12星座全体の運勢
「引いた視点で俯瞰する」
テーマはずばり、「現時点での自分のレベルの把握」。2020年の年末にはいよいよ約200年単位の占星術上の時代の移り変わりがあり、モノの豊かさの「土」の時代から、情報や繋がりの多様性が価値基準となる「風」の時代へなどと言われていますが、今回の満月はそうした時代の変化にどこまで同調できているか、またできていないのかということが浮き彫りになるはず。
そこにはかなりの個人差が生じるものと思われますが、とくに痛みや違和感、プレッシャーの感じ方などは、これまでの生き様やその蓄積、ふだん触れている情報や立ち位置、周囲の人間関係、属するコミュニティなどによってまったく異なってくるでしょう。
ともに地球に生き、一見同じ位置にあるように見える人間同士でも、進化における種類と段階の違いは厳然と存在するのだということを、今期はよくよく念頭に置いていくべし。
山羊座(やぎ座)
今期のやぎ座のキーワードは、「混乱や矛盾を含みつつ」。

おそらく、その答えの多くはNOだろう。とりあえずこの現実で手に入れたものとか、出会った人たちとか、そういうものがあって、なんだかんだそういうものが大事だから。
けれど、この世界には先の問いかけにYESと答えて、さっと向こう側に飛び込んでいってしまう人がいるのだということも、忘れてはならないように思います。
村上春樹がオウム真理教の元ないし現役の信者たちに行ったインタビューをまとめた『約束された場所で』は、そういうことをまざまざと思い出させてくれる本であると同時に、村上が自分の創り出す物語世界において何を大事にしようとしているかが垣間見えてくる作品でもあります。例えば、村上の次のような発言。
「現実というのは、もともとが混乱や矛盾を含んで成立しているものであるのだし、混乱や矛盾を排除してしまえば、それはもはや現実ではないのです。」
「そして一見整合的に見える言葉や論理に従って、うまく現実の一部を排除できたと思っても、その排除された現実は、必ずどこかで待ち伏せしてあなたに復讐するでしょう」
オウムの元信者たちはまさに「整合的に見える言葉や論理」で現実を固めた、ツッコミや他者を必要としない人たちであり、彼らの道行きは壮大ではあっても、どこか氷の上のようなツルツルとした表面を滑っているように感じられてしまう。
ただ、そういう現実性を欠いた言葉はある意味、現実よりずっと美しく、力を持ってしまうのだということも、村上はちゃんとわかっている。
それでも、いびつででこぼこしていてどこまでも割り切れない現実を引き受けていくためにも、あえて「いちいち夾雑物を重石のようにひきずって行動しなくてはならない」言葉や論理をつかって、土を蹴り立てて歩みを進めていこうと村上は強く心に決めているように感じられます。そしてこれはそのまま、今のやぎ座の人たちに求められている態度でもあるのではないでしょうか。
こちら側の現実のなかでズレを抱え、周囲からツッコミをもらいつつ、たとえ不格好でも、大地をしっかり踏みしめていくこと。今期のやぎ座はその覚悟のほどを、改めて固めていきたいところです。
出典:村上春樹『約束された場所で』(文春文庫)
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。