12星座全体の運勢

「引いた視点で俯瞰する」

暦の上で秋となる「立秋」の直前、まさに夏真っ盛りの8月4日に水瓶座で満月を迎えていきます。この時期にはお盆をひっくり返したような激しい雨(覆盆の雨)が降るとされてきましたが、今回の満月は変革と普及をつかさどる「天王星」と激しい角度をとっており、まさに意識の覚醒を促されるタイミングとなりそうです。

テーマはずばり、「現時点での自分のレベルの把握」。2020年の年末にはいよいよ約200年単位の占星術上の時代の移り変わりがあり、モノの豊かさの「土」の時代から、情報や繋がりの多様性が価値基準となる「風」の時代へなどと言われていますが、今回の満月はそうした時代の変化にどこまで同調できているか、またできていないのかということが浮き彫りになるはず。

そこにはかなりの個人差が生じるものと思われますが、とくに痛みや違和感、プレッシャーの感じ方などは、これまでの生き様やその蓄積、ふだん触れている情報や立ち位置、周囲の人間関係、属するコミュニティなどによってまったく異なってくるでしょう。

ともに地球に生き、一見同じ位置にあるように見える人間同士でも、進化における種類と段階の違いは厳然と存在するのだということを、今期はよくよく念頭に置いていくべし。

水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「時代錯誤の効用」。

水瓶座のイラスト
ビル・ゲイツが何度も読み直したという『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』は、アメリカが経済破綻寸前で一党独裁による軍事化が進んだ世界線であり、誰もが信用度や性的魅力を数値化され、手元の端末で簡単にプロフィールを検索されるなど、過度にメディアが発達した近未来を描いたディストピア小説。

主人公は時代に逆行して紙の本を愛するロシアからきたユダヤ系移民で39歳の“時代錯誤おじさん”ことレニーと、彼が一目惚れした24歳の韓国人女学生ユーニス。

この小説世界は文学が衰退したポスト文学社会であり、個人のクレジットカードの履歴やSNS上の人気ランキングからおススメ買い物情報や友人のホットなゴシップなどが絶えずデジタルデバイスを通じて提供され続ける一方で、自分の感情を知るにも<エモート・パッド>という感情測定器を胸にあてなければ分からなくなっているという有り様。さらに内乱状態になってインターネットが落ちてしまい、繋がらなくなったスマホを握りしめた若者が次々と自殺してしまうなど、随所に無惨な戯画的描写が登場してきます。

自分と家族の幸せを願ってあがくユーニスは、未来への不安が高まるにつれ、自分でも驚くことに“魅力最低ランク”のはずのレニーにいつも安らぎを感じていくのですが、そんなユーニスに限らず、この本を読んだ人は改めて“印刷・製本された更新されることのないメディア製品”に手を伸ばしたり、紙の日記をつけたくなってくることは間違いないでしょう。

とくに、今のみずがめ座の人たちであれば、人生の優先順位を他者からの評価という基準で選ぶのではなく、たとえ“パーソナリティ格付け”がグンと下がろうと、自分もトルストイの著作を手にするレニーのように振る舞いたくなってくるはず。

過剰にテクノロジーが進歩していけば、どこかで人間がそれに追いつかなくなって機能不全に陥る危険をはらむものですが、今期のみずがめ座の人たちは加速する時代の流れといったん距離をおいたところで、他ならぬ自分のための幸福ということについて考えていきたいところです。


出典:ゲイリー・シュタインガード、近藤隆文訳『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』(NHK出版)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ