12星座全体の運勢

「いっそヒラリと宙返り」 

夏のじめじめとした暑さと梅雨の不安定な天候との合わせ技で、服装選びに悩む衣替えの時期に入った5月30日には、ふたご座9度(数えで10度)で新月を迎えていきます。 

サビアンシンボルは「アクロバット飛行」であり、これは自然のもっとも基本的な働きである"重力”に逆らう力を象徴化した度数です。 

すなわち、年齢を重ねるごとに身体は老化し、体力は落ち、新しいことに挑戦する気概も失せ、心身ともに昔とった杵柄にすがりつき、なるべく現状を維持することに心血を注ごうとする傾向にあり、こうした“重力”はしばしば呪縛ともなってしまう訳ですが、今回の新月ではそうした当たり前のように人生にふりかかってくる呪縛を、いかに解き放っていけるかがテーマになっていくのだと言えます。 

さながら、梅雨の不快な空気感を吹き飛ばす「青嵐(あおあらし、せいらん)」という季語が、青葉を吹きわたる清らかな空気を意味するように、「この年齢ならば」「この立場ならば」こうなって、こうして当然という流れに反するようなアクションやチャレンジを取り入れ、停滞した人生状況に風穴をあけてみるのもアリでしょう。 

いずれにせよ、分かりやすいしがらみから思い切って離れ、地図にない未知の領域へと飛び込んでみることで得られる見晴らしは、あなたの人生をよりエキサイティングなものにしてくれるはず。 

とりわけ、剣の上を渡るとき、氷の上を行くときは。そぞろ歩きを諦めて、いっそヒラリと宙返り。今期はそんなアクロバットを決めていけるかどうかが問われていくでしょう。 
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天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「見知らぬ変成へと開かれる」。

天秤座のイラスト
昔から女性のもつ特有の美しさは「花」に喩えられてきましたが、その一方で、「花」に喩えることは、どうしても「性を売り物にする」ようなネガティブなニュアンスもまた入り込んできてしまい、時代遅れに感じざるを得ない場合もあるように思います。 
 
この点について、現代イタリアの哲学者コッチャは、『植物の生の哲学』の中で、花という器官が果たしている役割や機能について考察を行っていくことで、これまでの見方を覆すような大胆な議論を提示しています。 
 
花は<混合>の能動的な道具だ。他の個体とのあらゆる出逢い、あらゆる結合は、花によって行われる。だが花は、厳密に言って器官ではない。それは生殖を可能にするために変化した数々の器官の寄せ集めに過ぎない。そこには一時的で不安定な形成体という側面もあれば、厳密に「有機的」な領域を超越した側面もあり、両者のあいだには深い結びつきが見られる。個体や種に新たなアイデンティティーを練り上げ、作り上げ、産み出す空間として、花は個々の組織体の論理を転覆させる装置でもあるだろう。すなわち花は、個体と種が自身を変容や変化の可能性に、あるいは死の可能性に開く、究極の分水嶺なのだ。」 
 
実際、雌雄同体の花の大半は、自家受精を避けるための自己免疫システムを持っており、それは世界によりよく自分自身を開くための、自己そのものに対する防衛でもあるのかも知れません。 
 
すなわち、植物が花を通して行っている営みは、単に人間の性交渉のバリエーションなどではなく、むしろ自己を放棄し、自分自身にとっても見知らぬ変成へと開かれていくための<メタ有機体的地平>であり、新たな自分自身へと生まれ変わっていくための聖なる舞台でもあるのだとも言えます。 
 
こうした視点に立つ時、性とはもはや暗い欲望が渦巻く不健全な領域などではなく、性ゆえにこそ他のあらゆる事物と触れ合い、ともに進化の過程を歩むことのできる健やかさを担う最重要領域であり、人間の脳にあたる最も重要な神経器官に他ならないのです。 
 
ここで再びコッチャの言葉を借りれば、「性においてこそ、生物は自分自身をコズミックな混合剤とすることができ、混合は様々な存在、様々なアイデンティティーの刷新の手段となる」のであって、それはつねに「リスクであり、工夫であり、実験なの」だとも指摘しています。 
 
その意味で、5月30日にてんびん座から数えて「アイデンティティ・クライシス」を意味する9番目のふたご座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、そうした「コズミックな混淆剤」としての花をみずからに咲かせていくことがテーマとなっていくでしょう。 
 
 
参考:エマヌエーレ・コッチャ、嶋崎正樹訳『植物の生の哲学』(勁草書房) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ