12星座全体の運勢

「月を呑む」

10月1日は「仲秋の名月」です。旧暦8月15日の夜に見えるまあるい月のことを、昔から「月見る月はこの月の月」といって心待ちにされてきました。

厳密には正確に満月となるのは10月2日の早朝ですが、十五夜の翌日は「十六夜(いざよい)」、前日の月は「待宵(まつよい)」としていずれも大切にされ、その際、月に照らされていつもより際立って見える風景や、月を見ることでやはり美しく照り映える心の在り様のことを「月映え(つきばえ)」と言いました。

そして、そんな今回の満月のテーマは「有機的な全体性」。すなわち、できるかぎりエゴイズムに毒されず、偏った見方に陥らないような仕方で、内なる世界と外なる現実をひとつのビジョンの中に結びつけ、物事をクリアに見通していくこと。

ちなみに江戸時代の吉原では、寿命が延びるとして酒を注いだ杯に十五夜の月を映して飲んでいたのだとか。どうしても手がふるえてしまいますから、水面にまるい月を映すことは難しかったはずですが、綺麗なビジョンを見ようとすることの困難もそれとどこか相通じているように思います。ただ、透き通った光を飲み干すと、昔の人は何か説明のできない不思議な力が宿ったように感じたのかも知れません。

魚座(うお座)

今期のうお座のキーワードは、「魂の健康」。

魚座のイラスト
脳の働きや精神というものほどいいかげんで、事実をねじ曲げて手前勝手なことばかり主張する代物はないように思いますが、その点、身体には精神よりもはるかに常識が備わっています。

危険を察知したときはきちんと信号を送ってくれるし、限界がきたら拒絶反応を示し、心の深い傷は身体にその爪痕を残し、身体が凍りついたり変な汗をかいたりなど、たびたび疼くことでまだその傷が癒えてないことを教えてくれるのです。

19世紀に生まれ、米国の心理学の祖となったウィリアム・ジェイムズは、こうした身体の知恵によってむしろ精神がどれだけ救われているのかを最初にはっきりと示した人物の一人であり、「ひとは悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」と言って、その逆ではないのだということを強調しました。

せっかく美しい事物を知覚しても、然るべき身体の裏打ちがなければ、「生気なく、色合いなく、感情の熱を欠く」のであり、感情を身体や感覚の微細な変化の映しと捉えたのです。

つまり、私たちは嬉しいことが起きるから幸せで、快活であれるのではなく、快活な姿勢をとっているからこそ、自然と嬉しさを感じやすくなり、結果として嬉しい気持ちが湧いてくるのであり、精神と肉体は別ものであり、肉体を疎かにしたり軽蔑したりすることは、最も恥ずべき行いとさえ言えるのだということ。

ジェイムズは「魂の健康」について語る中で、悲嘆に暮れているときは、胸を張って大きく空気を吸って、大股で歩いてみることを勧めています。そうすることで、感情の均衡をとるとした訳です。

今期のうお座もまた、自分なりの身体への敬意の払い方や、付き合い方というものを改めて見直し、他でもないみずからの身体に精神を委ねていくといいでしょう。


参考:ウィリアム・ジェイムズ、今田寛訳『心理学<上>』(岩波文庫)
12星座占い<9/20~10/3>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ