水や空気といった事象の変化を、インスタレーションや彫刻で表現

毛利悠子《Piano Solo: Belle-Île》のためのスケッチ、2024年

毛利悠子《Piano Solo: Belle-Île》のためのスケッチ、2024年

アーティゾン美術館は、「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」展を2024年11月2日(土)より開催します。アーティゾン美術館では、2020年の開館以来、石橋財団コレクションとアーティストとの共演、「ジャム・セッション」展を毎年開催しています。第5回目となる本展は、国際的なアートシーンで注目を集めるアーティスト、毛利悠子を迎えます。

「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」の見どころ

毛利悠子《Calls》2013年—、「MEDIA/ART KITCHEN—ユーモアと遊びの政治学」展示風景、2014年、国際芸術センター青森 写真:Kuniya Oyamada

毛利悠子《Calls》2013年—、「MEDIA/ART KITCHEN—ユーモアと遊びの政治学」展示風景、2014年、国際芸術センター青森 写真:Kuniya Oyamada

1.現代日本を代表するアーティストの国内初となる大規模展
毛利悠子は、彫刻、音、動きなどを組み合わせることで、空間にただよう「見えない力/事象」に形を与え、わたしたちに感受可能なものに変換する作品で知られています。近年数多くの国際展に参加し、世界のアートシーンで注目を集める毛利は、現代美術のオリンピックと呼ばれる「ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」、第60回(2024年4月20日—11月24日)における日本館展示に選出されました。そんな彼女の活動を、アーティゾン美術館の空間に合わせてアップデートする既発表作品と、コレクション作品からインスピレーションを得た新作を交えて、国内では初となる大規模なスケールで紹介します。

*本展は第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示の帰国展ではありません。

毛利悠子《めくる装置、3つのヴェール》2018年—、「キュレトリアル・スタディズ12: 泉/Fountain 1917—2017 Case5:散種by 毛利悠子」展示風景、2018年、京都国立近代美術館 写真:Yuki Moriya

毛利悠子《めくる装置、3つのヴェール》2018年—、「キュレトリアル・スタディズ12: 泉/Fountain 1917—2017 Case5:散種by 毛利悠子」展示風景、2018年、京都国立近代美術館 写真:Yuki Moriya

2.時代を超えて交わる自然へのまなざし:「動き」や「音」を通じて
2020年の開館以来、現代アーティストとコレクション作品の共演を届けてきた「ジャム・セッション」展。「ジャム・セッション」は、元来ミュージシャンが集まって即興的な演奏を行うことを意味していますが、今回迎える毛利悠子は、デビュー当時から類語の「インプロヴィゼーション(即興演奏)」を創作におけるキーワードのひとつとしてきました。構成/作曲された音楽から逸脱していく現代/実験音楽の「エラー」や「フィードバック」も毛利の作品空間には組み込まれています。そんな音楽的モチーフを通して振幅やゆらぎ、変動や不確定さを重視する作家の観点から選ばれた近代の作品群は、「動き」や「音」をともなった毛利作品と併存することで、これまで見えてこなかった表情を見せ始めます。

クロード・モネ、アンリ・マティス、パウル・クレー、ジョルジュ・ブラック、マルセル・デュシャン、ジョゼフ・コーネル、藤島武二といった作家たちと毛利の、時代を超えた創造性の交わりをお見せします。

クロード・モネ《雨のベリール》1886年 、石橋財団アーティゾン美術館

クロード・モネ《雨のベリール》1886年 、石橋財団アーティゾン美術館

毛利悠子《Pleated Image》2016年—毛利悠子《Pleated Image》2016年—

毛利悠子《Pleated Image》2016年—

3.切迫する環境問題への「アート思考」
SDGs(2015年の国連総会で採択された、2030年までに達成されるべき持続可能な開発目標)が多くの企業や行政で共有されている現在は、翻って言えば、我々が深刻な地球環境の危機に直面していることを意味しています。大量生産・大量消費を是とし、「コントロール/制御」を軸に効率重視で発展してきた産業を中心とする社会がもたらす複合的な環境問題に対して、これまでとは異なった思考法が要請されています。

また、明確なゴール設定や効率性を重視しない、まごつきやリフレーミングといった迂回路に導く創造性を培う「アート思考」が、近年ビジネスや教育の現場で注目されています。

「エラー/不制御」や即興的な展開、磁力や電流、空気や埃、水や温度といった微細な環境の要素を作品に取り入れる毛利の姿勢は、大きすぎあるいは小さすぎて見えない流れ/変化に対する私たちの感度を高め、環境問題とその課題への向き合い方のささやかなヒントとなるでしょう。

毛利悠子《Decomposition》2021年—、「Neue Fruchtige Tanzmusik」展示風景、2022年、Yutaka Kikutake Gallery 写真:kugeyasuhide

毛利悠子《Decomposition》2021年—、「Neue Fruchtige Tanzmusik」展示風景、2022年、Yutaka Kikutake Gallery 写真:kugeyasuhide

毛利悠子《Calls》2013年—、「Inter-Resonance: Inter-Organics」展展示風景、2019—20年、シャルジャ・アート・ファンデーション 写真:Shanavas Jamaluddin

毛利悠子《Calls》2013年—、「Inter-Resonance: Inter-Organics」展展示風景、2019—20年、シャルジャ・アート・ファンデーション 写真:Shanavas Jamaluddin

「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」開催概要

「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」開催概要

会期 2024年11月2日(土)〜2025年2月9日(日)
会場 アーティゾン美術館
住所 104-0031 東京都中央区京橋1-7-2
展示室 アーティゾン美術館 6階展示室
時間 10:00〜18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日(11月4日、1月13日は開館)、11月5日、12月28日ー1月3日、1月14日
観覧料 日時指定予約制
ウェブ予約チケット1,200円、窓口販売チケット1,500円、学生無料(要ウェブ予約)
*予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットをご購入いただけます。
*中学生以下の方はウェブ予約不要です。
*この料金で同時開催の展覧会を全てご覧いただけます。

同時開催 ひとを描く(5階 展示室)      
石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 マティスのアトリエ(4階 展示室)

展覧会の詳細は、美術館の公式サイトでもチェック!