「自分に自信が持てない女の子たちに語りかける映画にしたかった」。『ビルド・ア・ガール』監督インタビュー
がむしゃらに自分をつらぬいて頑張るすべての人に贈る「喜びに溢れた作品」
公開前から注目を浴びている映画『ビルド・ア・ガール』は、文才と想像力を武器に大人社会に飛び込んだ高校生・ジョアンナが、失敗や挑戦を繰り返しながら、がむしゃらに成長していく青春ストーリー。本作を「喜びに溢れた作品」と語るコーキー・ギェドロイツ監督のインタビューが届きました。このインタビューを通して、この映画の魅力を深く探ってみて!
コーキー・ギェドロイツ監督 プロフィール
BBC ドラマ「The Virgin Queen」(2005)でエミー賞国際部門と英国アカデミー賞にノミネートされ、「THE HOUR 裏切りのニュース」(2011) ではエミー賞、並びに、ゴールデングローブ賞の監督賞候補に。2016 年、カーラ・トイントン、アレクサンダー・アームストロング主演の「The Sound of Music Live」で英国アカデミー賞最優秀監督賞を獲得。2017 年のHulu ドラマ「Harlots/ハーロッツ 快楽の代償」がイギリスで大ヒットなど話題作を次々と担当してきたほか、「The Killing ~闇に眠る少女~」(2011~)、「ペニー・ドレッドフル ~ナイトメア 血塗られた秘密~」(2014~)、ナオミ・ワッツとビリー・クラダップが共演したNetflix ドラマ「ジプシー」(2017)、Netflix ドラマ「運命の7 秒」(2018)などを手がけ、本作で初の長編映画作品の監督を務めた。
あらすじ
1993年、イギリス郊外に家族7人で暮らすジョアンナは、底なしの想像力と文才に長けた16歳の高校生。だが学校では冴えない子扱い。そんな悶々とした日々を変えたい彼女は、大手音楽情報誌「D&ME」のライターに応募。単身で大都会ロンドンへ乗り込み、仕事を手に入れることに成功する。だが取材で出会ったロック・スターのジョンに夢中になってしまい、冷静な記事を書けずに大失敗。編集部のアドバイスにより“嫌われ者”の辛口批評家として再び音楽業界に返り咲くジョアンナ。過激な毒舌記事を書きまくる“ドリー・ワイルド”へと変身した彼女の人気が爆発するが、徐々に自分の心を見失っていき……。
コーキー・ギェドロイツ監督インタビュー
この映画について
コーキー・ギェドロイツ監督(以下、監督)「『ビルド・ア・ガール』は華やかな青春映画で、ウルヴァーハンプトン出身の女の子が自力で貧困から抜け出し、素晴らしいものを生み出していく姿を描いている。喜びに溢れた作品だわ。キャトリン・モランのクレイジーなマニフェスト、笑い、ギャグ、狂気、そして道義心が詰まっているのよ。同時に、本当に重要なストーリーを若い女の子たちに直接語りかけている。そこが原作者であるキャトリン・モランの素晴らしさね。彼女ならではの率直さで、『どんなに悪いことが起きても、どんなに混乱しても、きっと大丈夫。自分を再構築し、何かを生み出し、別の方法で自分を作り上げることができるのよ』と訴えかけている。私にとって、それこそが2年半の間ずっと取り組んできたこの映画のメッセージであり、物語なの」
“この映画の重要なテーマは、
こうなりたいと熱望する自分になるための勇気や、
本当にすべてがうまくいくという
喜びに満ちた熱意”
こうなりたいと熱望する自分になるための勇気や、
本当にすべてがうまくいくという
喜びに満ちた熱意”
映画のテーマについて
監督「この映画の重要なテーマは、こうなりたいと熱望する自分になるための勇気や、本当にすべてがうまくいくという喜びに満ちた熱意ね。主人公がとんでもない大失敗をしでかすように見えても、実際には、どんなに悪い状況になっても彼女を破滅させることはないの。この作品にはすごく明確なテーマがある。決して育ちが良くなくても、頭脳と熱いハートがあれば、そこから抜け出して新しいものを生み出し、自分を作り変えることができるということ。これが大きなテーマだと思うわ。それに、それが大人になるということでもある。私は、彼女がセックスをしても苦しまないという点も気に入っている。多くの映画では、若い女性がセックスをすると子供を産むか、病気になるか、死んでしまうか、確実に苦しむことになる。でも、彼女は違う。自分のものにして、罰せられることもないの」
ストーリーについて
監督「ティーンエイジャーなら誰でも、自分なりのバージョンのジョアンナがいて共感できると思う。私の場合はキャトリンと正反対で、彼女が陽ならまさに陰のような存在だった。物静かで、内向的で、シャイで、ちょっとゴスも入っていた。厳格なカトリックの両親に育てられて、私なりの苦労もあったわ。私の部屋の壁にもヒーローがいて、自分が育った郊外から飛び出して、何か突飛なことをしたいという夢を持っていた。父は私に期待していたのは結婚することだけで、映画を作るなんて考えてもいなかった。親戚にも、ショービジネスの世界の近くにいる人すらいなかったくらいだから。だから私は、どんな若い女の子でも何でもできるというメッセージにとても共感しているわ。勇気を持って一歩を踏み出し、失敗を自分のものにすることができれば、チャンスは常にそこにあってあなたを待っているのよ」
撮影現場でのコーキー・ギェドロイツ監督(中央)
原作について
監督「原作小説の『How to Build a Girl』を読んだ時、私は何度も笑ってしまったわ。陰気なゴシックガールを笑わせるなんて並大抵のことじゃないのよ。電車で読んでいたんだけど、文字通り大笑いして、涙が溢れてしまった。後でパートナーに読んでもらったら、彼も笑っていた。それを見て、『これは勝てるな』と思ったの。意地悪で、内省的で、へそ曲がりな脚本を読むことも多いんだけど、この作品は思い切り手を伸ばしている。『さあおいで。仲間になろうよ。ここにはあなたのための何かがあるよ』と訴えかけているような気がするの」
原作/脚本キャトリン・モラン プロフィール
イギリスのジャーナリスト、作家、テレビ司会者。15歳でイギリスの新聞「オブザーバー」紙の若者レポーター賞を受賞し、1991年に16歳で初の小説「ナルモ年代記」を出版。同年、週刊音楽雑誌「メロディ・メイカー」で歴代最年少のロック評論家として活躍し始める。17歳で、タイム紙の週刊コラムニストとなり、チャンネル4の音楽番組「ネイキッド・シティ」の司会者に抜擢される。その後25年に渡り、英国記者賞や英国雑誌編集者協会(BSME)賞など多様な賞を毎年のように受賞してきた。2011年のギャラクシー・ブリティッシュ・ブック賞最優秀図書賞を受賞した小説「女になる方法」は、これまで25か国語に翻訳され、世界的ベストセラーとなっている。2014年発表の「How to Build a Girl」(※原作)、2018年発表の続編「How to be Famous」をはともにイギリスでは発売するなり書籍販売数首位となった。
“混乱や狂気、愚かさ、無意味さを内面に秘めた
女性のキャラクターについての
物語はほとんどない。
それらはすべて成長の一部だというのに”
女性のキャラクターについての
物語はほとんどない。
それらはすべて成長の一部だというのに”
作品作りについて
監督「まず言っておきたいのは、私はこの仕事を25年、30年近く続けているということ。だから、自分が作った映画やテレビ番組にひどく退屈してしまう気持ちもわかっている。そういう作品にもそれなりの価値はあるけど、99回目に観る頃には、文字通りうんざりして放り出したくなってしまう。実際、自分の作品を編集していて寝てしまったこともあるわ。でも、この映画は観るたびに何か新しい発見や笑いがある。どういうわけか、観るたびに作品そのものが新しく生まれ変わっているような気がするの。なぜだかはわからないけど、すごく新鮮な気分になるわ。思わず笑ってしまうような場面もある。その一つが、彼女の父親のパットが子供たちを待っているシーンね。子供たちが学校から帰ってきた時、父親は悪ガキのカール・ボーデンが娘をいじめているのを目撃する。父はカール・ボーデンに向かって 『お前、カール・ボーデンだよな?』と言う。『ああ、それがどうした?』『72年にお前のおふくろとヤッたんだ。よろしく言っておいてくれ』。いつ見ても惚れ惚れするわ」
女性キャラクターのタブーについて
監督「問題は、壁があまりにも強固なことね。混乱や狂気、愚かさ、無意味さを内面に秘めた女性のキャラクターについての物語はほとんどない。それらはすべて成長の一部だというのに。あまりにも少ないから、率直に言ってタブーになっていたんだと思う。そういう作品がこれまでまったくないから。でも、状況は変わろうとしている。2019年になって、状況が変わりつつあると心から思うわ。人々は、10代の女の子がどんな感じなのかを知りたがっているの。確かに、彼女がジムでフリップや宙返りをする時に生理用品のタオルが飛び出すのは笑えるわね。つまり、男の子を描いた他の映画では、これまでずっとタブーを打ち破るようなクレイジーなことが描かれてきた。同じことが女の子にも必要なの。私たちにとって、タブーを破ることは難しくなかった。なぜなら、率直に言ってこういう物語が今までに語られたことがないから。すべてが新しいの」
“へまをしたって、
悲惨な経験をしたって、
悲惨なものを生み出したって、
自分をもう一度作り変えることができる。
立て直すことができる”
悲惨な経験をしたって、
悲惨なものを生み出したって、
自分をもう一度作り変えることができる。
立て直すことができる”
この映画を観てほしい人は
監督「この映画は、多くの人に語りかける作品だわ。今まさに10代を生きている15歳、16歳の女の子たちは、スクリーンに大げさなバージョンの自分を見ることになる。それに、90年代を生きていた彼女たちの母親世代にとっても、自分たちが16歳だった頃のことを懐かしく思い出させてくれるはずだわ。この映画を観た後、私のところに来て、涙を流していた男性がいた。彼はパット役のパディと娘のジョアンナの関係に感動していたの。2人は信じられないほど親密で、時にはいがみ合ったりもするけど、とても愛情に満ちた関係にある。それは、見る人も理解できるはずだわ。この映画は、笑いを通して語られる真実の物語であり、決してのぞき見趣味的なものではない。観客が彼女と一緒に旅をしているように、彼女の肩に乗って物語を生きることができるようにすることが、私にとっては大きなチャレンジだったわ」
この映画に込めたメッセージ
監督「私はこの作品を、自分に自信が持てない若い女の子たちに語りかけるようなものにしたいと熱望していた。この作品はキャトリンのメッセージを映画化したようなもので、『へまをしたって、悲惨な経験をしたって、悲惨なものを生み出したって、自分をもう一度作り変えることができる。立て直すことができる』と訴えかけているの。正直に言うと、私もこの言葉のおかげでここまでやってこれた。なぜなら、このような作品は今まで存在しなかったから。だからこそ、撮影でへとへとに疲れたり、ストレスがたまっていても、作品を成功させるために信じられないほど努力することができたの。それだけのことをする価値があると本当に思えたの。正直、それができただけでも満足している。うまくいくことを願っているわ」
10/22(金)より全国順次ロードショー!
コーキー・ギェドロイツ監督が語るように、一足先に本編を鑑賞した映画ファンからも「正直まったく他人事と思えずぐっさぐさにぶっ刺さった」、「かつて経験もしたその痛々しさにムズムズした」、「とにかく共感できて何かを変えたい気持ちと、成功と失敗またやり直しがきくってことに希望をもらった」といった共感が相次いでいるそうです。男性からも「自分と重ね合わせて泣いてしまった」と絶賛されている本作。がむしゃらに自分をつらぬいて頑張るすべての人に贈る、最高の青春エンパワーメントムービー『ビルド・ア・ガール』を、劇場でぜひ楽しんで! ●10/22(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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© Monumental Pictures, Tango Productions, LLC, Channel Four Television Corporation, 2019 文/MORE編集部