大人だからこそ涙する! 名作ストップモーションアニメ『ぼくの名前はズッキーニ』
ティム・バートンを思わせるちょっと毒のあるビジュアルが印象的な本作は、昨年度のアカデミー賞で長編アニメーション部門にノミネートされたフランスとスイス合作のストップモーション・アニメーション。ストップモーションアニメとは、セットに置かれた人形をひとこまひとこま少しずつ動かして撮影する、気が遠くなるような作業を経て製作される作品のこと。66分の映画を製作するため、50人以上の職人が3秒ずつ人形やセットを動かし、8か月以上かけて完成させたそう。 その製作過程の大変さ以上に驚かされるのは、デフォルメされたアニメにもかかわらず、物語にぐいぐいと引き込まれてしまうこと。主人公は母親を亡くし孤児院で暮らすことになった9歳の少年“ズッキーニ”。育児放棄や性的虐待など深刻な事情を抱え、心に傷を負った他の子供たちと一緒に暮らすことになるのですが、ショッキングな内容を深刻に描きすぎることなく、友情に心躍らせ、恋にときめき、居場所を見つけていく子供たちのたくましさをキラキラとした温かなタッチで描き出します。 彼らのピュアな目から見た世界が美しいほど、大人たちの身勝手さや残酷さが際立つのもポイント。アニメではあるけれど、大人こそ胸をわしづかみにされる良作です。ちなみに主人公のズッキーニの声は峯田和伸、ズッキーニが恋に落ちるカミーユは麻生久美子、心優しい警察官のレイモンはリリー・フランキーが担当するなど、日本語吹き替えキャストも魅力的。ラストには主人公たちをギュッと抱きしめたくなるような、愛にあふれた物語です。 (文/松山梢) ●2/10〜新宿ピカデリーほか全国公開 ©RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016