口コミで大ヒット! フランスの人気女優によるドキュメンタリー映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』
メラニー・ロランといえば、『イングロリアス・バスターズ』や『オーケストラ!』、『人生はビギナーズ』などで知られるフランスの美人女優。『人生は〜』で共演したユアン・マクレガーとは「不倫していたのでは?」と一時ゴシップをにぎわせたこともありました。きらびやかな世界にいるセレブというイメージですが、実は歌手や映画監督としても活動していて、2013年には長編第2作目となる「Respire」が第67回カンヌ国際映画祭批評家週間部門で上映されました。さらに2013年には結婚をし、長男を出産しているママでもあります。そんな彼女が、俳優やジャーナリストとして活動する友人のシリル・ディオンと監督したのが本作です。 製作の発端になったのは、2012年に21人の科学者たちが学術雑誌「ネイチャー」に発表したある論文。それは私たちが今のままのライフスタイルを続けていると、気候変動による地殻の破壊と人口増加が人類を滅亡へと導くという衝撃の内容でした。妊娠中にこれを読んだロランは、あまりのショックに1日中泣き続け、自分の子どもが暮らす未来を水も食糧もほとんどない世界にするわけにはいかないと、ドキュメンタリー映画を製作することにしたそう。2015年の12月にフランスで公開されると、熱狂的な口コミが広がり110万人の動員を記録。フランスで最も権威あるセザール賞にも輝き大ヒットしました。この作品がこれほど支持された理由は、今まで数多く作られてきた環境問題を問うドキュメンタリー映画のように、破滅的状況を“告発”するのではなく、未来への“希望”を示す内容だったから。 自動車工場の閉鎖と人工減少で新鮮な食品が手に入らなくなったアメリカ・デトロイトで自給自足の生活を始めた人々や、2020年までにすべてのゴミをリサイクル活用させるプロジェクトを推進しているサンフランシスコでの取り組み、2050年までに石油への依存を減らすために町独自の地域通貨まで作ってしまったイギリス・トットネスの人々など、世界中で新しい暮らしを初めている人たちに次々インタビューをしていきます。農業、エネルギー、経済、民主主義、教育など、その内容は多岐にわたりますが、あくまでも「子どもにもわかりやすいように説明して」というスタンスなので、内容もシンプル。人間がひとりひとり違うように、考えや取り組み方もそれぞれ。多様性を認めながら誰もが責任を持つ社会を目指そうというポジティブなメッセージは、私たちの暮らしにも少しだけ気づきを与えてくれるはずです。 (文/松山梢) ●12/23〜渋谷イメージフォーラムほか全国順次公開 ©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS