「空間」「時間」「現象」「存在」を主題に数々の作品を生み出す、今井祝雄

《デイリーポートレイト》 1979-、インスタント写真 作家蔵

《デイリーポートレイト》 1979-、インスタント写真 作家蔵

芦屋市立美術博物館では、特別展「今井祝雄ー長い未来をひきつれて」を開催しています。

1946年に大阪で生まれた今井祝雄は、大阪市立工芸高等学校在学中の1964年、17才の時に第14回具体美術展へ初出品し、翌年最年少作家として「具体美術協会」(具体)会員となりました。1966年に「第10回シェル美術賞」で一等賞を受賞し、同年7月にグタイピナコテカで個展を開催、絵画や立体作品、モーターを利用した作品を「具体」で発表する一方、「第1回草月実験映画祭」(草月会館ホール・東京、1967)や「現代の空間’68-光と環境」(そごう・神戸、1968)では映像や光による作品を発表するなど、「具体」の新時代を担うメンバーの一人として活躍します。

1970年代以降は、写真や映像、音などのメディアを用いた、空間や環境についての深い思索にもとづく作品や、パフォーマンスを含む身体的な表現を通して「空間」「時間」「現象」「存在」といった人間にとっての根源的な主題について考察する作品を数多く制作する一方、街中の公共的空間に作品を設置する活動も行うなど、現在も国内外で精力的に発表を続けています。

本展は、作家活動60年の節目に開催する、美術館では初の今井祝雄の個展となります。1960年代から80年代の平面、写真、映像作品を中心に、コロナ禍に生まれた作品や本展に向けて制作される新作を展示し、若くして作家活動をスタートした10代から現在にいたるまでの多様な活動を多角的に紹介し、今井祝雄という作家の知られざる全体像を明らかにする試みです。

グタイピナコテカでの個展会場風景、1966 

グタイピナコテカでの個展会場風景、1966 

《円》 1967 モノクロ、サウンド(4分3秒) 作家蔵

《円》 1967 モノクロ、サウンド(4分3秒) 作家蔵

今井祝雄という作家の全体像を明らかにする試み

本展は、初個展「17才の証言」(ヌーヌ画廊・大阪、1964年)や第14回具体美術展に初出品し、作家としてスタートした1964年から60年の節目となる2024年に開催します。

この度、本展に向けて制作される新作《瀑布-ビデオの時代》から、60年代から80年代に発表された平面、写真、映像、音などのメディアを用いた作品や関係資料約100点を展示し、時間にさかのぼりながらご鑑賞いただきます。各時代の動きに敏感に反応しながら、「空間」「時間」「現象」「存在」といった人間にとっての根源的な主題を軸に展開していく今井の活動をまとめて振り返ることの出来る、初の機会となります。

1970年代の〈音〉の作品や関連資料を展示

《Two Heartbeats of Mine》 1976 インスタレーション 合体スピーカー、心音テープ、プレイヤー2台 作家蔵

《Two Heartbeats of Mine》 1976 インスタレーション 合体スピーカー、心音テープ、プレイヤー2台 作家蔵

《八分の六拍子-part 1》 1976年 メトロノーム音、心臓音(1976)、スピーカー 

《八分の六拍子-part 1》 1976年 メトロノーム音、心臓音(1976)、スピーカー 

向かい合わせに接した2基のスピーカーから、1975年、1976年に収録した今井の心臓音が響き合う《Two Heartbeats of Mine》(1976)や、遮光されたほぼ完全な暗闇の中で座る鑑賞者に向け、自身の心臓音からメトロノームへと移り変わる拍子にあわせてドーム空間の中央からストロボ撮影するというイヴェント《八分の六拍子》(1976)の要素となった〈音〉を、芦屋市立美術博物館の特徴的な空間に合わせて展示します。

1970年代~80年代の映像作品を上映

今井祝雄は、「空間」「時間」「存在」といった根源的な問いを、自らの身体を用いた行為によって思索し、その場で生じた「現象」を写真や映像として留め作品化します。

本展では、未発表の映像作品を含め、1970年代から80年代の映像作品を中心に上映会を行います。これまで今井の映像作品をまとめて鑑賞する機会は少なく、本上映会は貴重な機会となります。

本展図録を水声社より刊行

今井祝雄の60年にわたる活動の軌跡を明らかにする本書では、「具体」期の活動から、ものと人間の関係への問い、映像・写真というメディウムへの取り組みなど、多彩な活動の全貌を明らかにします。勝俣涼(美術批評・表象文化論)、高嶋慈(美術・舞台芸術批評)による書き下ろしの批評や、今井祝雄×藤本由紀夫の対談を収録。今井の活動を歴史化するにとどまらない、作品の今日的な意義を問い直し、制作の現在に迫ります。(2024年11月初旬予定)

《タイムコレクション》 1981 CBプリント 作家蔵

《タイムコレクション》 1981 CBプリント 作家蔵

「今井祝雄ー長い未来をひきつれて」概要

会 期:2024年11月17日(日)まで、10:00-17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(11月4日(月・振休)は開館、11月5日(火)は休館)
観覧料:一般900(720)円、大高生500(400)円、中学生以下無料
 ※( )内は20名以上の団体料金
 ※ 高齢者(65歳以上)および身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳をお持ちの方とその介護者の方は各当日料金の半額
 *リピート割引:本展チケットの半券をご提示いただいた方は、団体割引料金でご覧いただけます。(1枚につきお一人様1回限り、他の割引券との併用不可)
 ※11月9日(土)、10日(日) はあしやつくるば開催のため観覧無料
会 場:芦屋市立美術博物館(〒659-0052 兵庫県芦屋市伊勢町12-25)

特別展「今井祝雄 ―長い未来をひきつれて」の詳細は、美術博物館公式サイトをチェック!