが国の人間が、いつからか陸の、すなわち生けるものの論理だけで生活を覆い尽くすようになってしまいましたが、自分たちの足場の下は決して固いコンクリートだけで構成されている訳ではなく、もっとあやふやで、流動的で、時には生者をすっかり呑み込んで、まったく異なる次元と繋がってしまうようなカオスなのだということを、私たちは子供時代に読んださまざまな物語で教えられてきましたが、一方でそのことを大人になってすっかり忘れてしまっているのではないでしょうか。 
 
サバテールは、かつて哲学書をゆびさして「この本に筋はあるの?」とたずねた幼い弟に「あるもんか」と答えてしまったことへの深い反省から出発し、「自然科学の領域で発生」したリアルなもの巧みな反映を目指す「小説」に反して、「感性の麻痺した大人として、土曜の午後に訪れるあの管理された現実逃避の感覚に包まれながら、霧深い魂の故郷へと降りていく」手段としての「物語」という言い方で、適確に位置づけています。 
 
その意味で、16日にいて座から数えて「失われたもの」を意味する12番目のさそり座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、大人になってからはすっかり忘れてしまっていた、かつて読んだ物語の手触りをほんのちょっとでも思い出してみるといいでしょう。 
 
 
参考:フェルナンド・サバテール、渡辺洋・橋本尚江訳『物語作家の技法』(みすず書房) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ