12星座全体の運勢

「新たな習慣、新たな取り組み」

10月8日を過ぎると二十四節気では「寒露」に入り、晩秋を迎えます。「晩秋」というと、どこか寂しさをそそりますが、旧暦の時代には10月のことをさまざまな言い方で表してきました。

例えば、稲を収穫することから「小田刈月(おだかりづき)」、また菊も咲き始めるので「菊月」、木の葉が染まり出し、梨や柿や金柑など、さまざまな果実も実りのときを迎えていくので「色取月(いろとりづき)」など。

まさに心豊かに過ごせる時期と言えますが、そんな中、10月17日にはてんびん座で新月を迎えていきます。今期のテーマは「蝶の第三の羽」。

蝶は古来より「霊的な復活のプロセスの結末」を表すシンボルであり、二枚の羽の代わりに三枚の羽を持っているなら、霊的生活の観点において特別な発達があったことを示していますし、また「3」という数字は「充足」の象徴でもあります。

すなわち、合理的知性では説明がつかない新たな可能性を秘めた習慣や試み、突然変異的な取り組みを生活の中に取り込んでいく機運が高まっていきやすいタイミングなのだと言えるでしょう。

充実した秋の夜長を過ごすべく、これまでは手が伸びなかったような新しい何かに打ち込んでいくのにもうってつけかも知れません。

乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「身体と私」。

乙女座のイラスト
『マトリックス』に影響を与え、ハリウッド映画やアニメにもなって改めて知られるようになってきた士郎正宗の『攻殻機動隊』(漫画原作は1995年に刊行)の世界では、人間はサイボーグ化され、身体は自由に付け替えのきく「義体」と呼ばれるものとなっていますが、それでも、その世界は主人公・草薙素子(くさなぎもとこ)の視点に中心化された世界であり、ストーリーのなかで義体が破壊された際にもそれは変わりません。

ただ、そのこと自体に草薙は疑問を抱き、次のようなセリフをつぶやくのです。

私は時々『自分はもう死んじゃってて、今の私は義体と電脳で構成された模擬人格なんじゃないか』って思う事もあるわ

しかし、もしそうだとしたなら、もう死んじゃっている「自分」とは、誰のことになるのか。また、そういう「自分」と「今の私」とはどういう関係にあるのか。

あるいは、仮に「模擬人格」なのだとしたら、オリジナルの自分の記憶や嗜好や性格などはどこまで再現されているのだろうか。そして、そうしたすべての疑念を勘案し、受け入れたとしても、「今の私」が現にここにこうしているということは疑いようがないけれど、それはどうしてなのか。

これらはすべて、すぐに答えを用意することができないどころか、答えられるかどうかさえ見当がつかない難問ですが、今後ヒトゲノム(遺伝情報のひとつ)の解析もますます進み、医学領域だけでなくより日常的な場面で用いられる生体科学の研究や技術開発が発展していくだろう2020年代には、こうした問いや疑問はますますリアリティーを増していくことは間違いないでしょう。

この作品では、「ゴースト」「魂」「生命体」などと表現される存在者が世界の中に客観的に存在し、それが何らかの器に宿るといわば自我が生じるかのように考えられていますが、それは90年代初期という時代を考慮してもやや素朴に感じられます。

今期のおとめ座もまた、私が他ならぬこの私でいられるための成立条件や、そもそも私であるということは何であることなのか、といった謎の感覚を改めて呼び覚ましてみるといいかも知れません。


参考:士郎正宗『攻殻機動隊(1)』(講談社)
12星座占い<10/4~10/17>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ