【東京府中】「アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界」開催。版画と、近年注目の油彩画も登場
ライター
菅原 麻葉
「版画のミュシャ」の、油彩画もご覧あれ!
草花に彩られた女神のような女性と波打つ曲線。19世紀末パリの香りが色濃く漂うアルフォンス・ミュシャの版画は、多くの人の心をつかんできました。さらに、近年、注目の高まるミュシャの油彩画。神秘的で、荘厳な画面は、画家としての奥深さを見せつけます。パリ時代の華やかな版画と、パリを離れた後半生に打ち込んだ油彩画。両者を一つの視点から眺め渡す機会が、これまでほとんどなかったために、まるで別世界のもののように語られてきました。しかしながら、固定観念を取り払い各々の作品に向き合えば、色やかたち、構図の作り方など、絵作りの要素には、共通点が多いことに気づきます。つまり、版画にも油彩画にも、一目でミュシャと分かる強い個性が、その造形にあふれているのです。さらに言えば、この造形の生み出す力こそが、私たちを惹きつけてやまないミュシャの魅力の核心と言えるでしょう。
本展では、版画の代表作と貴重な大型の油彩画、さらに素描や下絵も合わせて、ミュシャの魅力を余すところなく紹介します。
心の世界を見つめる瞑想
象徴主義は、文学から音楽や美術まで、世紀末のヨーロッパの芸術すべてを包み込むように流行した芸術運動で、表現のあり方そのものを問う革新性がありました。ミュシャの神秘的な油彩画は、象徴主義絵画を代表するものの一つとして知られますが、さらに、軽やかな版画に奥行きを加えたのも、心の世界を見つめようとする、その思想でした。
クラシックな絵画と最新のデザイン感覚
ミュシャのポスターが、当時の人々の心を捉えたのは、格調の高い伝統絵画の要素に、最新のデザイン感覚を組み合わせた斬新さがあったからです。例えば、人物には的確に陰影を施して立体的に描き、それ以外のモチーフは分かりやすく、平面的にデザイン化しています。さらに人物を太い輪郭線で囲むことで、全体の調和を図っているのです。
創作の過程に迫る
ミュシャの造形の魅力を解き明かすものとして欠かせないのが、下絵です。デッサンを重ね、試行錯誤を繰り返しながら「ミュシャらしさ」を生み出していきました。完成作とも比較しながら、ご覧いただきます。
ミュシャの原点 物語の挿絵 貴重な下絵も公開!
ミュシャが初めて手がけた絵の仕事は、本の挿絵でした。画学生時代に奨学金が打ち切られ、いわば生活のために始めたものでしたが、ミュシャはこの経験を自分の大切な原点と語り、挿絵の仕事を生涯、続けました。初期の代表作を、貴重な下絵と合わせて紹介します。
世界的コレクションの名品
ミュシャ人気の高い日本には、質の高いコレクションが数多くあります。特に、ミュシャの実息との深い信頼関係によって築かれたドイ・コレクションは世界的なコレクションで、《ハーモニー》、《クオ・ヴァディス》といった大型の油彩画が含まれています。同コレクションが寄贈された堺市以外では公開機会のほとんどない、この貴重な2点も展示します。
ミュシャと日本の近代洋画
ミュシャが師事した巨匠画家、ローランスとコラン。彼らは、明治時代にパリに留学した日本の洋画家の多くを指導したことでも知られます。つまり、ミュシャには日本人の兄弟弟子がたくさんいるのです。さらに、ミュシャから直接指導を受けた洋画家もいました。同時開催のコレクション展では、ミュシャと日本近代洋画の意外なつながりをご覧いただきます。
「アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界」開催概要
会期 2024年12月1日(日)まで
会場 府中市美術館
住所 183-0001 東京都府中市浅間町1丁目3番地(都立府中の森公園内)
時間 午前10時~午後5時(入場は午後4時30分まで)
休館日 月曜日(11月4日は開館)、11月5日(火)
観覧料
一般 1000円(800円)、高校生・大学生 500円(400円)、小学生・中学生 250円(200円)
※( )内は20名以上の団体割引料金。
※未就学児無料。
※障害者手帳(ミライロID可)をお持ちの方と付き添いの方1名は無料。
※コレクション展もご覧いただけます。
※府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」提示で無料。
TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
1987年生まれ。OLで雑誌編集を行う傍ら、ファッション、美容、お出かけ系などのライター業も。ファッション初心者ゆえ、安い・着やすい・コーデしやすいアイテムに目が行きがち。身長162cm、ブルベ冬・骨格ストレート寄りらしい。インスタグラムは愛猫と食べログ3.5以上のお店巡りが多め