12星座全体の運勢

「引いた視点で俯瞰する」

暦の上で秋となる「立秋」の直前、まさに夏真っ盛りの8月4日に水瓶座で満月を迎えていきます。この時期にはお盆をひっくり返したような激しい雨(覆盆の雨)が降るとされてきましたが、今回の満月は変革と普及をつかさどる「天王星」と激しい角度をとっており、まさに意識の覚醒を促されるタイミングとなりそうです。

テーマはずばり、「現時点での自分のレベルの把握」。2020年の年末にはいよいよ約200年単位の占星術上の時代の移り変わりがあり、モノの豊かさの「土」の時代から、情報や繋がりの多様性が価値基準となる「風」の時代へなどと言われていますが、今回の満月はそうした時代の変化にどこまで同調できているか、またできていないのかということが浮き彫りになるはず。

そこにはかなりの個人差が生じるものと思われますが、とくに痛みや違和感、プレッシャーの感じ方などは、これまでの生き様やその蓄積、ふだん触れている情報や立ち位置、周囲の人間関係、属するコミュニティなどによってまったく異なってくるでしょう。

ともに地球に生き、一見同じ位置にあるように見える人間同士でも、進化における種類と段階の違いは厳然と存在するのだということを、今期はよくよく念頭に置いていくべし。

魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「満たされること」。

魚座のイラスト
地方から上京してきた著者が東京という都市について綴った随筆集『東京で生きる』では、快楽と幻想と記号の世界としての「東京」で生きることの怖さと魅力とがあますことなくすくいとられており、時にハッとするような繊細な文章で読者の胸をついてきます。

私は何かを信じたいし、信じることをやめたくなんかない。けれど、東京では私が唯一信じられる自分の欲望が、よくわからなくなる。欲しいと思って手に入れたものが、あっという間になんの魅力もない布切れやがらくたに変貌していく。越境すればものの価値など一瞬で変わる。そんなものを見つけるために途方もない時間を使い、果てしなくお金を払う。見つけて買うまでの瞬間だけは「これは運命だ」と思うことができる。

私は、何のサイコロを転がしているのだろうか?

朝の満員電車に乗っていたり、深夜にタクシーで帰宅したりすると、ときどき「まぁ、なんだかんだ大丈夫でしょ」と鈍感を決めこんでいたはずの自分が揺らいでしまう瞬間がある。

実際に東京に住んでいようと、そうでなかろうと、きっとそんな人であれば「幻想を見る以上に楽しいことが、この世にどれだけあるのだろうか」「ほんとうに満たされることを、もしかしたら自分は知らないのかもしれない」「知らないからこんなに求めてしまうのかもしれない」といった著者の内的独白の切実さが痛いほどに分かるのではないでしょうか。

ここに書かれた「東京」とは、巨大で複雑な欲望喚起システムがうなりをあげて駆動する猥雑な場所であり、加速し続けている資本主義のメタファーとも捉えられます。

そして、他人の欲望に侵食され、自分というものが溶けてなくなってしまうことについて、本当にそれでいいの?と問いかけることこそ、今のうお座のするべきことなのかも知れません。

著者のようにそこにあえて乗っかり、それができる場所への愛着を深めて食らいついていくのか、それともどこかで線を引いて静かに自分が回復していく過程を待つのか。4日の満月前後は少しでもひとりの時間を確保して、ゆっくり自分と語りあってみるといいでしょう。


出典:雨宮まみ『東京を生きる』(大和書房)
12星座占い<7/26~8/8>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ