人工知能(AI)の目覚ましい発達で、“私たちの仕事がいずれ奪われるかも?” と不安を感じているモア読者も多いのでは? でも、安心してください! 実は私たち、AIに“負けない”強い武器を持っていたんです。
そのひとつが、人間にしかできない心あたたまるコミュニケーション。オフィスでのコミュニュケーションのあれこれについて、専門家に聞いてみました。

オフィスマナーとは、相手の心を開かせるカギ

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西出ひろ子先生
参議院議員、政治経済ジャーナリストなどの秘書を経て、独立。単身渡英し、起業。経験をもとに、現在はマナー専門家として活躍している。最新刊に『気くばり美人のきほん』
「そもそもマナーというのは、“相手の立場に立つ”ということです。どうしたら相手に喜んでもらえるのか、相手が気持ちよく対応できるのかを考えて行動することで、良好な関係、コミュニケーションが生まれます。相手も心を開いてくれるようになり、こちらの要望が受け入れられやすくなるのです。それらを踏まえて“AIに負けない働き方”とは何かと考えると、相手を思いやり、円滑に仕事が進む環境をつくるということ=オフィスマナーを取り入れることにつながると思います。マナーには、7つの基本があります。❶『表情』❷『態度』❸『挨拶』❹『身だしなみ』❺『言葉遣い』❻『返事』❼『名前を呼ぶ』です。もちろん、職場でマナーを意識したからといって、お給料が増えるわけではないでしょう。ただ、そこに、その人の生き方、ひいては働き方が透けて見えるのです。職場は社会の最小単位のひとつ。だからこそ、マナーはあなたの働き方に大きな影響を与えてくれるはずです」(西出ひろ子先生、以下同)

みんなが実践しているコミュニケーションマナーをジャッジ!

みんなが実践しているマナーをアンケート調査。西出先生が、OKorNGのジャッジ&コツを伝授!
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写真:TeraVector / PIXTA(ピクスタ)

(○)積極的に相手の名前を呼ぶ

「声をかける時は、“あのー”や“すみません”ではなく、なるべく名前を呼ぶようにしています」(26歳・人事)

「名前を呼ぶ=承認の気持ちの表れに」

「心理学的に、名前を呼ぶという行為は、相手に対して社会的報酬を与えることになると言われています。この場合の社会的報酬とは、『認知されている』、『認められている』というプラスの感情です。名前を呼ぶことで、誰でもいいわけではなく、私はあなたにお願いしたい、あなたと話したいという気持ちが伝わり、円滑なコミュニケーションにつながります」

(△)雑談で、相手の出身地や家族の話に触れる

「お子さんの名前を覚えたり、相手の出身地にゆかりのある話をします」(28歳・公務員)

「天気や趣味の話から段階的に。ペットの話は◎」

「相手から出身地や家族についての話が出たことがあれば、話題のひとつとして触れるのもいいでしょう。ただ、こちらからパーソナルな情報を積極的に聞くことは避けましょう。会話を広げたい時には『個人的なことで恐縮なんですが……』と前置きして、自分の話をしながら相手の話を引き出すのも手。また、ペットの話は楽しく続けやすいのでおすすめです」

(○)飲み物やお菓子を差し入れる

「体調や気温に合わせて、お出しする飲み物の温度を調節します」(27歳・不動産事務)

「相手の好みや体調を聞いてからが確実」

「気候や相手の状況を気遣いながら、飲み物やお菓子を用意することは、とても素敵な思いやりです。たとえば冬場なら、屋外からの訪問者にまずは温かい飲み物を提供し、体が温まってきたら2杯目は冷たい飲み物に変える、夏場ならその逆を意識するなどの機転を利かせてみましょう。ただ、好みやその日の体調によって喜ばれるものは変わりますので、その都度相手に聞いて選んでいただくコミュニケーションも大事にしてください」

(△)誕生日を覚えて、お祝いを伝える

「職場の人の誕生日を覚えておき、お祝いのメッセージと簡単なプレゼントを渡します」(27歳・営業)

「お互いの負担にならないように注意して」

「素敵なことだと思いますが、推奨はしていません。なぜなら、あなた自身が『お祝いしなくちゃ』と義務感を感じたり、相手にも『お返ししなくちゃ』という負担を感じさせてしまえば、それはマナーとは言えないからです。決まりごとではなく、日常の中で自然に出てくるのが気遣いです。形ばかりを重視して、『礼儀』が『儀礼』にならないように注意しましょう」

(○)相手の会社や個人のSNSをチェックする

「訪問前にSNSをチェックして、相手にとってのニュースを知っておきます」(25歳・SE)

「ポジティブなトピックに触れるきっかけに」

「一般公開設定であれば、SNSにアップする情報は人に知られてもよいと思って出す情報です。そのため、企業の公式SNSはもちろん、最近では名刺代わりに個人のSNSでつながる場面もありますし、投稿をチェックすることは問題ありません。むしろ、明るい話題の投稿を見かけたら、会話に持ち出してもOKです。ただし、プライベート限定でSNSを利用している場合も多いので、相手のSNSに対するスタンスをわきまえたうえで判断しましょう」

(○)ヘアスタイルや持ち物をほめる

「女性の場合は特に、髪型やネイルを変えたらほめるようにしています」(29歳・航空関係)

「相手の変化をスルーしないことが大事」

「人は、見た目の変化に気づいてくれる=自分を気にしてくれていると認識します。特に女性は、シーンによってヘア&メイクやファッションを変えるなど気をつけている方が多いので、変化に気づいたらスルーしてしまうのではなく、小さなことでもほめ言葉を伝えたほうが相手もうれしいはずです。そのためにいつも、変化に気づける=感性を磨く努力をしてください」
取材・原文/千吉良美樹 イラスト/akira muracco