Netflixの申し子、美しく青きソン・ガンが高く舞う!

韓国ドラマ大好き! なライターが、ぜひおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。今回は、バレエでつながった老人&青年によるブロマンス作品『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』のあらすじと見どころを紹介します。

ナビレラ -それでも蝶は舞う- 写真左からチョロク(ソン・ガン)、ドクチュル(パク・イナン)

写真左からチョロク(ソン・ガン)、ドクチュル(パク・イナン)。

『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』
全12話
出演:パク・イナン、ソン・ガンほか
Netflixシリーズ「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」独占配信中

あらすじ

一流のバレエダンサーを目指すイ・チェロク(ソン・ガン)は、自分を取り巻く厳しい現実のせいでスランプに陥っていた。一方、郵便配達員として家族のために働き続けたシム・ドクチュル(パク・イナン)は定年を迎え、残りの人生を考え始めていた。ある日、友人の葬式の帰りにダンススタジオを通りかかったドクチュルは、チェロクが踊る姿に心を奪われる。
ドクチュルは子どもの頃バレエダンサーに憧れていたが、貧しい家庭環境がそれを許さなかった。かつてあきらめた夢に挑戦するため、ドクチュルはダンススタジオに再訪し、バレエのレッスンを受講したいと伝えるが、チェロクは相手にしない。それでも熱心に通い続けるドクチュルを見たバレエスタジオの団長から、チェロクドクチュルのバレエの指導者に、ドクチュルチェロクのマネージャーになるよう言い渡される。
かくて23歳と70歳の奇妙なバレエレッスンが始まり……。

ここが見どころ

今回紹介するのは、“47歳”もの年の差を超えて、バレエでつながった老人と若者の物語、『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』。嬉しくも悲しく、熱くて切なく。観る者すべてに勇気と感動を与える極上の夢追い物語でした……。

高みを目指す若きバレリーノ、チェロク役には人気俳優ソン・ガン。70歳でバレエに挑戦するのドクチュルを、大御所俳優パク・イナンが熱演しています。

原作は韓国ウェブトゥーン(縦読み漫画)で、漫画界のアカデミー賞と呼ばれる“アイズナー賞”のベストウェブコミック(2022年)にもノミネートされた人気作。ドラマ化のみならず、2023年には全本語版コミックも発売。今年春には、三浦宏規さん・川平慈英さん・狩野英光さんほか出演で、日本でミュージカル化も! 世界的にも大注目の作品になっています。

蝶のように舞う主演2人の極上マリアージュ

ナビレラ -それでも蝶は舞う- ソン・ガンのソロカット

高校時代のチョロク。このルックスでソン・ガンの実年齢が30歳って嘘ですよね……。

186cmの高身長に、小玉スイカのような小さな頭。スラリと伸びた長い手足に、どこかあどけなさの残る顔……。そんなソン・ガンが演じているのは、溢れんばかりの才能を持ったバレリーノ、チェロクです。第1話での彼の登場シーンは、ため息しかでない静謐さ。 
薄暗いダンススタジオに差し込んだ優しい光。その先には、長い手足を広げ、高く舞い上がるチェロクが。その姿はスタジオという暗く狭い場所から、光に満ちあふれた大空へ飛び出そうと羽ばたく蝶のように舞い踊っていて……。
この幻想的なシーンは、ドクチュルのみならず、視聴者の心をも奪うことでしょう。
素晴らしいダンスを披露しているソン・ガンは、本作に出演するまでバレエ経験がなかったとか。本作を機に、約半年間の練習を重ねて身につけたそうですが、短期間で魅惑の舞いをマスターしたソン・ガン、恐ろしい子!

ナビレラ -それでも蝶は舞う- ソン・ガンのソロカット

自主レッスン中のチョロク。

  • ナビレラ -それでも蝶は舞う- 踊るソン・ガンのソロカット

    シャツからもわかる筋肉美!

  • ナビレラ -それでも蝶は舞う- 踊るソン・ガンのソロカット

    跳ねるチョロク!

一方、パク・イナンが演じているドクチュルは、バレエスタジオの門を叩いたものの、当然、最初は全然踊れなくて、基礎動作とストレッチばかりなのですが、どうみても素人のそれなんですね。しかしドクチュルは、47コも年下のチェロクを“師”として敬い、厳しい練習にも必死に食らいつき、自主練習も欠かさず、真剣にバレエと向き合います。
その一方で、チェロクのマネージャーとしてのドクチュルは、持ち前の勤勉さで、毎朝のコールはもちろん、コンディションや練習量、食事などを事細かに記録。さらに風邪をひけば、家を訪ねておかゆを作り、薬やおかず、梅エキスといった体にいいものもしっかりと差し入れるなど、渾身のサポート。
スランプでやさぐれモードになっているチェロクから見れば、ただのお節介にしか思えないのですが、次第にお節介は真心となって、孤独と不安で隙間だらけだったチェロクの心を埋めていくのです。また、ドクチュルがバレエに挑む真摯な姿が、チェロクの心に情熱の火を灯していき、二人の間に特別な絆を結んでいくのです。

  • ナビレラ -それでも蝶は舞う- 鍛えるドクチョルのソロカット

    自宅で腹筋を鍛えるドクチョル。辛そう……。

  • ナビレラ -それでも蝶は舞う- パク・イナンのソロカット

    スタジオで基礎トレーニングに励むドクチュル。嬉しそう♪

画面越しに伝わる、ドクチュルからのあたたかなエール

ナビレラ -それでも蝶は舞う- 笑うパク・イナンのソロカット

人のよさが滲み出ているドクチュルの笑顔。 

何歳になっても夢を追いかける姿、周りに反対されても諦めないドクチュルの姿は、ともすれば「70も過ぎて妙なことを始めたお節介じいさん」になりかねません。

そこは半世紀以上も最前線で活躍する大俳優パク・イナン。大らかで人情深く、お節介だけど憎めないかわいらしさで、まわりに愛情を与えるドクチュルを、魅力たっぷりに演じています。

ドクチュルな真剣な思いと優しい言葉、そして思いやりの数々は、慈愛に満ちた海のように周囲の人を包み込み、チェロクだけでなく、明るい未来を描けなかった若い世代の背中も押していくのです。

「バレエをやらないまま、人生を終えることはできない」

ナビレラ -それでも蝶は舞う- パク・イナンのソロカット

バーでレッスン中のドクチュル。毎瞬間、全力投球!

ナビレラ -それでも蝶は舞う- ソン・ガンのソロカット

チョロクはバイトを掛け持ちして生活費を稼ぎながら夢を追いかけている。

「今こそ新しいことを始めよう」。そんな希望を胸に抱きつつも、なかなか踏み出せずにいることってありませんか?

ドクチュルがバレエに挑むキッカケは、旧知の友が最期に言い残した後悔でした。友の慟哭を聞いて、「バレエをやらないまま、人生を終えることはできない」と決心したドクチュル。世間体や、家族の反対や、体力的限界にも負けず、必死にバレエに食らいつきます。そこまで努力しても、妻や息子、孫は「いい歳をして何を言っているのか」と冷ややか。

一方、若いチェロクが順調満帆かと言われたら、そうではありません。親元を離れて生きているチェロクは、経済的にも精神的にも不安だらけ。若いが故の迷いもあります。

つまり、夢を追うことへの苦悩や葛藤は、年齢に関係なく付きまとうってこと。だからこそ、本作で描かれる夢を追うことの苦悩、乗り越えた先にある奇跡が、心を揺さぶるのだと思います。

ナビレラ -それでも蝶は舞う- パク・イナンのソロカット

人生の先輩ドクチョルがよく口にする「ケンチャナ(大丈夫)」の言葉は包容力抜群!

「準備が整うまで待つな。まずはスタートを切れ」
「さあ次はお前の番だ」

そう若者たちに声をかけるドクチュルの言葉は、画面の向こう側にいる我々にもエールを贈ってくれているようで、胸に沁みます。

年齢も、生きてきた環境も違う2人をつないでいるのは、バレエへの情熱。自分の夢を他人に踏みつけられたり、容赦のない“老い”という時の流れに、怒り、苦しみ、絶望しながらも前へと進み続ける2人。彼らを見ていると、「したいことをする」その先には「幸せ」というまばゆい光景が広がっているのだなと思いました。

タイトルの“ナビレラ(나빌레라)”は、韓国語で「蝶のように美しく羽ばたく」という意味。ソン・ガンの蝶のような舞いに見惚れ、パク・イナンの演技やセリフに胸打たれ。2人の追いかける夢の結末に涙するはずです。

ナビレラ -それでも蝶は舞う- 練習中のチョロクとドクチュル。

自らの練習動画を見ながら談笑するチョロクとドクチュル。2人の間には絆が。

「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」 ドクチュルのソロカット

練習の成果がこちら。ドクチュルの立ち姿がシュッとしてます!

ナビレラ -それでも蝶は舞う- 路上で舞うドクチュルと見守るチョロクの2ショット

作品概要

ナビレラ -それでも蝶は舞う-
全12話
Netflixシリーズ「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」独占配信中

Netflixシリーズ「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」独占配信中
ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で爆食。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。