今も創作を続ける、日本ポップアートの巨匠の展覧会

ポートレイト「パラヴェンティ:田名網 敬一」プラダ青山にて 2023年 ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

ポートレイト「パラヴェンティ:田名網 敬一」プラダ青山にて 2023年 ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

国立新美術館(東京・六本木)にて、「田名網敬一 記憶の冒険」を2024年8月7日(水)から11月11日(月)まで開催します。国際的に高い評価を得る日本人アーティスト、田名網敬一の初となる大規模回顧展です。

田名網敬一は幼少期に経験した戦争の記憶とその後に触れたアメリカ大衆文化からの影響が色濃く反映された、色彩鮮やかな作品で知られています。本展は当時の資料を含めて田名網が手掛けた膨大な作品を紹介することで、これまで包括的に捉えられることがなかった、その60年以上におよぶ活動を「記憶」というテーマのもとに改めて紐解こうとするものです。

田名網敬一《森の掟》2024年 顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス 250 x 200 cm ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《森の掟》2024年 顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス 250 x 200 cm ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

88歳となった今も旺盛な創作活動を続ける田名網の存在は、世代や国を超えたアーティスト、そしてデザイナーたちを魅了し続けており、コラボレーションを求める声は後を絶ちません。これは60年以上にわたる活動のなかで、田名網自身が常に自らの表現方法を刷新し続けてきた稀有な感性を持ったアーティストであるからだといえるでしょう。また近年、田名網は海外文化を独自に受容した戦後日本の作家としても世界的に評価が進み、ニューヨーク近代美術館(アメリカ)、ウォーカー・アート・センター(アメリカ)、シカゴ美術館(アメリカ)、M+(香港)、ハンブルガー・バーンホフ(ドイツ)にも作品が所蔵されています。

本展は多方面から注目が集まる田名網が現在まで探究を続けている、虚実が入り混じった記憶のコラージュのような作品世界を存分に体感できる待望の機会となるでしょう。

「田名網敬一 記憶の冒険」見どころ

1 日本の戦後文化史と密接に結びついた作品

田名網敬一《ORDER MADE!!》1965年 シルクスクリーン/紙 78.9 x 109.4 cm ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《ORDER MADE!!》1965年 シルクスクリーン/紙 78.9 x 109.4 cm ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

アンディ・ウォーホルから影響を受けて制作された日本最初期のポップアートとも呼べる「ORDER MADE!!」シリーズ(1965)や、アメリカの『Avant Garde』誌が主催したベトナム反戦ポスターコンテストに入選した「NO MORE WAR」シリーズ(1967)、テレビ番組『11PM』のために制作されたコラージュの手法を用いたアニメーション《Good-by Marilyn》(1971)など、戦後日本で展開されたカウンターカルチャーを物語る作品の数々が出品されます。

田名網敬一《NO MORE WAR》1967年 シルクスクリーン/紙 63 x 48 cm ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《NO MORE WAR》1967年 シルクスクリーン/紙 63 x 48 cm ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《Good-by Marilyn》1971年 16ミリフィルム 4分25秒 ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA 

田名網敬一《Good-by Marilyn》1971年 16ミリフィルム 4分25秒 ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA 

2 増幅を続ける「記憶」

展示風景:田名網敬一「記憶の修築」NANZUKA、東京、2020年 ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

展示風景:田名網敬一「記憶の修築」NANZUKA、東京、2020年 ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

近年、田名網は自身の過去の記憶や夢を主題とした作品を数多く制作しています。幼少期に体験した戦争や生死を彷徨った大病の経験を大きなきっかけとし、「人間は自らの記憶を無意識のうちに作り変えながら生きている」という説に基づいて、自身の脳内で増幅される「記憶」を主題に創作活動を続ける田名網。「記憶の冒険」と題された本展では、未発表の新作に加え、田名網が70年代から断続的に記録してきた夢日記やドローイング、関連するインスタレーションも展示することで、尽きることのないその創造力の源泉に迫ります。

3 変幻自在なコラボレーション

田名網敬一《RADWIMPSワールドツアー2024のためのアートワーク》2024年 ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《RADWIMPSワールドツアー2024のためのアートワーク》2024年 ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網は、その長いキャリアを通して多種多様なクライアントワークやコラボレーションを行ってきました。Mary Quant、adidas、JUNYA WATANABE、Ground Yなどのファッションブランドや、GENERATIONS from EXILE TRIBE、八代亜紀、RADWIMPSといったミュージシャンと協働する一方で、ウルトラマンなどのキャラクターや生前交流があった赤塚不二夫とコラボレーションした作品も制作しています。本展では田名網のデザイナーとしての活動にも焦点を当て、当初からコラボレーションの意識を強く持ち、それによって生じる化学反応から新たな作品を作り出していこうとする田名網の仕事についても紹介します。

会場内に巨大インスタレーションの展示が決定!

田名網敬一《死と再生のドラマ》2019年 顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス 200 × 400 ㎝(4幅対) ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《死と再生のドラマ》2019年 顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス 200 × 400 ㎝(4幅対)
©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

本展のイントロダクションにあたる0章「生と俗の境界にある橋」には、田名網にとって重要なモチーフである橋を使った新作インスタレーション《百橋の図》が登場します。

田名網にとって生と俗の境界であり、今生と死後の世界を隔てる存在としても表される「橋」。本展の新作は橋が幾重にも渦高く重なり合い、高さ約 3.5 メートルのインスタレーションとして登場します。そこにプロジェクションマッピングで投影された田名網が描く奇妙な生き物たちが歩き回ることで、まるで異界への入口のような存在感を放ちます。同時に、新作となる屏風型のコラージュ作品も共に展示され、田名網が想像する橋の向こうの世界が暗示されるかのようです。「橋が内包する深遠で神秘的な世界は私に複雑怪奇な謎を投げかける」と語る田名網の新作《百橋の図》が、これからはじまる「記憶の冒険」へと鑑賞者を誘います。

「田名網敬一 記憶の冒険」開催概要

田名網敬一《ピカソ母子像の悦楽 No.005》2020 / 2021年 アクリル絵具/カンヴァス 41 × 31.8 × 2 ㎝ ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

田名網敬一《ピカソ母子像の悦楽 No.005》2020 / 2021年 アクリル絵具/カンヴァス 41 × 31.8 × 2 ㎝ ©Keiichi Tanaami / Courtesy of NANZUKA

会期 2024年8月7日(水)〜2024年11月11日(月)
会場 国立新美術館
住所 106-8558 東京都港区六本木7丁目22-2
展示室 企画展示室1E
時間 10:00〜18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日 毎週火曜日
観覧料 一般2,000円、大学生1,400円、高校生1,000円
※中学生以下は入場無料
※障害者手帳を持参の方(付添の方1名含む)は入場無料。
チケット情報は後日、国立新美術館ホームページ等でお知らせします。
TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)

「田名網敬一 記憶の冒険」の詳細は公式サイトでもチェック!