強烈な孤独にさらされる派手やかな青春は、演じていてうらやましかった。

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東京湾でバラバラ遺体となって発見された“チワワちゃん”の死をきっかけに、かつて毎日のようにつるんでいた仲間の人間関係が明らかになっていく映画『チワワちゃん』。門脇さんは、チワワに憧れと嫉妬を抱く主人公のミキを演じた。

「私にはグループでつるんで騒ぐ、みたいな仲間がいた経験も彼らのような爆発的なエネルギーもなかったです。そういう私からすると、この映画はヒエラルキーが高い人たちのお話。でも派手やかな世界にいるからこそ、強烈な孤独や希薄な人間関係に常にさらされるんだろうなと思うんです。命を削って遊べるなんてうらやましいし、カッコよかった。ほかのキャストも騒ぐタイプではない方が多かったので、毎回遊んでいるシーンは『気合入れて遊ぶぞ、おー!』という感じで臨んでいました。遊ぶって疲れるんだなって思いました」

出演を決めたのは『愛の渦』のプロデューサーからの依頼だったから。作品を支える縁の下の力持ち的な役に選んでもらえたことがうれしくて、「恩返しがしたかった」と語る。

「たとえば、クラブで騒ぐシーンはト書きに“遊んでるみんな”としか書かれていなくて。そういう自由なシーンは演じる人の地の性格が出やすいので、それぞれのバランスみたいなものをずっと意識していました。強く出たり、静かに俯瞰したり。結果、それがミキの性格とも重なり、演じるうえでとても助けになっていたと、今、振り返って思います」

過去に戻れても、映画のような青春は「求めていない」と言う門脇さん。大事にしているのは「家族と友人を大切にする」こと。

「仕事が忙しくて人と会える時間が限られている分、疲れていても積極的に会うことを習慣にしています。友達といっても3人くらいしかいないんですけど(笑)、外へ飲みにいったり、引っ越しを手伝ったり、料理を持ち寄って家で過ごしたりも」

料理上手なだけあり、取材当日も手作りスープを持参していたとか。

「しめじとまいたけとひらたけとおなすを入れたあごだしのスープに、たっぷりのごまとわかめを入れて持ってきました。料理が好きなのは母譲りですね。今でも母の料理が断トツでおいしいと思ってます。父は山登りや庭仕事が趣味で、今も子供心を持ち続けている人だと思います。両親とは仕事から私生活まで、お互いにいろんな話をよくしています。そうやって小さい頃から両親が友達みたいな役割をしてくれていたから、外に大勢仲間をつくらなくても満たされていたんですね、きっと」


かどわき・むぎ●1992年8月10日生まれ、東京都出身。2011年に女優デビュー。主な出演作に連続テレビ小説『まれ』、ドラマ『トドメの接吻』、映画『愛の渦』、『二重生活』、『世界は今日から君のもの』、『止められるか、俺たちを』など。『さよならくちびる』が2019年初夏公開予定

『チワワちゃん』

【門脇 麦さんインタビュー】「大事にしての画像_2
SNSから火がつき、いっとき人気モデルとなった“チワワちゃん(吉田志織)”。東京湾バラバラ殺人事件の被害者が彼女だと判明したものの、毎日のように遊んでいたミキ(門脇麦)は、チワワの本名すら知らなかった。●1/18〜全国公開
取材・文/松山 梢 撮影/北浦敦子 ヘア&メイク/石川奈緒記 スタイリスト/伊藤信子 ワンピース¥170000/ファセッタズム ⓒ2019「チワワちゃん」製作委員会