わかっていても翻弄されるヒロインに共感を抱いてしまうハイパーリアルなラブロマンス

CONTENTS
  1. わかっていても翻弄されるヒロインに共感を抱いてしまうハイパーリアルなラブロマンス
  2. あらすじ
  3. ここが見どころ
  4. 大学生の恋愛物語と思いきや、普遍的な恋愛がテーマ
  5. ヒロインの自己肯定感の描き方がリアル
  6. 恋愛する気がないという男 or 本気で恋する男
  7. 脇役カップルたちも見逃せない

韓国ドラマ大好き!なライターがおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。今回は、愛は信じられないけど恋愛はしたい女性ユ・ナビと、恋愛はめんどくさいけど友達以上恋人未満の関係を楽しみたい男性パク・ジェオンのロマンスを描いた『わかっていても』を紹介します。

わかっていても:ソン・ガン、ハン・ソヒ

ジェオン(ソン・ガン)とナビ(ハン・ソヒ)。出会って小一時間でこの距離!

『わかっていても』
全10話
出演: ソン・ガン、ハン・ソヒ、チェ・ジョンヒョプほか
Netflixシリーズ「わかっていても」独占配信中

あらすじ

美術大学で彫刻学科を専攻をしている大学生ユ・ナビ(ハン・ソヒ)は、恋人の浮気現場を目撃したことで別れを選択する。失意の中、バーでひとり飲んでいたナビは、完璧なビジュアルと人当りもよいパク・ジェオン(ソン・ガン)と意気投合。彼の部屋へと誘われたものの、女性の気配を感じてその場から立ち去るのだった。しかし後日、学科の飲み会でジェオンと再会する。ジェオンが同じ学科に復学したばかりの後輩だと知ったナビは、警戒しつつも彼に惹かれていくのだが……。

ここが見どころ

春ですね。みなさん恋してますか⁉ それとも恋を求めていますか? もしや過去の恋、引きずっていますか……? 
いま挙げた項目のいずれかにあてはまる方にぜひ観てほしいのが今回紹介する『わかっていても』です。
早速、“わかっていても”沼ってしまうポイントを説明します!

※本記事はネタバレがありますので、ご注意ください。

大学生の恋愛物語と思いきや、普遍的な恋愛がテーマ

わかっていても:ハン・ソヒ

フーディーだけでもこんなにかわいいナビ♡

本作は、同タイトルのウェブ漫画を原作に、愛は信じていないが恋愛はしたい女性と、恋人はいらないけれど“Some(友達以上恋人未満)”な相手はそばに置きたい男性がくり広げる、甘酸っぱくてほろ苦い大学生たちの恋愛模様をリアルに描いた青春ラブストーリー。観る前までは、「くっついたり離れたりする若者たちの恋愛と情熱をピュアに描いたお話かな」と思っていたのですが、ふたを開けてみたら、「割り切った男女関係」に葛藤する、わかっていてもままならない煩悩の塊のような作品でした……。老若男女問わず、恋愛に興味があればすべて対象内。ただ刺激は強めなので、そこだけ気をつけてもらえればよろしいと思います。

わかっていても:ソン・ガン

ソン・ガンのご尊顔♡

そして、視聴欲をかき立てるのは、主人公たちのビジュアルの高さです!

主演は“Netflixの息子”と呼ばれるビジュアルマスターのソン・ガン『サウンドトラック #1』や先頃シーズン2が配信された『京城クリーチャー』で存在感を見せつけているハン・ソヒ。この2人だけでも、ビジュアル測定器が存在するなら振り切れるんじゃないかという強めのカードですが、さらにナビの幼馴染で彼女に尽くしまくるヤン・ドヒョン役にチェ・ジョンヒョプが起用されているという鉄壁の布陣。妖艶なソン・ガンだけでなく、癒し系じゃがいも男子ことチェ・ジョンヒョプも配置するという大盤振る舞い! 「咳をしても一人」という自由律俳句の先駆者・尾崎放哉の作品を髣髴とさせる「どっちに転がっても沼」という感想を抱くことでしょう。

わかっていても:ソン・ガン、ハン・ソヒ

製作室での逢瀬を楽しむジェオンとナビ。美大生ならではのデートシーンですね。

ヒロインの自己肯定感の描き方がリアル

わかっていても:ハン・ソヒ

ナビは美大生なので作業着を着て製作に励む。

メインの登場人物は20代の美大生たち。ヒロインのナビは、恋人に浮気されたけれど、このルックス。実際はモテるし、友人も多く、スクールカースト上位にいそうなコなんですよ。それなのに、思いっきり腹の底から笑うシーンはあんまりないんですよね……。元カレに浮気された傷、美術的才能への焦り、家族との関係についての悩み。さらに、ナビには気持ちを飲み込んでしまうところがあって、断れない・怒れない・自己主張できないという、周りから見たら、かなり都合がいい人に思われていることが、自分自身の首を絞めているんです。だからこそ元カレ(浮気性)とジェオン(恋愛する気はないけど関係は深めたいタイプ)というダメ系男子に捕まってしまうわけですが。

わかっていても:ハン・ソヒ

どんな素敵な作品を生み出しても、認められるかどうかはわからない。美大生はつらいよ……。

ナビのように、相手に主導権を譲りがちな人って、第三者から見たら社交的に見えるもの。陽キャと言われる人々ほど、ナビの姿に自分と似たものを感じて共感の度合いがグッと増すのではないでしょうか。
作品の前半は、選択を相手に委ねるナビの姿が目につきますが、後半以降は彼女が“わかっていても、見て見ぬふりをしてきたこと”と向き合うシーンが増えます。現実を見つめられるようになっていくナビが、どのように成長し、どんな未来を自分の手で選択するのかに注目してみてくださいね。

わかっていても:ハン・ソヒ

ナビの最後の選択、かっこよかったです!

恋愛する気がないという男 or 本気で恋する男

くり返しになりますが、本作は浮気ばっかりする年上彼氏と別れてハートブレイク中の美大生ナビが規格外のイケメン・ジェオンと知り合い、ダメ男回避どころか、ダメ男遍歴の上書き(しかも大幅修正)をしてしまう物語です。

しかし、誰もナビを責めることはできません。ナビジェオンの2人だけのシーンのきらめき度の解像度が違うんです。恋愛フィルターがかかった4K使用なんですよっ! 出会ったバーの照明の具合、音もなく降り積もる雪、風に舞い散る桜の花びら。ほぼゼロ距離にあるジェオンの憂いを帯びた目。セクシーな声。ほしい言葉はくれないけれど、ぬくもりは与えてくれる魅力的な唇。ハマったらいけない相手だとわかっていても、「もしかしたら……」と期待せずにはいられない圧倒的な美がそこにあるのです。絶世のイケメン・ジェオンという男に、一体誰が惹かれないでいられようか、いやない、ないんです!

わかっていても:ソン・ガン

こんなイケメンに声をかけられて抗える人がいたら会ってみたいです。

わかっていても:ソン・ガン

ナビの腕に絵(という名の呪縛)を描き入れる魔性の男ジェオン。

心は危険なジェオンを求めるものの、頭は「もうちょっと冷静になろうね」と訴えてくるのも、人間の防衛本能。そこで、恋愛ドラマあるあるの存在――優しくて誠実な当て馬男子――の登場です。その名もドヒョク(チェ・ジョンヒョプ)。ナビとドヒョクは幼馴染だったけれど、久々に再会するのですが登場シーンがベタofベタ。バスのブレーキがかかった途端に、ドヒョクの買い物袋からじゃがいも(笑)が転がり落ちるという、恋愛ドラマの王道なんですよね。ただ、このじゃがいも男子だって並の男じゃない。スタイルも性格もよく、料理上手な好青年。ナビジェオンに弄ばれていることを知っていても、彼女に寄り添って尽くし、まっすぐに想いを伝えてくれる。どう考えてもドヒョクを選んだ方が幸せになれる……と理屈ではわかっているのに、のらりくらりとかわし続けるジェオンのような男のほうがかっこよく見えちゃう不可思議。ある種、ファンタジーともいえる当て馬の登場は、人の心の理屈では片づけられない不条理さをリアルに浮彫にするのでした……。

この対照的な2人はナビに対してそれぞれの愛の重さ(というか執着?)を見せつけてくるのでお楽しみに!

わかっていても:チェ・ジョンヒョプ

じゃがいも君ことドヒョク(チェ・ジョンヒョプ)の安心・安全・健全感にほっとします。

脇役カップルたちも見逃せない

本作は大学生の群像劇なので、観る人によっては友人たちの恋愛模様に、より共感する人がいるかも。彼らのテーマは「友情から生まれた恋」。マッチングアプリや合コンで出会いを求めるも、遠回りしながら身近な友人の大切さに気づくんです。そして、「告白して親友を失ったらどうしよう」とか「想いを受け止めてもらえなかったら……」と思い悩む、というところまではよくある話ですが、本作ならではというか、いいなあと思うのは、想い人が異性・同性に関係なく描かれているところ。相手が誰であっても好きになったら心は弾むし、葛藤が生まれるという、ごくごく当たり前のことを何気ない場面とセリフで気づかせてくれるのでした。
また、ナビたち仲間が彼女たちをするっと受け入れ、祝福する様子もすごく自然でよかったです♡


いかがでしたか?
本作は、横浜流星主演の『わかっていても the shapes of love』として、日本リメイクもされています。こちらは「傷つくとわかっていても、愛に手を伸ばしてしまう人間の衝動」を描いたもの。ジェオンとはまた違う罪な沼男(横浜流星)が登場するので、未視聴の方は、見比べてみるのはいかがでしょう。

作品概要

わかっていても:ソン・ガン、ハン・ソヒ

わかっていてもあらがえない2人のやりとり、ぜひ沼ってくださいませ♡

『わかっていても』
全10話
出演: ソン・ガン、ハン・ソヒ、チェ・ジョンヒョプほか
Netflixシリーズ「わかっていても」独占配信中

Netflixシリーズ「わかっていても」独占配信中
ライター
中川薫

Kカルチャー・旅・お酒・漫画・音楽・スポーツ観戦好きのライター。ドハマりしたK沼が旅沼に直結し、年間十数回は海外へ。マイブームは「海外の大衆食堂をめぐること」。2023年は釜山&ソウル(韓国)、バンコク&ブリーラム(タイ)、ホーチミン&ハノイ&ダラット(ベトナム)、コロンボ(スリランカ)、リヤド&ジェッダ(サウジアラビア)で爆食。2024年はソウル、ソウル、台湾、ソウルへ。さらに東アジア最大のレインボーパレードである、台湾LGBTプライドパレード「臺灣同志遊行」にも参加。2025年の“海外旅はじめ”はソウル&プサン(韓国)。6月にはシアトル(アメリカ)へ。ミズーリ州まで足を延ばして「水月観音像」を拝めたらいいのだけど……。