最近発売された話題の本や永遠に愛される名作などから、キーワードに沿った2冊のイチ押し&3冊のおすすめBOOKをご紹介します。

【今月のキーワード】歌人の言葉はまっすぐで面白い!

片想いはせつなくて、両想いはうれしい。2055年、高校生の緑と楯は未来の東京を生きている。168センチ、53キロ。身長と体重と性別は同じだが、誰からも愛されるアイドル的な存在の楯と、七三分け&メガネという秀才キャラを地でいく緑は、正反対の日常を送っている……ように見えた。ある日、楯の家を緑が訪れるまでは。そしてその瞬間から、ふたりの時間はギュギュッと角度を変えて交わり始める。2日続けて楯を訪れて《ずっとまえからこんなふうに話をしていたような気がする》と感じる緑。放課後に、休日に、どきどきしながらもくつろいだ時間を過ごすうち《自分がやっと正しい場所に、自分のいるべき場所に接続されたような安堵をおぼえる》緑。《なんで俺にはおまえなんだろう》と、不思議そうに緑を受け止める楯。ひとりではなくふたりで生きることを描き続ける雪舟えまの小説の中で、人は動いて恋をして、胸をときめかせたり締めつけられたりしている。そのと幸福を一緒に感じながら読み進めれば、人を想うことの尊さが胸の中いっぱいに満ちることに気づくはず。

【イチ押しBOOK1】雪舟えまさんの『緑と楯 ハイスクール・デイズ』

人を想うことの尊さが胸の中いっぱいに満ちの画像_1
同じクラスの人気者に恋をした。その日から世界はやわらかく、光も影も鮮やかに美しくなった。愛を求める緑とマイペースに前へ進む楯、男子高校生同士の恋を描く長編小説。同シリーズの漫画集や社会人篇もチェックして。(集英社 ¥1400)

【イチ押しBOOK2】東 直子/穂村 弘さんの『しびれる短歌』

歌人でもある雪舟えまについて、《弱い立場の人を応援するみたいなところがある》と評する東直子。穂村弘との対談本『しびれる短歌』で、恋、家族や動物、お金を詠んだ歌について語りあう。短歌といえば、国語の時間の、わかるようなわからないようなムズムズした感触を思い出すという人にも、短歌ラブな人にも。短歌に何が描かれているのか、感覚や感情をどんなふうに言葉に移し変えているのか、その楽しみ方を教えてくれる入門の書。
人を想うことの尊さが胸の中いっぱいに満ちの画像_2
歌に詠まれた想いは形を得て、時を隔てた現在にも未来にも届く。恋、家族、食べ物や時間など身近な事柄について詠んだ歌は、美しかったり身もふたもなかったり。歌人ふたりの声が聞こえてくるような楽しい短歌入門。(筑摩書房 ¥840)

【ほかにもあります★オススメBOOKをご紹介】

人を想うことの尊さが胸の中いっぱいに満ちの画像_3
『わるい食べもの』/千早 茜さん

千早茜の初エッセイは、「食」について。いいって何? 悪いって何? 食べるってどういうこと? 常識も流行も関係なく、頑固に真面目に食べ続ける小説家の言葉の数々、毒気をスパイスにしていただきます!(集英社 ¥1400)
人を想うことの尊さが胸の中いっぱいに満ちの画像_4
『すべての、白いものたちの』/ ハン・ガンさん 〈訳〉斎藤真理子さん

《おくるみ/うぶぎ/しお/ゆき》。語られるのは、白いもの。白い紙に刻まれた心臓をこする言葉に導かれ、遠い異国へ、雪の下へ、心の中へと旅をする。《愛と苦痛の声》が静かに響く、清らかに美しい物語。(河出書房新社 ¥2000)
人を想うことの尊さが胸の中いっぱいに満ちの画像_5
『書道教室』/筒井秀行

演劇、ラップ、ヤンキーもプロポーズも小さな怪異も全部載せ! 下町の書道教室を舞台に、漫画でしかできない新しい表現を、軽やかに鮮やかに繰り出し続ける全8話。作品の公式サイトで第1話を無料公開中。(徳間書店 ¥680)


--------------------
MORE2019年4月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 原文/鳥澤 光
---------------------