12星座全体の運勢

「引いた視点で俯瞰する」

暦の上で秋となる「立秋」の直前、まさに夏真っ盛りの8月4日に水瓶座で満月を迎えていきます。この時期にはお盆をひっくり返したような激しい雨(覆盆の雨)が降るとされてきましたが、今回の満月は変革と普及をつかさどる「天王星」と激しい角度をとっており、まさに意識の覚醒を促されるタイミングとなりそうです。

テーマはずばり、「現時点での自分のレベルの把握」。2020年の年末にはいよいよ約200年単位の占星術上の時代の移り変わりがあり、モノの豊かさの「土」の時代から、情報や繋がりの多様性が価値基準となる「風」の時代へなどと言われていますが、今回の満月はそうした時代の変化にどこまで同調できているか、またできていないのかということが浮き彫りになるはず。

そこにはかなりの個人差が生じるものと思われますが、とくに痛みや違和感、プレッシャーの感じ方などは、これまでの生き様やその蓄積、ふだん触れている情報や立ち位置、周囲の人間関係、属するコミュニティなどによってまったく異なってくるでしょう。

ともに地球に生き、一見同じ位置にあるように見える人間同士でも、進化における種類と段階の違いは厳然と存在するのだということを、今期はよくよく念頭に置いていくべし。

乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「火遊び」。

乙女座のイラスト
バリ島でかつて重要な社会的行事であった「闘鶏」について、アメリカの人類学者ギアーツが分析した論文のタイトルには「ディープ・プレイ」という言葉が使われました。

これはもともとイギリスの思想家ベンサムが18世紀末に著した『道徳および立法の諸原理序説』のなかで「功利主義者としてみた場合、賭け金があまりに高くてそれに関わるのは非合理であるような遊び」を指すために用いた言葉なのですが、ギアーツはそこに人々が“深く”巻き込まれてしまう象徴的なゲームとして積極的な意味合いを見出したのです。

ギアーツによれば、あからさまな衝突を嫌い「おとぼけの達人」であるバリ人にとって、闘鶏とは遠回しに互いの面目を傷つけあうゲームであり、そこではみずからの存在の根拠が賭けられた上で、地位の急激な転倒にともなう感情の複雑で激しい動揺を味わうものの、

勝負によって尊敬されたり侮辱されたりするのはその場だけの話で、現実の地位が実際に取引されることはなかったそうです。

言ってみれば、激しい攻撃で鶏たちが血を流す闘鶏は「彼ら自身による彼らの物語」であり、その意味で参加者によって解釈される「深い演劇」でもあったのです。

そして、まさにこうしたどこかで「深い演劇」を演じていく感覚や、それによって引き起こされる感情の複雑さを通じた「一種の感情教育」こそ、今期のおとめ座のテーマとなっていくはず。

これは例えば、恋人とのデートや応援しているサッカーチームの試合観戦など、日常生活にセレモニーを設置し、そこに織り込まれている解釈のうちに、自分を深く挿入していくことで、単なる事実の寄せ集め以上の“物語”を編んでいくということでもあります。

あくまで想像上の次元で行われる「火遊び」に、自分がどれだけはまってきたのか、また、それによってどれだけ自身の物語は豊かになってきたのか。この機会に今一度振り返ってみるといいでしょう。


出典:C・ギアーツ「ディープ・プレイ―バリの闘鶏に関する覚え書き」(吉田禎吾、中牧弘允、 柳川啓一、板橋作美訳『文化の解釈学Ⅱ』所収)
12星座占い<7/26~8/8>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ