迷える女のプチひとり旅 映画『間奏曲はパリで』
「あんなに私を愛してくれていたのに…」「あの時の情熱はどこにいってしまったの?」。夫婦でも彼氏彼女の関係でも、一度は(心のなかで)問いかけたこと、あるんじゃないでしょうか。好きな人と一緒に過ごしてはいるものの、出会った頃に自分に注がれていた愛がだんだんと薄れていっているような気がする、あの人にとって私の存在っていったい何なの? そんな女性の素朴で深い疑問をテーマに大人の恋愛を描いたのが、映画『間奏曲はパリで』です。
フランスの北東、ノルマンディー地方で畜産業を営むグザヴィエ(ジャン=ピエール・ダルッサン)とブリジット(イザベル・ユペール)。学生時代の恋が叶って夫婦になった2人ですが、ひとり息子も大きくなって巣立ち、結婚から何十年と経った今はいわゆる倦怠期。傍からみたらごくごく普通の仲のいい夫婦に見えても、ブリジットのなかには夫の言動に対する不満が徐々に溜まっていき、ある日、思わぬかたちで心を解放しようとするんです。きっかけは、偶然知りあったパリに住む若い青年スタン(ピオ・マルマイ)とのひととき。そう、夫とのマンネリな生活に欠けていた“ときめき”がブリジットの心のスイッチを押してしまう。そして持病の湿疹を病院で診てもらうという口実で、彼女は2泊のパリ旅行へ──。
スタンとの再会、偶然がもたらした女としての冒険を楽しむなかで、ブリジットは自分にとっての大切なものに気づいていきます。手放してみるからこそ、離れてみるからこそわかることもあるわけで、自分自身と向きあうためのプチ旅もいいなぁと、しあわせで居続けるためのヒントがそこにはあります。ブリジットをとてもキュートに、60代とは思えない可愛らしさで演じているイザベル・ユペールの大人の女子力も必見です。
(文/新谷里映)
●4/4〜角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
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