It girlの「私の履歴書」

選んだ生き方にこそ、センスが表れる

主体的にキャリアを選択し、自分らしく働いている女性たちを取材する連載。今回は、昨年末にモア読者のみならず、日本中の心を奪った連続ドラマ『silent』で一躍注目を集めた脚本家・生方さんにお話をうかがいました。

生方美久(うぶかた みく)さん

助産師、看護師と両立し独学で脚本を勉強! 昨年末の木10ドラマ『silent』で連ドラデビュー

脚本家生方美久さん
Job :
脚本家
Profile :
1993年生まれ、群馬県出身。大学卒業後、助産師、看護師をしながら脚本を執筆。昨年10月期の連続ドラマ『silent』が大ヒットし、脚本は『silent シナリオブック 完全版』(扶桑社)として発売中

History

2016
大学の医学部保健学科を卒業後、地元・群馬の病院に就職。助産師として3年間働き、2018年からオフで脚本執筆を始める
2019
病院を退職し、ミニシアターでのアルバイトを開始。働きながら映画学校・ニューシネマワークショップにて半年間、映像制作を学ぶ
2021
上京し、非常勤で看護師をしながら脚本を執筆。フジテレビ主催のコンクール・ヤングシナリオ大賞で、『踊り場にて』が大賞に

生方美久さんの選択

“『継続=正しい』がもどかしかった。大人になってから夢が変わってもいい”

独学で脚本を勉強! 大ヒットドラマ『siの画像_2
一生ひとつの仕事を続けなくてもいい時代だが、ひととおり経験を積んだタイミングでまったく違う業種に方向転換をするのは勇気がいる。生方さんは大学卒業後、ずっと助産師を続けていくだろうと将来を見据えたが、今はプロの脚本家だ。

生方美久「幼少期に大きな病気を患った私は、お医者さんに命をつないでもらったこともあり、『自分も医療の道に進むもの』と思っていました。大学も医学部に入学し、新卒で総合病院に就職。ずっと助産師を続けたいと思うほどやりがいもありました」

そんな生方さんが初めて脚本を“書いてみた”のは、社会人3年目。

生方美久「高校生の頃から映画が大好きで。大学生になってからは頻繁に映画館にも通いました。『映画をつくってみたい』、最初は誰でも抱きそうな気持ちでしたが『憧れ』のひと言で片づけていた夢を本気で実現したいと、書店で売られている脚本専門雑誌を参考に執筆を始めました」

1年後病院を退職し、ミニシアターでのアルバイトや、映画学校に通うなど、その時にできる確実な一歩を積み重ねていく。

生方美久「堅実な仕事をやめて脚本家を目指すことは、誰にも相談せずに決めました。他人に意見を求めると軸がぶれてしまい、夢に責任を持てなくなってしまいそうで……。映画学校を修了後上京し、脚本を書きながら生活を成立させるのは苦しかったのですが、自分ひとりで決めたからこそ非常勤で看護師をしながらでも書きたいと覚悟を持てました。ありがたいことにドラマ『silent』は多くの方に観ていただきましたが、自信はまだ持てません。この仕事には資格も入社日もないので、自分で自分を“脚本家”と名乗ることもいまだに緊張して。それでも、好きなことを仕事にした選択は間違っていなかったと言いきれます。よく『継続は力なり』と言いますが、本当にやりたいことの『継続』なら素敵だけれど、ただただ続けることが正しいわけではないのかなって。一度きりの人生、どう区切りをつけて楽しむかは自分次第。脚本家としてスタートしたばかりですが、これまでスタッフ、キャストに本当に恵まれました。今後『silent』以上にみなさんの想い出になる作品をつくりたいです」

“やりたいことに出合えたら、小さな一歩でも行動に移してみる”

独学で脚本を勉強! 大ヒットドラマ『siの画像_3
「映像の仕事に携わりたいと思い始めたのは大学時代。当時は脚本家ではなく映画監督になりたかったんです。ですが、知識もツテもない自分が独学で監督になる方法がわからず、最初の一歩として脚本を書き始めました。私の場合は、書店で販売されている脚本専門雑誌を参考に“まずは書いてみる”ところからスタート。叶うかわからない夢でも、悩んでいるだけでは何も変わらない。それなら、決断に近づくためにもちょっとしたことから始めてみてもいいのかなと思います」(生方さん、以下同)
独学で脚本を勉強! 大ヒットドラマ『siの画像_4
「脚本家になるための道は人それぞれでルールはありません。私のようにシナリオコンクールに応募する人、脚本家の先生に師事しアシスタントから始める人、テレビ局などに売り込みにいく人などさまざま。私はひとりではなく複数の人に自分の脚本を読んでもらいたいと思ったので、コンクールへの応募を選びました。ほかの作品と比べられるのは正直怖かった部分もありますが、執筆経験が少ないので、審査員の方から講評をいただくことで視野が広がり、成長につながったのかなと思っています」

Miku's OSHIGOTO STYLE

FASHION

生方美久さんのファッション
「作品の執筆期間は一日中PCを使うので袖もとがこすれがち(笑)。袖を気にしなくてもいいらくちんスウェットにスニーカーが鉄板です。だからこそ、打ち合わせやこうした取材日など人に会える日は服選びが楽しい! ファッションブランド『HARE』がお気に入りで、今日も手に取りました」

MAKE-UP

生方美久さんのメイク
「家よりカフェのほうが仕事に集中できる派。誰にも会わない日も、お仕事モードにスイッチするために必ずメイクをします。PCに向きあっていると指先が常に目に入るので気分が上がる色のマニキュアを」

BAG

生方美久さんのバッグの中身
「服やバッグは黒や寒色系が落ち着きますが、バッグの中身はピンクばかり。『ミッフィー』好きもよく意外に思われます(笑)。俳優・川口春奈さんが『silent』のスタッフたちに作ってくださったタンブラーもIN」

Private

生方美久さんのプライベート
「『ドラマ、映画、音楽』が気分転換に。写真は最近、小山田壮平さんのライブで。できれば月1回はライブに行きたい!」

●これまで配信した「It Girlの『私の履歴書』」はこちらから

撮影/花村克彦 取材・原文/宮田彩加 ※MORE2023年3・4月合併号掲載